第9回ARGO計画推進委員会 議事概要

日時: 平成16年4月12日(月) 14:00〜17:00

場所: 文部科学省仮庁舎5階 研究開発局会議室

出席者: 平啓介委員長,花輪公雄委員,道田豊委員,篠原正治委員,石塚吉生委員,小滝晃委員,加納裕二委員,

木村吉宏委員,長井俊夫委員,堀田平委員,竹内謙介委員,須田秀志委員

欠席者: 今脇資郎委員,山元毅委員,土出昌一委員

● 議題1 「前回議事概要の確認」

平委員長より,前回の委員会の議事概要(案)について,修正意見等がある委員に対して発言を求めたが,特に意見はなく,1週間だけ意見を受け付ける時間をおき,その上で委員長の権限で承認するという手続きを取ることとなった。また事務局より,承認された議事概要はウェブページで公開される旨連絡があった。

● 議題2 「平成15年度の事業実施状況と平成16年度の事業実施計画」

 海洋研究開発機構(以下「JAMSTEC」)竹内委員より,資料2-1「国際協力体制の構築」について説明が行われた。2004年3月9-11日にフランス・ブレストにあるIFREMERで“International Argo Science Team Meeting”が開催され,世界中で投入されたARGOフロートが1,000を超して今年の終わりまでに計画の半分である1,500に達する見込みであること,「みらい」の世界一周航海などにより課題であった南半球での展開が進んだこと,遅延データ品質管理のガイドラインがほぼ固まったこと,フロートの漂流深度として1,000mを標準とすることなどが話し合われたことが紹介された。また,3月に韓国で開催されたワークショップへの参加についても報告された。

 JAMSTEC四竈氏より,資料2-2「中層フロートの展開」について説明が行われた。昨年度は,「みらい」の世界一周航海及び各関係機関の協力で,南北太平洋,インド洋,南大洋に計97本のフロートを展開したこと,全世界で1,121本の稼働フロートのうち208本が日本のフロートであり,2番目の貢献であることが報告された。フロートの生存率が低い原因について調査と対策が進み,また漂流深度も2,000mから浅い水深に変更されたこともあり今後生存率が上がることが予想されると報告された。さらにボランティア船による投入を目的とした段ボールによる投入装置について,さらなる改良が加えられたことが報告された。

 気象庁高槻氏及び海上保安庁長井委員より,資料2-3「アルゴフロート以外の観測システム」について説明が行われた。気象庁高槻氏により,平成15年度は,検証フロートを使った漂流速度の検証、フロートの漂流深度における流れの推定、それから検証フロートによるセンサー精度の長期的推移の把握を実施したことが報告された。平成16年度は,センサー精度の長期的推移の把握と今までの検証を継続し,1,000m及び2,000mの深度における流れの把握を継続する旨発言があった。次に長井委員により,海洋短波レーダーによる観測結果と、係留式ADCPの観測データとの比較について調和分解を用いた解析結果が報告された。またCTD観測との比較によるARGOデータの検証結果も報告された。

【平委員長】  プロジェクトオフィスやARGOインフォメーションセンターに対する我が国の支援はどうなっているのか。

【竹内委員】  ARGOインフォメーションセンターは、設立の際に日本にも打診があったが、日本はEEZに対する態度が少し異なるので参加していない。プロジェクトオフィスについては、今のところ支援の仕組みが難しくて支援していないが、ARGOのようなプロジェクトにおいて、プロジェクトオフィスの重みはだんだん増してくるので、何らかの形で関与したほうが得策だと思う。何か方法を考えたいと思っている。

【平委員長】  漂流深度が2,000mと1,500mとでは、たった500mの違いでAPEXの生存率に随分大きな差があるということだが、今後1,000mにまで浅くするということで、生存率がどのように推移すると考えているか。

【竹内委員】  以前の設定では、漂流深度はプロファイリング深度と同じ2,000mだった。漂流深度を維持するためには,その深度の水圧に応じた負荷がかかる。漂流深度を浅くすることでその負荷を多少避けられる可能性があるというのが漂流深度を1,000mにした1つの理由である。昨年度日本が投入したフロートは、全て漂流深度を1,000mに設定したが、まだ1年経っていないのでその効果はわからない。

【四竃氏(JAMSTEC)】  新しい設定では,1,000mの漂流深度に10日間滞在して、上がってくる直前に2,000mまで潜り、すぐにプロファイルを取りながら上昇する。そのため2,000mでの滞在時間がほとんどなく,その分負荷が減る。

【平委員長】  これまでの2,000mの漂流深度だと、余計にエネルギーを必要として、電池の消耗が大きかったと考えているのか。

【竹内委員】  その通り。また、高圧力下の環境ではいろんなところに負荷がかかり,電池の消耗以外に逆起電力の問題など、いろいろなトラブルが起こりやすい。

【花輪委員】  APEXのフロートがすぐに機能を停止する原因について、以前の報告で、結露によるショートで急激に放電現象が起こったのが主な原因であったと認識していた。バッテリーそのものにも不具合があるということは,最近になって判明したことか。

【四竃氏】  結露は2年ぐらい前から指摘されてきたことで、対策はとられている。バッテリーの不具合は、昨年我々が回収したフロートを,メーカーで調べて初めて見つかった。今後のフロートについては,バッテリーの不具合についても対策がとられる。

【竹内委員】  これまでのフロートの死亡が、(結露とバッテリーの不具合の)どちらに原因があったかはわからない。対策をとっても,その結果として実際に寿命が延びたことが判明するまでには2年ぐらいかかる。今,ちょうどその結果が出る時期に差しかかっている。

【花輪委員】  バッテリー電圧の経時変化の報告で、一番低い電圧は5ボルトぐらいを指していたが、5ボルトまで電圧が下がってもフロートは動作するということか。

【四竃氏】  5ボルト近くまで動作していたフロートもある。

【花輪委員】  そうすると、十数ボルトの高電圧をかけるのは危険ではないか。

【竹内委員】  5ボルトぐらいで動くフロートもあるが、大半のフロートは8.5ボルト以下になると機能を停止する。電圧の低下は電池の特性である。APEXのフロートではアルカリ電池を使用しているが,その他にもリチウム電池などいくつかの種類があり,それぞれ特性に違いがあって、電圧が急に落ちるもの、だらだら落ちるものなどがある。電圧のかけ過ぎは問題ないと思う。

【平委員長】  フロートの寿命を延ばすことは重要である。3ヶ月で機能が停止したら、いくら投入しても3,000個の展開は覚束ない。

【竹内委員】  大体,世界的にも日本の寿命と同じか日本のほうがちょっと長いぐらいである。世界の中における日本の貢献度は、投入数では約15%なのに対して、稼動数では約20%なので、日本のフロートの生存率は、投入したばかりのものが多いということもあるが、比較的ましなほうである。

【道田委員】  投入に要する船の費用を除いて、1プロファイル当たりのコストは計算されているか。

【四竃氏】  150プロファイルだと1万円になり、50プロファイルだと3万円である。寿命が2年とすると70プロファイルであり,1プロファイルあたり約2万円となる。

【道田委員】  以前にも言ったが、フロートの寿命や価格などの向上は,1プロファイル当たりのコストの低下として表れるので,フロートの改善の指標として成果に加えるべきである。

【平委員長】  塩分濃度のプロファイルのコストについては、比較の対象としてCTDと比較するべきである。当初からARGOシステムの構築は、経済的にもメリットがあるということで始まっている。

【石塚委員】  国産フロートの試験の中間的な結果が何か出ているか。

【四竃氏】  鶴見精機がNINJAと呼ばれるフロートを作っている。昨年の夏にテスト的に何台か投入したが、ソフトのバグのためよい成績ではなかった。そのバグを改善したフロートを昨年の12月にテスト的に投入して成功したので、3月の初めから通常のARGO仕様で実海域での長期テストに入っている。

 また,国産フロートについては、ARGO仕様ではないが、クロロフィルのセンサーを搭載したフロートが日本の近海の黒潮続流の海域で2台投入され、良い成績を上げているようである。このフロートは40mの深度で5日間漂流し、500mのプロファイル深度でクロロフィルと水温を取得し送信する。これは東大の安田先生と中央水研等との共同のプロジェクトとして進んでいる。

【加納委員】  (現在の水温・塩分を測定するARGOフロートの拡張として,)クロロフィル以外にも,いろいろな観測が行われているのか。

【四竃氏】  先日のアルゴサイエンスチーム会議で、酸素センサーについてのドイツ・米国の取り組み状況が報告された。まだ実用段階ではなく、テスト中という状況だと思う。ただ、物理だけではなく、その他の諸量をARGOフロートを利用して測定するという方向に、いろんな人の目が向けられつつあると感じている。

【加納委員】  二酸化炭素やpHは,実際にはまだ測られていないのか。

【四竃氏】  pHの報告は聞いていない。

【竹内委員】  pHはまだ難しいのではないかと思う。

【平委員長】  圧力センサーの不具合というのはどこに原因があったのか。

【四竃氏】  圧力センサーをつくる過程で溶接剤の不純物が紛れ込んでショートを起こすという、製造過程でのトラブルが原因である。したがって、全世界のCTDにリコールがかけられた。しかし、我々の航海スケジュールにはぎりぎりのところで間に合った。リコール以降は、修理したフロートのみを投入している。

【道田委員】  (資料2-3の説明で)二次曲線を当てはめていたが、あれは何をやっていたのか。

【高槻氏(気象庁)】  向きが不揃いなので、距離で全部計算するという形で、最初と最後の点がy=0の線にくるように座標系を回転させている。

【道田委員】  その横軸の数字は何か。

【高槻氏】  横軸の数字は距離(メートル)である。相対的な座標なので、最初の点を(0、0)に置いて、最後の点がy=0のあたりにくるよう座標系を回転させる。それを二次関数でフィットさせる。パラメータは3つだけなので簡単に計算できる。フロートの位置は、海面に出ている時しか得られないので、海面のP1からP16を使ってAとBを求めている。

【平委員長】  この場合のフロートから求めた流速は,100 km以内の流速計の値とほぼ一致するとの報告だが、せっかくラグランジュ的な流速があるので、相関を計算すべきであるが,相関の計算は行ったか。

【高槻氏】  計算していない。

【平委員長】  この100 kmという距離の決め方が納得しがたい。例えば200 kmならだめなのかなどを判断する上で、相関係数が有用である。相関のような統計量を計算すべきである。

【花輪委員】  (長井委員の海洋短波レーダーの説明で)ADCPと、HFデータを比べて、野島崎のデータが合わなかったわけだが、それは装置の劣化と考えるのか。昨年までの報告では結構良い結果を出しているという印象で私は聞いていた。

【長井委員】  この野島崎視線方向は、野島崎からの距離がかなり離れており、八丈島からのほうがずっと近い。精度が悪い原因の1つは、欠測なども2割ほどあったが、距離が遠いことにあると考えられる。もう一つは、野島崎に設置したアンテナが、少しずつ劣化していたのではないかと考えている。昨年報告したときには、気がつかなかったのだが、今回潮流の調和分解をやった結果,はっきりと認識できた。

【伊藤氏(海上保安庁)】  野島崎のデータ数が,今年の1・2月ごろから漸減し,受信状態の悪化が見られたので,3月にアンテナの駆動機構を調べたところ、結露か漏水かはわからないが、水が入って回路の一部が錆びついて一部作動しないような状況になっていた。ほかの回路は動くのだが、3本あるアンテナのうち1本が不良、作動しない状態になっていた。今日・明日に修理するので、明日あたりから少し復旧するかと思う。この不具合が起きた時期は不明であるが、昨年のデータにも少し影響があったものと推測している。

【平委員長】  調和分解を行った結果、(同じ項の係数が)ADCPで11なのに対して短波レーダーでは2ぐらいであり,20 %しかない。これはどこかに不具合が想定されるわけだが,調和分解しなくても,元のデータで黒潮の流速が常識よりもはるかに小さいものが出ているということで、判定できないものなのか。

【長井委員】  これまでそういう目で見ていなかったのでわからなかったが、もう一度そういう目で以前の黒潮とのデータの比較をやってみたいと思う。

【道田委員】  黒潮の流れの方向は、視線方向と違うから、係留点での黒潮の流速をレーダーで正確に出すのは難しいのではないか。

【平委員長】  視線方向ということは、半日潮の潮汐に対しては短波レーダーで流速が出せるのではないか。

【長井委員】  潮流のだ円の方向とは関係ありますかね。

【平委員長】  いずれにしろ,八丈島のデータはまあまあの結果であるが、野島崎のデータは精度が悪すぎる。

 JAMSTEC湊氏より,資料2-4「データ品質管理」について説明が行われた。平成15年度に圧力補正・塩分補正のプログラムを移植し,試験的な遅延データ品質管理を実施している。その補正結果を,投入CTDや近傍CTDの結果と比較し,塩分補正の評価を行ったところ,機械的な判断だけで90%,判断を保留にする微妙な部分を目視で行うことで95%を超える正答率が得られた。今年度も引き続き正答率を上げる方向で継続する。

 JAMSTEC湊氏より,資料2-5「データベース」について説明が行われた。データベースは順調に運用され,目視による遅延データ品質管理が済んだデータが,JAMSTECホームページからアスキーファイルの形で一般に公開されている。世界的に共通化が進められている遅延データ品質管理のガイドライン案が,前回のアルゴサイエンスチームミーティングでほぼ固まったので,そのガイドラインに沿って品質管理されたデータが,net CDFの書式で年内には公開される見込み。

 気象庁吉田氏より,資料2-6「観測データ処理管理」について説明が行われた。リアルタイムデータ処理については,日本で投入したフロートのデータについて,生データ解読,品質管理,フォーマット化を行い,各国気象機関が利用するグローバル・テレコミュニケーション・システム(GTS)と世界で2か所のアルゴ世界データセンター(GDAC)に,データ取得後24時間以内に送付している。解析プロダクトの公開については,海洋データ,同化システム,COMPAS-Kの解析結果を公開している。今年度も引き続きこれらデータ処理及びデータベースの運用を継続する。

【花輪委員】 既に遅延品質管理が済んだデータについて,近傍で実施されたCTD観測結果が公開されるなどして,再度遅延品質管理を実施することもあると思うが,そのようなことは想定されているのか?

【湊氏(JAMSTEC)】 データマネジメント会議で話題になったことはない。遅延品質管理はARGOデータ取得後6ヶ月で実施するが,その間に近傍CTDデータを手に入れるのは困難である。データ品質向上のために2・3年後に再解析を行い,その結果をGDACに送付して上書きする自由度はあると思う。

【竹内委員】 今のやり方では、前6カ月、後ろ6カ月のデータを使って品質管理を行うので、後6カ月の間に近傍CTDのデータが手に入れば品質管理に反映することが可能。CTD観測の情報を早く手に入れるシステムを考える必要がある。

【平委員長】 品質管理に反映されたかどうかにかかわらず,近傍CTDのデータがあるという情報は整備されるのか?

【湊氏】  メタデータとして書かれるのは投入時CTDの情報だけなので,あとは各PIの努力になる。しかし,非常に重要な情報であることから,我々も近傍データの存在のテーブルを作成中であり,でき次第順次公開する予定。

【平委員長】  深さはどのように考えているのか。例えば1,000mや500mなどの浅い深度におけるデータを扱う場合は,気候値と観測値で100分の幾つかの差はあって当然で,それまで観測値をはじくのはおかしいのではないか。

【湊氏】  ほとんどセンサードリフトのための補正であり、できるだけ一番下のポテンシャル水温でやっているので,そのようなことにはならない。

【竹内委員】  この品質管理のシステムでは近傍のいろいろなデータを集めて,各深度でのデータの検定では、その深さでの標準偏差による規格化のようなことを行っている。浅いところでは(CTDのデータでも)ばらつきが非常に大きいので、その大きなΣの中に(ARGOによる測定値が)入っていれば補正がかからないようになっている。実質的には,かなり深いところの安定したデータで補正している。

【平委員長】  資料2-5について,遅延品質管理の済んだデータの公開には,どれくらい時間がかかるのか?

【湊氏】 これまでは、とにかく過去のものを処理しなければならなかったので,観測を終了した観測を終了したフロートのデータから順番にやってきたが、竹内委員から説明があったように、手法として前後6カ月の範囲のものを使って品質管理を行うということで,手法的にもマンパワー的にもやれる状況と判断している。

【平委員長】  しかし,資料2-5の表では,遅延品質管理データの公開に1年以上かかっているものもあるが,これはどういうことか。

【竹内委員】  6カ月というのは,6カ月のデータまで使って品質管理を行うという意味で、6カ月以内に公開するという意味ではない。

(補足:資料2-5の表は,遅延品質管理が終了したデータ数を示したもので,GDACから公開されているデータ数を示しているわけではない。遅延品質管理後のデータの記述についてもガイドラインがほぼ固まったので、それに沿って遅延品質管理済データをnetCDFに書き直し、順次GDACに送る。6ヶ月を過ぎたできるだけ早い期間に送ることになっている。)

【平委員長】  この図では,遅延品質管理において,ARGOで取得したデータのうち約15%が補正の必要性が認められるグレーゾーンとのことだが,この場合,既に処理が済んでいるリアルタイム処理のデータも連動して再処理されるのか?

【竹内委員】  遅延品質管理で確実にずれていることが判明した場合に,その結果をリアルタイムのデータにも反映させることに関する議論を行っている。

 JAMSATEC竹内委員より,資料2-7「データ同化」について説明が行われた。1×1度・36層の全球モデルで,ARGO,TAO/TRITON,PIRATAのデータを用いて,2000年から2002年までの4次元同化を実施した。現在は2003年のデータを用いた同化及び衛星観測海面高度データの同化実験を実施中。同化データの検証のため,観測結果やモデルを時間方向に動かしたときの結果との比較が報告された。平成16年度は,結果の検証や手法の改善,入力データの自動作成の準備を行う予定。

 JAMSTEC堀田委員より,資料2-8「気候変動予測モデルの高度化」について説明が行われた。日本近海予測実験の海洋モデルにARGOデータを導入することで,予測結果が向上した。平成16年度は,気候変動予測に繋げるため,ドイツの研究所と共同で開発している大気海洋結合モデル(SINTEX結合モデル)に,ARGOデータを導入する。また,アジョイント法を用いたデータ同化実験に,ARGOデータを導入しその有効性を確認した。

 気象庁北村氏より,資料2-9「海水温予測モデルの高度化」について説明が行われた。予測の系統誤差を分析したところ,モデルの風応力のフラックス調整に問題がありそうである。ARGOデータの有効性については,モデルの誤差が大きすぎて判断ができない状況。平成16年度は,引き続き系統誤差の解析,データ同化の解析を継続する。また高解像度モデルの予測実験も行い,精度の向上を図る。

【平委員長】  堀田委員の説明で、予算が0になっているが、これはどういうことか。

【堀田委員】  相互乗り入れで、動いている。

【平委員長】  (資料2-7の図で)同化結果と観測結果との比較による色分けで,同化することで,より誤差の少ない緑の部分が多くなったとのことだが,これをどう評価するのか。

【竹内委員】  四次元同化だと、0になるところまではなかなか行かない。

【道田委員】  より誤差の少ない緑になったらいいということだと思うが、この緑色が示す範囲は、例えば水温が±0.5、塩分が±0.05の範囲であるが,これが目標だという認識なのか。

【竹内委員】  測定値との差を下げるだけであれば,四次元同化はやらないほうがいい。4次元同化では物理的な条件などをすべて満足するように結果を出している。原理的に観測も完全には誤差が0ではないので,同化との差を完全に0にするのは無理だと思う。ただ、まだこれ以上良くすることについて,検討する価値があると思う。目標設定については、例えば、観測であれば100分の1psuが目標ですよと言えるが、同化の場合は、誤差を小さくするのが目標ではないので、それを目標の指標としては出にくいと思う。

【平委員長】  竹内委員の説明で,同化を1×1度の36層で実施し,これが地球シミュレーターの限界とのことだが,これでは黒潮も分解できない。現状はまだそういう段階なのか。

【竹内委員】  1つの問題は,計算能力の限界である。もう1つの問題は,観測データ密度との関係,例えばARGOデータの密度が3×3度ぐらいなので,それよりモデルの解像度を上げても意味のある結果が出ない。この辺は,同化そのもののこれからの課題である。

【平委員長】  データの密度に縛られなければ,モデルとしては細かくはできるのか。

【竹内委員】  同じ同化といっても、目的がかなり違っており、観測値の補完を目的とするもの,力のつり合いなどを出したいもの,いかにいい初期値を出すかに目的があるもの,それぞれ微妙に違ってくる。究極的にはそれらが全部一致することになるが、現実的には、目的によって手法も変わってくると思う。

【道田委員】  資料2-8で,同化前後の水温の図があるが,黒潮続流に多少青い部分が残っている。これはARGOの展開されている密度がまだ足りないという認識なのか。

【竹内委員】 ここは渦ができているので,ARGOで目標とする展開密度でもまだデータが足りない。TOPEX/POSEIDONでも、解像度が足りるか足りないか。

【道田委員】  これは、同化にはARGOデータ以外に,どのような観測データを用いているのか?

【堀田委員】  もともと海面高度データを使っていた。それに海上風データ,最近になってARGOデータを導入している。

【平委員長】  資料2-9の海面温度予測について,ARGOやTAO/TRITONデータの有る無しにかかわらず,実際に観測された値とのとの差が大きいまま,改善が見られないというのはどういうことか?

【北村氏】  結合モデル自身の予測の系統誤差に比べると、初期値の差の影響はまだ小さいということである。初期値の段階での海の中の状態については,ARGOやSHIPのデータを抜いた場合には明らかな違いが見られる。

【平委員長】  例えば、エルニーニョの予報に対して,6カ月が,さらにもっと延びたというようなことが言えそうか。

【北村氏】  それは言えない。しかし,このプロジェクトを通して開発し,昨年の夏から動き出した現行モデルで、実際のスキルが良くなった。ARGOをきっかけに、今の海洋観測システムの全てのデータを利用するフレームにしたことで改善が見られたのは間違いない。

【平委員長】  今まで,予報可能期間が3カ月だったのが、ARGOデータを導入することによって予報可能期間を1年に延ばすことができたと言えるのか。

【竹内委員】  この結果は,エルニーニョ状態になることを予測しているので、悪くない結果かと思う。

【北村氏】  このケースでは,モデルはよく予測していて,これを元にした予報が実際に出せる状況になっている。

【平委員長】  今のお話だと1年前からエルニーニョの発生を予測できていたと言えるのか。

【北村氏】  確かにこのケースでは1年先後ぐらいまで正しかった。ただし,評価としては統計的に行うので,平均で見るとスキルは予測時間とともにだんだん下がっており,予測期間が大きく延びたとは言いにくい。

【花輪委員】  今のモデルを高解像度にする方向でスキルの向上を図っているが,今の枠組みの中で、(解像度の向上だけではなく)その中のやり方を改良することでスキルを向上できないか。例えばフラックス調整をできるだけ無くす方向で改良することでスキルが上がらないか。

【北村氏】  モデル自体の改良には,マンパワーと体制が必要。気象庁で使っている現行モデルには,他にも改良すべき点があり,それら全体を良くする必要がある。そういった将来的な意味もあって、新しいモデルの開発にマンパワーを投入したい。

 また,東部太平洋だけでなく,西太平洋やインド洋の海水温を予測するためには、現行モデルでは足りないものがさらにあるので,抜本的にモデルを改良しなければいけない。そういうことを1つのモデルでやるときに、解像度を上げた方が効果的という気持があり,今後こちらのほうにシフトしていきたい。

● 議題3「作業部会からの報告」

 気象庁木村委員より,資料3-1「データの配信・処理等に関する作業部会」について説明が行われた。本年1月23日に第4回作業部会を開催し,昨年11月に開催されたアルゴデータ管理チーム会合の合意事項への対処等を検討した。アルゴデータ管理チーム会合では,netCDFフォーマットの改善,即時品質管理項目の追加が合意され,遅延品質管理手法の導入等が議論された。netCDFフォーマットの改善と即時品質管理項目の追加は,気象庁では本年2月に対応済みである。

 また,本作業部会で,我が国のアルゴ即時データセンター機能については,ミレニアムプロジェクト以降も,気象庁で継続する意向である旨表明した。

【花輪委員】  データの配信・処理等に関することは、完成度が高くて、懸案事項はあまりなさそうな気もするが、世界的、国際的に問題であって今からの検討事項があれば教えていただきたい。

【竹内委員】  各PIが行った遅延品質管理のデータについて,リージョナルセンターで再度チェックを行い,おかしかったらPIに差し戻すことが議論されている。また,即時処理されたデータは,GTSとGDACに送られるが,GDACに送られないデータの存在や,送られてもメタデータに必要な事項が含まれていないといった問題もある。

【平委員長】  気象庁が運用しているデータセンターの扱う海域はどのように決められているか。

【木村委員】  GTSで流通する全世界のデータを扱うので、海域は特定しておらず,全世界ということである。

【吉田氏(気象庁)】  GTSについては全世界でやって、日本のデータについては気象庁に送られてきたデータを処理している。

 JAMSTEC竹内委員より,資料3-2「フロート展開に関する作業部会」について説明が行われた。12月及び2月の2回にわたり作業部会を開催し,平成16年度の展開計画を策定した。世界的な状況として,北半球の展開はあと400本投入すれば目標の観測密度に達するが,南半球の展開が遅れている。日本は平成16年度90〜100台のフロートを,北太平洋,南太平洋,インド洋に展開予定。カナダ,韓国,オーストラリアのフロートを日本の船で投入することについて調整を行っている。投入に使用する船舶は,例年の気象庁,海上保安庁,水産庁,大学,JAMSTECの船舶のほか,今年度は水産高校の協力が得られる。

【平委員長】  資料中で,「韓国、カナダ、オーストラリア等との投入協力を促進」というのは、これらの国のフロートを日本側の船を使って投入するということか。

【竹内委員】  主にそうである。カナダに関しては、逆に、カナダの船で日本のフロートを投入することも検討している。

【平委員長】  水産高校の湘南丸というのは、500トン型か。

【四竃氏】  そうである。

【平委員長】  水産庁が知っていると思うが,水産高校の実習船は多数あるのではないか。

【石塚委員】  水産高校は多数ある。主に北太平洋の航海が多い。

【平委員長】  最近はインド洋のマグロ漁の実習に行くのか。

【石塚委員】  インド洋まで行くと、途中に海賊の出没海域など危険なところがあるのでほとんど行っていない。

【平委員長】  そうすると、太平洋で(のフロート展開への協力が)期待できるということか。

【竹内委員】  三崎水産高校を端緒として、ほかの水産高校の協力も得たいと思っている。三崎港は三崎水産高校以外の水産高校の実習船の基地にもなっていると聞いている。地理的にも協力体制をとりやすいと思う。

【平委員長】  関連して,ダンボールによる簡易投入装置などをどんどん活用すべきではないか。

【四竃氏】  水産高校の実習船内の場合は,保管場所が狭いので、段ボールは使用せず、もっとコンパクトにフロートを置くことを考えている。

【平委員長】  500トン型だとフロートを船倉には入れられないのではないか。

【四竃氏】  船倉には入れない。デッキ上に立てて置くことを考えている。

【竹内委員】  水産高校の場合は、フロートの扱いに慣れており、停船してから投入することも可能なので、商船の場合と違って、必ずしも段ボールに入れる必要がない。

【道田委員】  最近は韓国もかなり積極的のようだが,予算がかなりついているのか。

【竹内委員】  韓国では、年間、フロート20〜30幾つか分の予算が出ているとのこと。韓国の場合は、あまり外洋へ行く船がない。今まではボランティア船や南極観測隊の船で投入していたが,必ずしも成績がよくなく、できたら観測船で投入したいとのこと。できるだけ協力したいと考えている。

【花輪委員】  南極海に多くのフロートを投入する計画で,もう既に経験があるのだろうが,海氷との関係で問題になることはないのか。

【竹内委員】  いろいろある。例えば極地研が投入したフロートで、海氷域に入ってしばらく出てこないことがあった。対策は色々検討中である。例えば,海氷の下にいるときはデータを保持していて、海面に出てきたときにそれを全部送信するなど。その場合,通信にアルゴスを使っていると難しいので,イリジウムなどの使用が必要。それから、JAMSTECの北極グループが、J-CADというプロジェクトを実施しており,氷の上にブイを設置して,その下にロープをおろし、今までは水温計をつけていたのだが、ARGOフロートをロープに這わせて運用することも検討している。

【四竃氏】  この計画は,今年から3台制作し,来年の夏に投入される予定である。

【平委員長】  プロファイルはどのように取得するのか。

【竹内委員】  電磁カップリングでデータを送って、その海面上に出ているブイから、通信衛星を使ってデータを送信する。

(全体について)

【竹内委員】  ミレニアムプロジェクトの最終年度のまとめとして,シンポジウムなどをやるのか。

【平委員長】  推進委員会として行うことも考えられるし、評価・助言会議やミレニアムプロジェクト全体で行う可能性もある。

【竹内委員】  恐らく、推進委員会が実施して,評価委員に聞いてもらうという形になるのではないか。

【須田委員】  ミレニアムプロジェクトは今年度で終了するが,ARGO自体は国際協力の中で継続していく。シンポジウム等も提案があれば検討をお願いする。今後のことについても、評価・助言会議があって、推進委員会も開催されるので,そのときに検討していただければと思う。

【花輪委員】  ミレニアムプロジェクトの一般的な締めとして、例えば報告書の作成など,手続きに関するガイドラインはあるのか。

【事務局】  まだ決っていない事項もあるが、全体評価の実施時期については,平成17年度ということになっている。

【平委員長】  要するに、事後評価を行うわけであり、ミレニアムプロジェクトとしての評価の観点では,国内のシンポジウムを開催すべきであるが、ARGO計画全体でみれば,国際的な面も無視できない。

(連絡事項)

【須田委員】  本日は,ARGO計画についてご助言、ありがとうございます。これは国際共同プロジェクトであり,全世界の海洋の水温と塩分をリアルタイムで把握するという非常に意義の高いプログラムでもあるので,引き続き着実に実施していきたいと思う。今後ともよろしくお願いする。

 次回の推進委員会は、10月ごろを予定しているが、評価・助言会議から宿題が出た場合には7月ごろになる可能性もあるので,その際には、すぐ連絡をさせていただく。次回は、国土交通省で開催事務を担当するので、よろしくお願いする。

― 了 ―