アルゴ計画は,全世界の外洋域における海面から2000mまでの水温と塩分を,10日ごとにリアルタイムで監視することを目的とした国際プロジェクトであり,
世界気象機関(WMO)やユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)等の国際機関の協力のもと,わが国を含む米国やヨーロッパの数か国が参加し,2000年に開始された.
わが国では,内閣総理大臣決定によるミレニアムプロジェクトとして,2000年度から2004年度に省庁や研究機関が参加し,
太平洋やインド洋を中心にアルゴフロートの展開と,データの品質管理等を実施してきた.そして,ミレニアムプロジェクト以後も,それまでの枠組みを保持しつつ,
わが国はアジア各国をリードし,アルゴ計画を含む全球海洋観測システムの構築と成熟に貢献してきた.
アルゴフロートによる観測網(アルゴ観測網)は,各国が展開可能な海域にフロートを分担投入することにより,
全球を時間的に連続かつ空間的に均一に網羅しており,各国で行われているデータ同化システムを利用した気候変動予測や海洋変動予測の精度向上に寄与している.
また,わが国は北太平洋に重点的にアルゴフロートを展開しており,わが国の貢献は全球観測網に対して必要不可欠なものとなっている.さらに,
アルゴフロートのデータは,数値モデルによる予測プロダクトや,さまざまなデータセット等を通じて,学術的研究はもちろん,気候や海洋変動の予測だけに限らず,
水産業などの産業界にも活用されており,その利用範囲は既に多岐にわたっている.
アルゴフロートによる水温,塩分データが蓄積し,それらを利用した研究が進むにつれて,熱輸送や水塊形成メカニズム等のより深い理解のためには,
より高度な観測を必要とする海域があることが明らかとなりつつある.例えば,水塊形成や,海盆規模の熱輸送過程において重要な黒潮続流域などの前線帯では,
メソスケール,サブメソスケールでの異なる水塊の混合過程や熱・水輸送過程とその変動が,複雑かつ短い時間スケールで起こるため,
時間・空間的に現状のアルゴ観測網より高い密度の観測を必要とする.また,沿岸海洋や生態系変動研究分野では,衛星観測による海面での状況把握だけでは困難な,
海洋内部における3次元的な生態系変動の特性の把握と予測の重要性が高まってきており,
生態系観測用フロート等を用いた観測による変動の把握とメカニズムの理解が必要である.近年の技術開発により,安価で大容量の通信システムが利用可能となり,
また,フロートに搭載可能な生物・化学パラメータ計測センサーが増加してきた.さらに,プラットフォームとして使用可能な大型フロート,大深度観測用フロート,
海中を移動できるグライダー等の開発が進むなど,さまざまなパラメータ観測の要請に応えることが可能となりつつある.
北太平洋は,わが国の気象や気候,そして産業や社会活動に対し密接に関連する重要な海域であり,全球の気候・海洋変動予測にとっても必要不可欠な海域である.
現在,わが国のアルゴフロートの展開は,北太平洋については気象庁が日本近海を,海洋研究開発機構が外洋域を担い,
水産庁や各大学も含めそれぞれの機関の目的に沿った形で行われている.アルゴフロートの投入は,それぞれの機関の所有する船舶のほかに,海洋研究開発機構では,
各省庁,大学等の研究機関,教育機関の練習船,民間船など依頼して効率よく行われている。また,わが国のアルゴデータの品質管理は,即時品質管理を気象庁が実施し,
全球データセンター(GDAC)を通じて24時間以内に全世界に配信するとともに,学術研究ニーズに応えるための高精度品質管理を海洋研究開発機構が担い,
1年以内にGDACを通じて公開している.さらに,海洋研究開発機構では,太平洋において各国で投入されたフロートの品質を監視する太平洋アルゴ領域センター(PARC)を運営し,
アルゴデータを信頼できる品質に保持している.このように,わが国のアルゴプロジェクトは良好な連携のもとで実施されている.
このような状況のもと,さまざまな社会的ニーズやさらに高度な学術研究のニーズに応えるため,将来にわたり国内の連携体制を維持しつつ,
既存のアルゴ観測網を基盤として,船舶・多機能フロート・グライダー等を含む,より高密度で,
生物,化学等の多様な観測要素を含む高度な統合海洋観測システムを構築していくべきである.国際的にも,アルゴ観測網を含む全球海洋観測システムを,
生態系や沿岸域の観測なども含む統合した観測システムへと発展させ,気候の変動や変化の監視や学術研究のニーズだけでなく,
社会生活に密着した海洋情報を提供していくことが重要であると認識されている.
アルゴ計画推進委員会は,わが国が北太平洋において世界に先駆けてこのような高度な統合海洋観測システムを構築し,
気候の変動や変化の監視と学術研究を推進するとともに,社会に貢献する海洋情報の提供を充実させるよう,
世界のモデルケースとなる観測システムの確立が重要であると認識していることを表明する.
アルゴ計画推進委員会 構成メンバー(平成23年2月18日現在)
委員長 花輪 公雄(東北大学大学院理学研究科・教授)
委 員 久保田雅久(東海大学海洋学部・教授)
委 員 道田 豊(東京大学大気海洋研究所・教授)
委 員 安田 一郎(東京大学大気海洋研究所・教授)
委 員 菅宮 真樹(外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部国際科学協力室・室長)
委 員 堀内 義規(文部科学省研究開発局海洋地球課・課長)
委 員 平井 光行(水産庁増殖推進部・参事官)
委 員 米田 浩(国土交通省総合開発局海洋政策課・課長)
委 員 安藤 正(気象庁地球環境・海洋部海洋気象課・課長)
委 員 仙石 新(海上保安庁海洋情報部環境調査課・課長)
委 員 大嶋 真司(海洋研究開発機構経営企画室企画課・課長)
委 員 河野 健(海洋研究開発機構地球環境変動領域海洋環境変動研究プログラム・プログラムディレクター)
委 員 須賀 利雄(海洋研究開発機構地球環境変動領域海洋環境変動研究プログラム戦略的海洋監視研究チーム・チームリーダー)
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