第1回アルゴ計画推進委員会議事概要
日時:平成17年12月2日(金) 14:00〜17:00
場所:海洋研究開発機構東京事務所10階セミナー室A
出席者:
花輪公雄委員長、久保田雅久委員、松山優治委員、道田豊委員、
本清耕造委員(代理出席:山田基靖氏)、佐藤洋委員、
和田時夫委員、馬場崎靖委員(代理出席:廣澤純一氏)、木村吉宏委員、
小田巻実委員、菊地聡委員、水野恵介委員、四竈信行委員
*開会後、各委員及びオブザーバーの自己紹介を行った。
*委員長の選出:事務局からの提案に対して全員の拍手により、花輪公雄氏が委員長に選出された。
*配付資料の確認:
- 第1回アルゴ計画推進委員会議事進行予定(海洋研究開発機構)
- アルゴ計画推進委員会名簿(海洋研究開発機構)
- アルゴ計画推進委員会の設置について(海洋研究開発機構)
- ARGO計画に関連する海象観測について(海上保安庁)
*委員長の挨拶の後議事に入る。
【議題1:国内アルゴ計画の進捗状況(観測関連)】
1. アルゴフロートの展開状況
(海洋研究開発機構四竃委員が説明。)
説明の要点:
- 平成17年度のフロート投入は関係機関の協力により、21航海で95台のフロートを投入する。(JAMSTECのフロートのみ)
- JAMSTECの投入フロートは現在までの通算で427台である。
- フロートの生存率はAPEX型で投入2年後に80%弱、PROVOR型で30%弱である
- 現在北極にはアルゴフロートは入っていない。
- 南大洋にはかなりの数が入っているが、南極の氷の下をどのように観測するかが課題である。
- 暦年毎の世界の投入数は2000年〜2004年が116,292,455,667,849と順調に増えている。2005年は836+α。
- 目標の全世界で3000台にいつ頃到達するかは、フロートの寿命の延伸、各国のフロートの投入数にもよるが、早ければ今から2.5年後と予想される
- 各種改善によりフロートの寿命は年ごとに延びてきている。
質疑・応答:
道田委員:KESSのフロートはアルゴと同一仕様か?
四竃委員:深度は浅いが、データ処理はアルゴフロートと同じ対応をしている。
松山委員:プロファイルは1500mか?
四竃委員:漂流深度は1000m、プロファイル深度は2000mである。
久保田委員:漂流深度を2000mとするよりも1000mにした方が、寿命が長くなるという統計の数字はあるか。
四竃委員:統計数字としてはないが、経験的に寿命は長くなっているようである。
水野委員:寿命が延びれば早く3000個に到達するということだが、現在の寿命はどのくらいか?
四竃委員:約1000日(約3年)である。年間の投入数については、特に米国の動向が大きく関係してくるが、先月のチリでの国際会議でNOAAでは今後5年間は、今までと同様な予算が見込めると聞いた。
水野委員:技術的な改善の見通しはあるのか?
四竃委員:バッテリーに問題のあるエナジーフルーや圧力センサーのトラブルは解決されているので、生存率は良くなってきている。1000日の寿命はこれらのトラブルが解決されていないフロートを含めてのことなので、現在投入しているフロートは、もっと寿命が延びると考えている。
花輪委員長:定常状態になれば3000台割る平均寿命が、1年に入れるフロートの数になるということですね。空白域をどう埋めていくのか、国際的に合意した考え方はあるのか?
四竃委員:できる国ができる海域で空白域を埋める、ということで対応している。
菊池委員:北極と南極については今のタイプのフロートでは対応できないということか?
四竃委員:後ほど紹介するが、北極については現在JAMSTECで開発中の新型フロートが有望であると考えている。南極については、頭上に氷があることを感知して浮上を止めて海中に止まることにより、生き延びるタイプのものが試験されている。但しデータを確実に採取するには、そのデータがどの場所のものか識別する必要があり、そのためには海底にたくさんの音源を設置する必要があり簡単ではない。いい方法はまだ見つかっていない。
2.「海洋の健康診断表」のための中層フロートによる観測
(気象庁高槻氏が説明。)
説明の要点:
- 年間15台のアルゴフロートを日本近海に投入し、海洋の健康診断表を気象庁のHPで公開する。(平成17年10月25日から公開している。)
- フロートの漂流深度は1000m、観測深度2000m、観測周期5日、2年間運用予定。
- 30台運用で、毎月1度格子に1データの観測密度を期待している。
- 秋期と冬季に分けて投入・運用する。(投入は高風丸、長風丸により行う。)
- 今年度調達したフロートはPROVOR型である。
- フロートの投入はキャンバスでフロートを包んだ形で行った。
- フロートの採取データは投入時CTDと比較して良く一致している。
- 但し1台のフロートのみで、全層に亘ってアルゴフロートの方が0.01程度塩分が低い。
質疑・応答:
松山委員:塩分がずれているのか?
高槻氏:そう思っている。電気伝導度センサーか水温センサーがずれているか評価できない。
花輪委員長:全ての投入地点でCTD観測を行っているか? 測線を外れた場所に投入したほうが良い場合もあるが、その時にCTD観測はどうするのか?
高槻氏:基本的に投入地点でCTD観測を行うようにしている。
花輪委員長: 日本海についてはどう考えているのか?
高槻氏:EEZの問題があるので投入はむずかしいと考えている。
久保田委員:浮上サイクル5日の根拠は何か?オーバーサンプリングと言われないようにしておく必要がある。
高槻氏:気象庁の持っている同化モデルが5日なのでそれに合わせている。
花輪委員長:投入台数の15台/年を、どの程度継続できるのか?
高槻氏:定常業務で行うことになっているので、止めろと言われない限り続けることになる。ただし海域は日本近海に限られる。
道田委員:観測密度の1度格子につき1台はどういう計算になっているのか?
花輪委員長:今からでも良いから説明できるようにしておく必要がある
久保田委員:基本的には、なかなか流れていかないところに投入すると言うことか?
高槻氏:その通りであるが、想定外に早く移動するものもある
3.海洋短波レーダーによる海況変動監視及び西太平洋海域共同海洋調査計画
(海上保安庁小田巻委員が説明。)
説明の要点:
- 昨年からの黒潮蛇行の監視に、アルゴフロートのデータを用いた。
- 伊豆半島沖で黒潮の流れが一部逆流する様子が野島埼と八丈島の短波レーダー観測によっても観測された。
- 日本周辺にアルゴフロートがたくさん分布していることにより、400m深度の水温分布が月に1回描けるようになった。今までは100〜200mの深度であった。黒潮続流域の冷水渦もはっきり観測できた。
- WESTPAC(西太平洋海域共同調査2005年2月18日〜3月17日)の概要の説明。
- 短波レーダーとADCPの比較検証を行っているが相関が悪い。風の影響のみでなく海流自身の変動も入ってしまっているのも原因の一つではないかと思っている。
- 次年度以降も短波レーダーの運行も含め、今までと同様に進める予定である。
質疑・応答:
花輪委員長:以前問題になっていたアンテナの特性の問題は改善されたのか?
小田巻委員:漏水部分の修理やアンテナパターンを調整することによりだいぶ良くなったが、もう少し良くならないかと思っている。また現在野島埼と八丈島の2カ所にしかレーダーを置いていないので、レーダーの視線方向しかとれないと言う特性が出てしまっているのかとも思っている。
久保田委員:短波レーダーとアルゴフロートのデータが合わないのは主に時間差の問題か?
小田巻委員:同時に観測すればもっとよく合うはずと思う。係留系が故障していて計測できなかった。今後は係留系などのデータと比較して検討を続けたい。
4.水産庁及び水産総合研究センターによるアルゴ計画関連観測について
(水産庁和田委員が説明。)
説明の要点:
- 水産庁では2001年以降親潮域を中心に2005年までに11台の中層フロートを投入した。データはアルゴ計画の一環として登録済み。
- 等密度追従型のフロートを用いた北太平洋中層水の形成過程の解明や親潮から混合域中層への炭素輸送の解明について説明があった。
- データの受信、管理、解析は来年度も続けるが、来年度に新規にフロートを投入する計画は無い。
- 現在航海中の照洋丸でJAMSTECのアルゴフロートの回収を試みる予定である。
質疑・応答:
花輪委員長:水産庁のアルゴ型フロートの投入は、プロジェクトの中で入れているのか?
和田委員:農林水産庁のプロジェクト研究の一環として行っている。このプロジェクトは今後も続くが、2006年度はフロートの投入計画は無い。
道田委員:等密度追従型のフロートはどの程度の深度になるのか?
和田委員:26.7σである。(300〜400mの深度に相当する。)
【議題2:国内アルゴ計画の進捗状況(データ処理関係)】
1.第6回アルゴデータ管理チーム会合について
(気象庁吉田氏が説明。)
説明の要点:
- 平成17年11月8日〜11日に気象庁で開催された。
- 10ヶ国から52名の参加があった。
- 目的はデータシステムの現状を把握し問題点があれば改善方策の検討を行う。
- GTSに投入されたデータの数はこの1年で倍増している。
- 24時間以内にデータが処理されたプロファイルの割合は80%以上である。
- インターネットで各種データを見ることができる。
- 遅延QCの実施状況は世界的に見て、23%しかない。(主は塩分の補正)
- 大きな課題の一つとして、CTDデータの収集があげられた。
- 主な決定事項として、フォーマットの改訂を来年1月に行う、遅延QCは課題が多いので来年ワークショップを行う、来年のアルゴデータ管理チーム会合は中国(天津)で開催する等である。
質疑・応答:
花輪委員長:メンバーはフィックスか?どこから誰が来ても良いのか?
吉田氏:メンバー名がどこかに書いてあるというわけではないが、メンバーは殆ど固定している。メンバーに招待状を出すという形ではなく、メーリングリストで流すというワークショップのようなやり方を行っている。
2.リアルタイムモードデータ処理システムの状況
(気象庁吉田氏が説明。)
説明の要点:
- 気象庁で行っているリアルタイムデータ処理についての説明があった。
- 国内の中層フロート運用者からのデータ提供について、JAMSTECからは順調にデータ提供数が増えていること、北海道区水産研究所の5台の処理を始めたこと、気象庁が最近投入した7台のデータ処理、過去のデータ(東大海洋研の日本海の4台等)の発掘も行っている。
- 現在国内の中層フロート運用者からのデータ提供数は稼働中のものが6機関324台となっている。気象研が運用しているフロートの内、水温観測のみの浅い海域のフロートは寿命が長く、250プロファイル以上観測しているものもある。
- 全球海洋観測網は急速に充実しつつある。プロファイルデータ数も急速に増加しているが、その大きな要因はアルゴフロートとトライトンブイによるものである。XBT、XCTDが減るかと思ったがそうでもない。
- リアルタイムデータ処理システムは既に運用段階に入った。
- 今後はこの席に出席している機関以外の、水産研究機関や大学その他とも連携を進めていきたい。
質疑・応答:
花輪委員長:完全に運用段階に入り、今後はディレードモードQCで確立されたノウハウをリアルタイムモードQCにも活かしていこうと言うことですね。
吉田氏:日本ではまだ導入していないが、先日のデータ管理チーム会合で決まった。
花輪委員長:リアルタイムデータは今後も気象庁が担当すると言うことであるがフロート数が増えても対応できるか?
吉田氏:20〜30%程度の増加であれば対応可能である。
3.遅延モードデータ処理と太平洋リージョナルセンター
(海洋研究開発機構の湊氏が説明。)
説明の要点:
(1)遅延モードデータ処理
- 遅延モードデータ処理の現状に関し次のことが報告された。
- この1年間で7246プロファイルを処理し、ウエッブで公開した。
- 1467のプロファイルをnetCDFファイルにしてGDACに送った。
- データ処理システムの更新が今年の9月に終了し、オンライン処理できるようになった。
- netCDFファイル作成は完全自動化には至っていないが、毎週400プロファイル程度作成している。
- 塩分補正について、CTDデータが決定的に重要であることが、先日のデータ管理チーム会合でも確認された。フロート投入時にはその近くでCTD観測を行っていただき、データを提供していただきたい。
- 海面圧力とそれによる圧力補正に関して説明があった。
- 遅延フラグ2(probably good)の問題や最深層データが無いプロファイルデータがあるので注意していただきたい。
(2)太平洋リージョナルセンター(PARC: Pacific Argo Regional Center)
- リージョナルセンターの世界における位置づけについて説明があった。
- 太平洋域リージョナルセンターについてJAMSTECとCSIRO(豪)との分担や関連する国等について説明があった。
- 太平洋域リージョナルセンター会議は2004年の第1回から今年の第3回まで開催されている。
- 第3回会議(11月10日、気象庁)では、日・米・豪・中・韓からの参加者は当面ウエッブサイトを充実する方向でPARCを運用することに同意した。そのページに中に参加国名を入れる、AICの情報との整合性をとること等の意見が出た。
- リージョナルセンターの機能として、当初は各担当海域のデータの整合性をとることであったが、ASTはその他に、PIとのフィードバックメカニズムを構築する、よいリファレンスデータの作成と保守、プロダクトの配付、フロート投入等の調整、QC手法の開発等の機能の拡大を求めている。
- PARCウエッブサイトやその中のJAMSTECウエッブサイトの現状と今後の計画について紹介された。
- 今後下記の項目について推進委員会の名前でバックアップしていただきたい。
- 1.各機関のコンタクトパーソン(名前、機関名、Emailアドレス、WebURL、Tel、Fax)をPARCウエッブサイトで公表する。
- 2.アルゴフロート投入計画・クルーズの収集への協力とPARCウエッブサイトからの公開
- 3.アルゴフロート投入機会の収集への協力とPARCウエッブサイトからの公開
- 4.投入CTDデータの収集への協力とPARCウエッブサイトからの公開
質疑・応答:
山田委員代理:PARCに台湾が参加する話はないのか?IODPでは科学者レベルでは台湾の参加がOKとなったが、政府レベルの話になると、中国から待ったがかかったと言うこともあるので注意して頂きたい。
花輪委員長:PARCの役割がバーチャルにしか見えない。太平洋については実質はJAMSTECがやるしかないようになってしまわないか。
湊氏:走り始めはそうなるであろうが、遅延QCは各PIが責任を持って行うことになっているし、中国あたりも急速に力を付けてきていることもあり、そう心配していない。
花輪委員長:ウエッブサイトについてはJAMSTECが責任を持つということか?
湊氏:PARC JAMSTECのウエッブサイトについてはその通りである。PARC全てではない。
水野委員:具体的な遅延QCはJAMSTECがやらざるを得ないと考えている。
花輪委員長:推進委員会でバックアップできることがあれば対応する。
【議題3:国際アルゴ計画の状況】
四竃委員:今年の2月に国際アルゴの幹事会がパースで開催された。その時の話を主に紹介する。
- アルゴを堅固で持続したシステムにするには、予算の定常化、投入ロジスティックの確保が必要であり、そのためにはアルゴの有用性を宣伝し認めてもらう必要がある。また信頼できるデータの安定配付が必要であり、そのためには例えばリージョナルセンターの安定的な維持運営もかかせない。さらに3000台のフロートを維持するにはフロートの性能の長期安定化も不可欠である。
- 今までは3000台を目指してきたが、2000台を超えた今、環境問題や漂着問題に対応する必要があるという議論が出てきている。
- フロートの塩分センサーへの生物付着防止のためにTBTOが使われているが、この物質が環境に悪影響を及ぼすものであると言われている。現在は日本の国内法では違法でないことを確認しているが、代替品を探す必要がある。
- フロートの数が増えてきて、漁民に拾われたり、漂着したフロートが何らかの原因で人を傷つけてしまうようなことがあると、アルゴ計画そのものの継続に支障を来してしまう。そのようなことが起きないよう、真摯に取り組む必要があるという議論が始まりつつある。
- JAMSTECのフロートの内2台がフィリピンのミンダナオ島の近くで漁船に捕まり、陸へ引き上げられてしまった。1台は発信を止めているが1台は発信を続けている。現在ミンダナオ島には各国のフロート計8台が漂着している。フィリピンの沿岸警備隊と情報交換を行っている。
- 我々は漂着フロートを回収した経験はないが、スクリプスでは2台ほど経験がある。その時は現地に技術者を派遣し、現地でフロートからバッテリーを外し安全にした後、輸送したということである。
- フロートの回収は所有者の責任であると我々は考えているが、国際的なルールをどうするかこれから議論が始まるところである。
- フロートには漂着時を想定して、国連の公用語である6カ国語で書かれた注意書きが貼られており、連絡先が分かるようになっている。
- フロートはゴミなのかという問題についても、国際アルゴの場で議論しようと言う機運が出てきている。
- TBTOは生物付着防止剤として、かつては船舶の船底塗料として大量に使われていたが、今は禁止されている。法的には「化学物質の審査及び製造等に関する法律」に輸入禁止品のリストがあるが、アルゴフロートに使われているTBTOを使用したシリンダーはそのリストに載っていないため、法的に使用は問題無いことを確認している。
- しかし将来もこのままでよいとは言えないために、TBTO無しのフロートを亜寒帯、亜熱帯に2台ずつ投入し試験を行っている。亜寒帯のものは投入後10ヶ月経つが今のところ塩分データに有意の差は見られない。
- 来年1月にインドのハイデラバードで国際アルゴ運営会議が開催されるが、その場で議論したいと思っている。
- 第2回アルゴサイエンスワークショップが来年3月にイタリアのベニスで開催される予定である。
質疑・応答:
水野委員:国際的には環境問題への取り組みが始まったということであり、日本ではアルゴ計画の最初の頃から検討を進めてきたことをご理解いただきたい。
花輪委員長:アルゴ計画が環境に負の影響を与えないことは大事であるが、リスクとベネフィットのバランスが重要である。一例として、レントゲンによるX線検査も、X線が体に与えるリスクと、X線検査により身体内部の情報が得られるベネフィットのバランスを考えて、X線検査は有用であると判断されている。
松山委員:TBTOに関し、フロートを投入する船舶から海洋汚染の懸念が提起されたと聞いているが?
四竃委員:TBTOの問題を検討するきっかけは、白鳳丸の船長からの懸念提起であった。2ヶ月ほどかけて情報収集や調査を行い、弁護士にも相談して法的には問題がないということが分かった。それとは別に、現場でTBTOの付いているフロートを扱うときの注意事項として、伝導度センサーには素手ではさわらないようにする、取り外したTBTOに接触した部品はビニール袋に入れる等徹底するようにしている。
和田委員:日本海に投入するとEEZの問題があるとの話があったが、何らかの規制があるのか?
四竃委員:投入前に海洋大循環モデルを使い、シミュレーションし、3〜4年後にある国のEEZに流入する可能性がある時は、外務省を通して相手国に事前に許可を得ることにしている。日本海の場合は、日本の沿岸近くに投入しても、すぐ隣国のEEZに入ってしまうので投入をあきらめたことがある。
山田委員代理:日本海は中国、韓国、ロシアと国境の確定のむずかしい問題があるから避けていると言うことでしょう。
水野委員:現在日本海では韓国のフロートがたくさん稼働しているようであるが、外務省に申請はあるのか。
山田委員代理:韓国からの申請は無いと思う。海洋法の解釈が国によって異なることはある。日本海には公海は無いので、船から投入することに関する申請は出ているのではないかと思う。
【議題4:アルゴフロートの新技術情報】
四竃委員:
JAMSTECで開発しているフロートの新技術に関し紹介があった。
- 現在開発中の中層フロートは特殊ギヤポンプを使用して浮力を得るので、得られる浮力の割に本体を小さくできる。現在室内実験を行っており2500dbまでうまく働いている。将来は3000〜4000dbを目指す。
- 酸素センサーは、現在世界にアンデラ社のものとシーバード社のものと2種類あり、各々測定原理が異なる。現在各々の酸素センサーを搭載したフロートを今年6月に4台、8月に2台投入し、センサーの特性を調べている。
投入時に行われた船舶での観測結果と比べて、フロートの値はやや低めの酸素濃度を示している。またメーカーによる差は小さい。今のところ経時変化は確認されていない。
- 北極海用アルゴフロートの紹介があった。
今年の4月に、1ヶ月間北極で試験した結果良好であったので、長期観測のために8月に再度設置したが、イリジジウムの送信機側の不具合によりデータが取れなかった。現在回収の方策を検討中である。
ワシントン大学のフロート関連新技術の紹介があった。
- 現在アルゴフロートは、アルゴス衛星システムを使用しているがその欠点は送れるデータ量が少ないことである。30秒毎に32バイトしか送れない。
- 大量のデータを送れるシステムである、イリジウム衛星を使用するフロートが開発されつつあり、現在数十台のフロートが試験的に稼働している。今までの10倍のデータを6〜7分で送信できる。今までは海面に10時間いる必要があった。
- JAMSTECでも今年5台購入し、来年度にインド洋に投入する予定である。電波法の改正により今年6月から日本でもイリジウム送信機の発信ができるようになった。
- イリジウム衛星システムを使うことにより1000mでドリフトしている時に細かな水温と圧力の情報も得られる。
- ワシントン大学では1台のフロートに2種類の酸素センサーを搭載した観測を行っている。その観測結果ではセンサー間のデータの差は見られていない。
- 音響センサーをTAOブイに設置して比較観測を行ったことがある。海中で音の周波数を解析することにより、風速の計測や海面をたたく雨の音から雨量を計測し比較した。ブイの風速計との相関は±1m/秒程度の差に収まっている。雨量についても良好な比較結果となっている。
- ワシントン大学では、この音響センサーをアルゴフロートに装備し、ベンガル湾で深度700mを漂流させた計測結果では、絶対値との比較はできないが、風速、雨量の変化は良く観測されている。特に現在海洋上での雨量の情報は欠測しており、将来期待される観測手段である。
- フランスIFREMERで開発している小型フロートPNG、グライダーであるSlocumフロートの紹介があった。
- 日本でSlocumフロートが使用できなかった理由は、イリジウム衛星システムを使用しなければならない点であったが、今後はその制限が無くなったので使うことができる。
質疑・応答:
松山委員:大量のデータが送信できると言うことは海面にとどまる時間が短くでき、センサーの汚れが減ると言うことか。
四竃委員:その通り。更に海面にとどまっている時間が短くなれば漁船等に持って行かれる可能性も少なくなる。
【議題5:アルゴデータ解析の紹介】
細田氏(JAMSTEC):
- 「アルゴフロートで検出された中層の強い季節変動」について説明があった。
- 動きの少ないフロートを対象に1000dbでの水温変動特性を調べた結果、中・深層における1年より短い周期の成分の変動は殆ど存在しないというのが一般的な認識であったが、気候学的データで得られていた水温標準偏差と同等以上の大きさを持つ、波動的な季節変動シグナルが検出された。
- フロートデータを用いた水温分布図より、水温季節変動シグナルが西方へ伝播していることが認められた。
- この様な解析は深さ2000dbまで観測できるアルゴフロートのデータがあって初めてできるものである。
- 将来はもっと深い深度まで観測できるフロートが開発されれば、深層も含めた変動の鉛直構造がとらえられることが期待される。
質疑・応答:
花輪委員長:これは傾圧第1モードのロスビー波か?理論よりも伝播速度が速いが?
細田氏:衛星観測による伝播速度とはほぼ合っている。理論値よりも早いと言うことが論文でも紹介されている。
花輪委員長:中層の流速シアーがあるために、シアーの無い海に比べて速くなるという論文もある。
松山委員:水温変動の相関による鉛直構造から言うと第1モードではないのではないか?
細田氏:波動による変動のほかに表面からの熱による変動も含まれたりするため、必ずしもきれいな形では表れない。
花輪委員長:おもしろい結果が得られたと思う。今後も解析を進めてほしい。
【総合討論】
花輪委員長:質問が3つある。
- 来年2月にベネチアで開かれる第2回アルゴ科学ワークショップへの日本からの参加状況はどうか?
四竃委員:気象庁、気象研、JAMSTEC等から合計10名程度と思う。
- 国際アルゴへの参加は、転勤等により人が変わることはあっても、引き続き同じ体制で対応するのか?
四竃委員:AST(Argo Steering Team)へは以前竹内さんが出席していたが、今は四竃が引き継いでいる。
吉田氏:データ管理チームのNational contact person は吉田である。
花輪委員長:他に委員会はないか?幹事会というのは?
四竃委員:幹事会は何らかの理由でASTが開けない時に、各Oceanの代表が集まる形で開催されている。今年は1月にインドでASTを開く予定であったが開けなくなったので、2月にパース(豪)で幹事会を開催した。
- アルゴ計画の透明性という観点から、今まで内閣府の下でJAMSTECや気象庁でウエッブサイトが運営されていたが、仕組みの変更に応じてリフォームは必要であろうが今後も同様に行ってほしい。
四竃委員:私も同感である。現在のウエッブサイトも内閣府のミレニアムプロジェクトのサイトとリンクしているだけで、旧推進委員会の議事概要等はJAMSTECのサイトに載っていた。ミレニアムプロジェクトが終了したので多少の模様替えは必要かもしれないが、旧推進委員会と同様に本推進委員会でオーソライズしていただき、運営していきたい。
菊池委員:ウエッブサイトでは過去のいきさつを残す形にしてほしい。
花輪委員長:ウエッブサイトの入り口部分については考える。
小田巻委員:新しいアルゴ計画は、既存の他の地球観測に関する仕組みの中でどう位置づけられているのか。今までは内閣府のお墨付きがあったので良かったが、今のままでは予算獲得の時に不利になってしまうおそれがある。
花輪委員長:道田委員が海洋学会のシンポジウムの中で、アルゴ計画は各種ある地球観測の取り組みの中でも最優等生であると位置付けられていると紹介された。
道田委員:国際的にアルゴ計画がトップランナーであることは確かである。IOCでも認識されている。国内的に政府レベルのビジビリティーをいかに確保するかという観点から見ると少し工夫がいるということだと思う。
小田巻委員:昨年までは予算要求の時に内閣府のミレニアムプロジェクトという看板があり、説明しやすかった。これからは各省庁が各自自助努力せよということであり、今後とも予算要求していくが、なかなか認められにくい。地球温暖化イニシアチブ等の中でオーソライズしてもらうとやりやすくなる。
和田委員:地球観測イニシアティブの中に入っていないのか? 第3期の総合科学技術計画を今検討しているがアルゴ計画は入っていないのか?
菊池委員:アルゴ計画としては入っていない。
和田委員:海洋については地球ドリリングがフォーカスされてしまい、アルゴ計画のような従来型の観測に対して弱い。
菊池委員:現在内局で予算要求しているデータ統合センターの中に名前は挙がっているが、アルゴ計画のデータの重要性に言及する形になっていない。ジオスにおり込むとか、何らかの方策を来年度にかけてやる必要がある。例えばフロンティア部門でやる等考えられる。
花輪委員長:何かの大枠の中でアルゴ計画が位置づけられている等、この件に関し何か情報を持っていないか? 平先生のまとめたレポートの中に入っていないか?CLIVARはやらなければいけないと書いてあったが、アルゴについては入っていなかった。
菊池委員:内閣府のフロンティア部門担当の宇宙や海洋のところに、来年度何らかの仕掛けが必要かもしれない。今の時期では再来年度になってしまうかもしれないが。
花輪委員長:この問題も大事な問題である。
花輪委員長:次回の予定はどうなっているか。
四竃委員:次回は気象庁担当である。
木村委員:来年の春、4〜5月に開催を予定している。
花輪委員長:本委員会のメンバーのメーリングリストを作成し、簡単に情報を交換できるようにしてほしい。委員の他に関連する人を含んだものにしたい。
四竃委員:了解した。議事録をお送りするときに用意する。
道田委員:情報としてOOPCが来年5月16日〜20日に東京で開催されることをお知らせする。日本のアルゴとして多数発表してほしい。
水野委員:湊から先ほどお話ししたように、アルゴフロートを投入した時にCTD観測をしていただき、早急にそのデータを送っていただきたい。またそのデータは太平洋アルゴリージョナルセンターから公開することが前提である。これはQCのトレーサビリティ確保のためである。
花輪委員長:本件に関し、本日出席の各省庁は持ち帰って検討し、後日回答すること。これにて第1回アルゴ計画推進委員会を終了する。