第8回ARGO計画推進委員会 議事概要

日時:平成15年10月27日(月)14:00〜17:00

場所:気象庁大会議室

出席者:平委員長、今脇委員、花輪委員、篠原委員、吉田委員、石塚委員、佐々木委員、長井委員、佐伯委員、加納委員、堀田委員、竹内委員、小滝委員代理

欠席者:道田委員、山元委員

議事に先立ち、以下の3名の人事異動に伴う委員の交代が紹介がされた。

 水産庁 石塚委員、 国土交通省 小滝委員、海上保安庁 長井委員

議事概要

議題1 第9回、第10回Argo計画評価・助言会議報告

●内閣府の篠原委員から概要の説明(資料1)

(質疑応答)

平委員長:今年の日本海洋学会秋季大会においては、アルゴ関連の発表がたくさんあり、科学的に有用な結果が得られていると感じた。海洋学会に関連して、学会長である今脇委員、何かコメントはありますか。

今脇委員:アルゴに関連した研究が活発に行われているということを申し上げておく。

花輪委員:アルゴのデータが公開されていることにより、多くの人が、色々な使い方をしている。その結果、思いもかけない使い方があって、その成果が着々と出てきているという印象を受けた。

議題2 平成15年度の進捗状況及び平成16年度の計画

●文部科学省の吉田委員から概要の説明(資料2)

●海洋科学技術センターの竹内委員(資料2-1 国際協力体制)、四竃(資料2-2 中層フロートの展開)から説明

●海上保安庁の長井委員から説明(資料2-3 フロート以外の観測)

●気象庁の加納委員から説明(資料2-3 フロート以外の観測)

(質疑応答)

今脇委員:海上保安庁の事業の海洋短波レーダについて、前回、比較の途中のデータに対し辛口の批評をしたが、今回は非常に良い結果になっている。細かい点だが、2002年4月から2003年3月で年の平均流を求めているが、データは1月から12月まであるようなので、年で切った方が良いのではないか。それから、頻度グラフからも面白い結果が出ている。黒潮の流路は神津島と三宅島の間が一番頻度が高くなっているが、我々のところで海面高度計と漂流ブイを組み合わせて求めている流路からは、こんなに綺麗にでていない。これは非常に良いデータだと思う。ただ、横軸が日数になっているが、全体の比率(パーセント)で表現した方が良いと思う。流軸の位置と潮位の変化についても、非常に綺麗な関係が得られており、これもなかなか面白い結果だと思う。ここで見られるズレについて、その理由を詰められたらさらに面白いかと思う。
気象庁のフロートによる漂流速度の算出について、1度格子毎に流速の平均を取っているが、係留系での流速にも見られたように、色々な時・空間スケールで変動しているので、フロートからの流速を2〜3個平均したぐらいでは変動成分が抜けないと考えられる。格子で平均値をだすには、相当注意してやってほしい。

花輪委員:日本で開発しているフロート(NINJA)の進捗状況について教えていただきたい。

安藤氏(海洋科学技術センター):8月に6台を海上保安庁の拓洋により投入した。このフロートは、1,000mを漂流させて、浮上前に一度2,000mまで潜って水温・塩分のプロファイルをとってくるという形(パーク・アンド・プロファイル)にソフトを変更している。そのソフトの変更にともないメーカの方でもハードの方を少しいじった。結果は、6台入れた内の2台はデータを送って来なかった。また、4台についても1回データを送ってきて、そのあと反応が無くなった。メーカーと色々と検討した結果、ソフトにバグがあったという残念な結果になっている。

平委員長:海洋短波レーダの結果を、ADCPを係留して検証するということで、ADCPによる水面下5mの流速を使われているが、どのような方式で求めたのか。

寄高氏〈海上保安庁〉:まず、今脇委員のご指摘の平均流のとりかたが会計年度で変であるという点ですが、初年度に試行錯誤した結果、2002年の4月から現行の方式で流速を求め始め、そこから1年間とったためですが、平均の期間については工夫したい。また、頻度分布のパーセント表示についても改めたい。係留系については、設置点の水深が約300mで、水深100mを切るぐらいの所にADCPを立ち上げている。水面下5mのところは、表面反射の影響があるが、それを除くようフィルターをかけて、流速を求めている。

平委員長:気象庁のフロートから求めた漂流深度の平均の流れでは時計回りの渦が見られ、係留系の設置点は、その南側にあるようだが、係留系の流速計の進行ベクトルでは、反時計回りになっている時期もみられる。先ほどの今脇委員の指摘のように、平均の流れの算出は慎重にする必要があろう。

加納委員:今脇委員のご指摘のとおり、かなり変動が激しいと思われる。時・空間の変動スケールを求めて、平均流を算出するよう工夫したいと思う。しかし、まだデータ数が少なく、CTDデータなどの他のデータを使い変動スケールを求めるなどもう少し検討していきたい。

 

平委員長:気象庁の最後の図で、フロートの漂流深度は、日本近海では大部分が2000mで、熱帯域や太平洋東部では1000mのものが多くなっている。2000mを漂流深度にすることになっていたのではないのか。

加納委員:初期のフロートは、浮力調整できる密度幅が小さく、熱帯域などの海面の密度が小さい海域では、2000mを漂流深度にすると海面まで浮上できないため2000mよりも浅い漂流深度となっている。また、最近のフロートは、パーク・アンド・プロファイルという漂流深度とプロファイルの最深深度が違うタイプのものになってきており、漂流深度は2000mとは限らない。

平委員長:漂流深度1,000mのフロートは、パーク・アンド・プロファイル型のフロートで、水深2000mからのプロファイルは観測しているということか。了解した。

●海洋科学技術センターの湊から説明(資料2-4 データ品質管理、2-5 データベース)

●気象庁の加納委員から説明(資料2-6 全球海洋データ解析・提供システム)

(質疑応答)

今脇委員:湊さんが検証されたPMELの品質管理手法ですが、気候値からどれだけずれているかというのを見ながら補正するのか。この手法を何処まで採用して補正するか判断が難しいと思われるが、使わない方がいい場合も多くあるのか。

湊氏(海洋科学技術センター):そうだ。次回のデータ管理チーム会合でも、この点は話題になると思う。会合では、一応その場で同意された手順が明記されると思う。この間、ヨーロッパ・アメリカを回ってきて感じたのは、何処もこのようなテストをやっており、気候値からのずれが許容範囲内に入れば補正をやらずに生データを採用する、許容範囲から外れた場合は個々のフロートの癖などを見ながら補正するかどうか決めるというところが殆どだった。

今脇委員:この許容範囲は、その時実際にデータが無くても出るものか。

湊氏:実際のデータがなくても気候値があれば大丈夫だ。

今脇委員:統計的に見て気候値から、それほど離れていないという事か。

湊氏:過去のCTD観測値との差が問題になるほどには離れていないと言う事だ。

花輪委員:データベースに関して質問したい。現在、海洋科学技術センターで入手しているプロファイル数が7056、うち品質管理済が2750との発表があったが、本来ならば1ヶ月もしくは数ケ月以内に品質管理が終了し、データが公表されるべきと思う。現在は、まだプログラムの開発中ということは理解しているが、ルーチン的に行うにはマンパワーが問題になるのか。

湊氏:現在、大体100〜150個のフロートについて2人で処理しており、十分できると考えているが、これからフロート数が200を越えて300近いフロートを処理するとなると、苦しくなると思われる。

花輪委員:とはいえ、来年度以降からは、本来の数ヶ月遅れで遅延モードのデータが公表出来ると理解してよいか。

湊氏:限られたマンパワーで実施できる効率的なシステムを、最終年度までになんとか完成させたいと考えている。

花輪委員:科学的プロダクトとして、客観解析した結果を定期的に公表していきたいということだが、プロジェクト全体との整合性というか、こういうものを定期的に出すメリットはどこにあると考えているのか。

湊氏:内部の検討では、気候変動監視、高度海洋監視に貢献できるものを作成していくという考えでやっている。

●海洋科学技術センターの竹内委員から説明(資料2-7 データ同化)

(質疑応答)

平委員長:ここに出てきたReynoldsの海面水温データというのは何か。

竹内委員:これは衛星や現場データなどを合わせて作った大西洋海洋気象研究所(AOML)が出している海面水温データだ。

今脇委員:同化で海面高度のデータしか使っていないというのは、その方がよいのでそうしたのか。それとも内部の現場データを同化するのがなかなかうまくできないので、入れなかったのか。

竹内委員:海面高度だけではなく、アルゴによる現場観測データを同化させている。

平委員長:同化の時間間隔はどれぐらいか。1年に1回くらいしかできないのか。

竹内委員:四次元同化なので、一度の計算である程度の期間をやることになる。データが蓄積してから行うので、ある程度遅れる事になる。かなりの計算量が必要であり、地球シミュレーターでも相当な時間が掛かる計算になり、そう直ぐにはでないということだ。

平委員長:漂流深度の流れの同化もするのか。

竹内委員:漂流深度の流れのデータまでは、同化には入れていないが、原理的には入れる事は可能だ。

●海洋科学技術センターの堀田委員より説明(資料2-8 気候変動予測モデル)

●気象庁の佐伯委員より説明(資料2-9 海水温予測モデル)

(質疑応答)

平委員長:気象庁の図では、2001年12月からのNINO3の海面水温の予測では、半年後に誤差が1℃を超えてしまっている。気象庁の目標は、海面水温の予測精度を2002年度に1℃、2004年度には0.5℃としているが、今では4〜5か月先までは予測精度1℃を達しているということか。

北村氏(気象庁):平委員長のご質問のものは、あくまでも実験の一例だ。予報精度1℃ということについては、今年4月の推進委員会に、熱帯の太平洋の海域において最大の誤差があらわれるところの値を、十数年間の結果で評価するという方法で行うことを示した。この方法で評価すると、気候値だと1.20、持続予報だと1.00にたいして、今回のモデルでは1.05と、中間目標の予測精度1℃という数字にほぼ達成していると考えている。このモデルで具体的に、2001年12月という特定のエルニーニョのときの事例を示したもので、一例でもって1℃を超えているという厳しいご指摘は、なかなか辛いものがある。

花輪委員:アルゴの有無という表現だが、現場表層水温データの有無か、それとも本当にアルゴのデータの有無か。

北村氏:現場表層水温・塩分データ、アルゴのデータを、このモデルでは同化しており、真にアルゴのデータの有無で比較している。

花輪委員:アルゴフロートの展開が充実してくれば、XBTの観測は減らしていくという世界的な考えがある。したがって、アルゴフロートがふえるとXBTが無くなるので、むしろ表層水温・塩分データの有無で比較した方がいいのではないか。実際、アルゴのデータとXBTのデータ数は今年になって逆転しており、すでにXBTよりアルゴのデータのほうが多くなっている。

北村氏:XBTよりも、熱帯に関してはTAO/TRITONブイと衛星による海面高度による影響が大きいという感触を持っている。花輪委員の言われるような表層水温・塩分を除いた実験も、やってみたいと思う。

竹内委員:赤道の半年ぐらい先までは、たぶんTAO/TRITONが効くと思うが、アルゴが効いてくるのはその先だと思う。しかし、先ほどの例では、逆にアルゴを入れたほうが4月ごろから精度が悪くなっていた。何故悪くなったかというところが科学として興味のあるところだと思う。

議題3 作業部会からの報告

●気象庁の加納委員から、データの配信・処理等に関する作業部会の活動報告(資料3-1)

(質疑応答)

平委員長:付託事項に「中層フロートを品質管理し、即座にGTS・・・」とあるのですが、リアルタイムの品質管理は何をするのか。

吉田氏(気象庁):大まかな品質管理で、あり得ない水温・塩分値やフロートの位置が非常におかしいようなものを外している。

平委員長:さきほど遅延モードの品質管理で紹介のあったようなものは、リアルタイムではできないのか。

吉田氏:時間的な制約と、自動的にやる必要があるので、あのような凝ったものはリアルタイムでは行わないことを国際的に合意している。

●海洋科学技術センターの竹内委員から中層フロート展開に関する作業部会の活動報告

(資料3-2)

(質疑応答)

平委員長:この資料によると、展開している全フロートの911個の内、日本は1/6を占めており、アメリカは1/3を超えてるわけで、日本は非常に大きな貢献をしている。

議題4 平成17年度以降のアルゴ計画の継続について

平委員長:資料1の平成14年度評価報告書にあるように、平成17年度以降も継続するよう評価・助言委員会から提言を頂いた。このことについて、議論したい。

今脇委員:プロジェクト終了後も、是非ともこの続きを何らかの形で継続しないといけないという意見は、折りにふれて出ていたと思うが、周りの状況をどなたか説明していただきたい。

吉田委員:先般のエビアン・サミットの結果、7月の終わりに地球観測サミットがワシントンで開催されました。もちろん日本政府からも出席し、今後10年間の地球観測に関して、これは海洋だけではなく、衛星からのデータなども含みますが、全球的な観測計画・行動計画というものを作っていこうという動きがでている。それで、サミットの直後に作業部会というものが開かれ、11月にもイタリアで第2回目の作業部会が開かれます。第3回目もあるかもしれないが、来年の4月に東京で閣僚級の会合を開くということになっている。そこで全球的な10年間の観測計画の基本的なフレームワークを作り、秋ぐらいまでに詳細な行動計画を作っていくといった一連の国際的、政治的な動きがある。このアルゴ計画というか、アルゴフロートを用いた観測は、全球的な観測網を作っていくうえでは非常に重要な一角を占めるのではないかと考えている。
文部科学省としては、評価・助言会議のご提言もあり、地球観測に関しての国際的なフレームワークが今まさに作られつつあるというタイミングであるので、これから関係省庁、関係機関と色々と相談をしながら、うまく形を作っていきたいと思っている。

掘田委員:海洋科学技術センターは、来年の4月1日から独立行政法人「海洋開発研究機構」になるが、国が定めた中期目標に基づいた平成16年度から5か年の中期計画を、海洋地球課と相談しながら、財政当局と協議を進めている。このアルゴの予算は平成16年度まではミレニアムプロジェクトの予算だが、引き続き研究開発の段階が続くという考え方のもとに、将来の研究交付金の中に継続してアルゴの研究開発を続けるという計画を、中期計画の中に盛り込むことで検討している。したがって、中期計画が認められれば、平成17年度からの4か年で研究開発の第2段階に進めるのではないかと期待している。その背景として、地球観測サミットを受けて、次の研究開発を行うべきと考えている。

花輪委員:今までの日本で行ってきたミレニアムアルゴは、非常にうまくいっていると思う。その理由の一つは、それぞれの機関が個別に行うという形ではなく、いわゆるオールジャパンとしてのアルゴ計画であるという認識のもとに行われているからだと思う。こういうスタイルはやはり大事だと思う。オールジャパンでアルゴ計画を成功させるためにみんな頑張っている状況を次の平成17年度からの計画でも是非とも成立するような形で組織化、あるいは予算化されていくことを望む。

平委員長:海上保安庁は、現在の海洋短波レーダーは継続するのか。

長井委員:平成17年度以降については、海上保安庁の中の予算も非常に厳しくなっており、現時点ではまだどうなるかは分からない。担当課としては、さらに続けていきたいとは思っている。

平委員長:気象庁はアルゴ計画を今後どのように進めるつもりか。

佐伯委員:アルゴ計画は、オールジャパンとして、これまでにそれなりの成果をあげつつある。気象庁の中でも、アルゴ計画の認知度は高く、それなりにやっていると評価されている。さりながら、科学的な成果を出していく、あるいは、業務的にも有効性を示す必要がある。地球観測サミットを受けての色々な地球観測戦略といった格好で、色々な国際的な、あるいは国内的な連携が図られると認識している。気象庁内でも、いわゆる地球環境とか気候の問題に対して、今後、どういうふうに組織的・戦略的に取り組んでいけばいいのかということを検討している。その中で落ち着き先が見えてくるのかなと考えている。文部科学省等ともよくご相談しながら進めていきたいと考えている。

竹内委員:今の状況だと、それぞれの所で予算化していく格好になる可能性が高い気がする。ただ、これをオールジャパンでやっていくということが重要だ。予算がミレニアムみたいにオールジャパンになるのが理想だが、そうでなくとも何らかの枠組みを残すようなことができないかと考えている。

平委員長:これまでのフロートの生存率が良くない。特に、PROVORフロートは24か月でほとんど全滅している。改善は進んでいるのか。

竹内委員:当初、考えていたよりも寿命が短い。フロートの寿命は、電池の寿命から計算したものだが、やってみると色々な不具合が出て、このような結果になった。それぞれの不具合に関しては原因が見つかり改善が進んでいるが、残念ながら改善しても2年ぐらい立たないと本当に改善したかどうかの効果は見えないのが苦しい点だ。漂流深度が浅いと生存率が高いということがあり、今年の春からのフロートは、パーク・アンド・プロファイル型で、1000mを漂流深度とする。これも本当にいいかどうかわかるには、しばらくかかるということで、まだまだ開発途中で完成されたものではないという感想である。

平委員長:これは、国際的なレベルからいうとどうなのか。

竹内委員:国際的に平均すると、我が国のフロートは平均よりやや良いのではないかと思う。スクリプスのフロートがかなり大量に死んでいる。APEXフロートに関しては、世界的にどこのフロートでも同じであり、PROVORフロートに関してはフランスが日本より良いようだ。

平委員長:国際アルゴ計画の目標の3000個への歩みは、順調にいっているのか。

竹内委員:当初、考えたより伸びが緩くなっているという点は確かだ。ただし、元々、理想的に全部が4年生きるということを考えていた訳ではない。着実に増えていっていることは確かだ。

平委員長:寿命を長くすることは、結果的に、フロートの数は少なくともデータは増えることなので、重要なことだと思う。掘田委員が紹介したハドレー研究所と地球シュミレーターは、アルゴとはどういう関係なのか。

堀田委員:アルゴ計画とは別の共同研究である。海洋・大気結合モデルは色々な開発のチームが日本国内にあると思うが、ヨーロッパではハドレー研究所が進んでおり、そこと共同研究を進めている。アルゴのデータを利用することを、地球フロンティアの気候変動予測領域でやっていこうという方向になっているので紹介した。

石塚委員:水産庁はもっぱらユーザという立場ですが、このアルゴ計画の結果と、その先の出口のところを非常に期待している。そのために、海洋科学技術センターに人を少し派遣したり、あるいはアルゴフロ−トの回収等、できるだけの事をしてきたし、これからもやっていこうと考えている。

議題5 その他

(事務連絡)

事務局:次回は来年4月ごろを予定している。また、日程等については調整させていただくので、よろしくお願いしたい。