第4回アルゴ計画推進委員会議事概要
日時:平成19年6月6日(水) 14:00〜16:40
場所:東京管区気象台第一会議室
出席者:
花輪公雄委員長、松山優治委員、久保田雅久委員、
近藤秀樹委員(代理出席:山本治氏)、魚住雄二委員、
馬場崎靖委員(代理出席:上野大輔氏)、北村佳照委員、
奥野勝委員(代理出席:高芝利博氏)、菊池聡委員、
水野恵介委員(代理出席:四竈信行氏)、須賀利雄委員(代理出席:細田滋毅氏)
*開会の挨拶(気象庁 北村委員)
*新委員の紹介(魚住委員)の後、各委員及びオブザーバーの自己紹介を行った。
*配布資料確認
- 第4回アルゴ計画推進委員会議事次第(気象庁)
- 第3回アルゴ計画推進委員会議事概要(案)
- 委員名簿(気象庁)
- アルゴフロートの分布(海洋研究開発機構)
- アルゴ計画に関連する海象観測について(海上保安庁)
【前回議事録の確認】
委員長:会議前に事務局から意見照会を行った前回議事概要について、修正意見等があれば、今週中に事務局までお知らせ願いたい。
【議題1:国内アルゴ計画の進捗状況(観測関連)】
1.アルゴフロートの展開状況
(海洋研究開発機構 四竈氏が説明)
説明の要点:
- 本年4月末で、全世界で2852台のアルゴフロートが稼働中であり、8月末には3000台に達する見込みである。(アメリカ:54%、全ヨーロッパ:17%、日本:14%。国別では日本はアメリカについで2位)
- ドイツが海氷を検知するセンサーを付けたフロートをウェッデル海に投入。音源を設置し、中層での漂流の軌跡も求められるものである。
- 昨年度海洋研究開発機構は、関係機関の協力により、18航海で計76台を投入。この他にMISMOで投入した10台があるが、通常のアルゴの観測仕様ではない。
- ダンボールからの投入も定着し、現在は全体の6〜7割で使用している。
- 海洋研究開発機構で投入した稼働中のフロート数は、最近頭打ちになってきている。
- 世界的には、寿命を延ばすためにバッテリを従来のアルカリ電池からリチウム電池に変える動きがある。APEXフロートだと、4年程度の寿命だったのが8年弱まで延びると試算されている。
- 海洋研究開発機構ではSea-Bird社製 CTDセンサーの較正を行ってきた。Sea-Bird社と同レベルで較正を行えるのは海洋研究開発機構のみ。228個のCTDセンサーを較正した結果90%は良好、6%は時間不足で良否を判断できず、4%のセンサーが不良と判断されメーカーに返送された。
- 海洋研究開発機構では、Sea-Bird社のCTDセンサーのTBTO(生物付着防止シリンダー)を外したフィールドテストを行っているが、1.5〜2年の間では気候値からのずれは見られない。今後も、投入フロートの寿命が尽きるまで継続して監視する。
- 海洋研究開発機構では、ギアポンプ、ボールバルブ、高粘性オイルを併用したフロートを開発中で、3000dbar付近でも動作することを実験室で確認、浅海でのテストも行った。
- 海洋研究開発機構のフロート1台がマウイ島に漂着し、アメリカ沿岸警備隊が保管してくれた。同機構から技術者を送り、バッテリを外すなどの安全策を取った上で日本に返送した。
- フィリピンにも、各国のフロートが多数漂着しているが、これらは回収できていない。
- アルゴフロートが、海洋研究・モニタリングの基盤として認知されてきており、持続的なシステムに持っていくことが重要である。アメリカは、昨年7月から新しい5年計画がスタートした(NOAA、大学の共同で実施)。EUは、年間250台の投入を分担することを目標としたプロジェクトを提案している。
質疑・応答:
花輪委員長:H19年度の投入計画に関して、投入位置に関するポリシーはあるか
四竈氏:現在のフロート分布がまだ北半球に偏っているので、南半球に多く投入したいが、南太平洋を通る船がなかなか無い。水産庁が行く予定があるので、協力を依頼した。今後も、南へ行く船を捜して、協力を呼びかけていく。
久保田委員:北半球でも、海域によって少ないところがあるが(カリブ海、ベーリング海等)。
四竈氏:ベーリング海は、以前NOAAが投入したものが停止して現在は少ない。今年、『みらい』の航海で、カナダのフロートを5台投入予定。海洋研究開発機構としては、ロシアとのEEZ問題を避けたいので投入予定は無い。オホーツク海も同様。日本海は、韓国に任せている。南シナ海も、各国のEEZが関係しており容易ではない。カリブ海は、投入してもすぐに流れていくのかもしれない。北極海は、昨年春に海洋研究開発機構がPOPSフロートを投入した後、フランスが同様のフロートを3台投入したが、フランスのデータはGTSに流れていない。
久保田委員:EEZの問題に関して、解決方法はあるか。
四竈氏:難しい。特にロシアは許可申請をしてもいつも出航直前まで分からず、結局不可というパターンが多い。
久保田委員:ロシアは、アルゴには参加していないのか。
四竈氏:研究者レベルでは参加している。EEZ問題は、ロシアの関係8省庁全部の合意が必要なので難しい。
松山委員:2005年の投入数が最も多かった理由は。
四竈氏:予算、フロートの値段(入札)が関係している。現在は2005年より1台につき50万円ほど値上がりしている。
松山委員:日本のフロート約400台を維持するには、年間100〜110台の入れ替えが必要だが。
四竈氏:それを目標にしたい。気象庁15台、水産庁その他も入れて20台ほど投入するとすれば、海洋研究開発機構としては90台程度投入すれば維持できるのではないか、と考えている。
2.「海洋の健康診断表」のための中層フロートによる観測
(気象庁 林氏が説明)
説明の要点:
中層フロートによる観測:
- H17年度から現在までの2ヵ年で、計29台を投入。うち、21台が現在稼働中。停止した8台のうち6台がPROVOR。さらにそのうち3台は着底により停止。
これまでに1641プロファイルを得、フロートの観測達成率は79%である。
- 今年度も、日本近海に15台を投入予定。
- H17年度投入分はPROVOR、H18年度以降はAPEXである。
- H18年度納入のフロートでエアブラッダの不具合:3台が投入延期となり、うち2台は今年5月に投入済み。残りの1台は8月に投入予定。
Argoデータの現業的な利用(海洋学会アルゴシンポより抜粋):
- 気象庁では、Argo、CTD、XBT、ブイ、VOSからのデータ等を品質管理、解析し、さまざまなSSTデータセットを作成している。
- 今年度末に、海洋データ同化システムがMOVE/MRI.COMに更新予定。このモデルについて、2002〜2005年のデータを使用してインパクト実験。Argoのデータのあるなしで比較(前者:ALL、後者:NOARGO)。
- 三陸沖:成層構造に塩分の寄与が大きく、ALLの方が良い再現性を持っている。
- 黒潮域:流軸の決定にはまず高度計の寄与が大きい。さらにフロートは投入してもすぐに流されてしまい、ALLとNOARGOでそれほど差は無い。予報については今後さらに検証が必要。
3.海洋短波レーダーによる海流観測及び平成19年度海象観測実施計画
(海上保安庁 高芝氏が説明)
説明の要点:
- 短波レーダーは、1時間の平均値。ADCPとの比較では、傾向自体はあっている(正確な相関は計算していないが)。日々の海洋速報の資料として活用。
- 今年度も1月に相模湾で短波レーダー検証観測を行い、精度を高めていきたい。
- 2008年冬季のWESTPAC航海は赤道までの観測を予定していたが、大陸棚調査のため(ここ数年と同様)15°Nまでの観測となった。投入予定だった海洋研究開発機構の3台のフロートについては投入位置を再検討。
- 2007年冬季のWESTPAC航海では、20°Nでフロート投入し、XCTDと比較した。
質疑・応答
久保田委員:短波レーダーでの流れは、三浦半島の南あたりで発散していて、黒潮がどこから来たのか分からない。アンテナパターンの検討が必要では。
高芝氏:電波合成の関係で、端のほうは正しく計算されていない。
四竈氏:基線上では、直角方向の流れは0として計算されるからではないのか。
高芝氏:昔はデータがなかったが、最近は計算で埋めるようにしている。
松山委員:レーダーの方は瞬間値なので、潮汐の影響も入っているのではないか。
高芝氏:前後30分の平均であるが、潮汐の影響は入っている。
松山委員:もしレーダーがもう1局あれば、もっと積極的に使えるデータになるのでは。評価委員会の最初からそういっているのだが、せっかくあるのに勿体無い。説明しようとしても2局では再現性に限界があるのでは。
高芝氏:伊豆半島か御前崎辺りにもう1局あればよいと思う。どうしても2局だと基線延長上の問題等もあるので、多ければ多いほど良い。
松山委員:設置する計画はあるか。
高芝氏:設置するための予算措置が厳しい。また、津軽海峡や大隅海峡でも計画はしているが、同様に予算的措置が厳しい。
4.水産庁及び水産総合研究センターによるアルゴ計画関連観測について
(水産庁 板倉氏が説明)
説明の要点:
- オホーツク海水・東カムチャツカ海流水の南下・混合過程。
- オホーツク海水:低渦位、東カムチャツカ海流水:高渦位。
- 2001〜2005年に親潮域に投入されたフロートのうち、7台が低渦位域、5台が高渦位域に投入されており、前者では7台中5台が風成循環境界を越えて南下(後者は2台/5台)。→低渦位水は南下しやすい。
- Tatebe & Yasudaの数値モデルにおいても、低渦位水が混合域に流れ込みやすいことが示されている。
- 混合過程は渦位を用いにくく、溶存酸素を用いるのが適切。→DOセンサーつきフロートを4台購入。H20年に親潮域に投入予定。
- 関連情報:東北水研では海洋観測グライダーを購入。
質疑・応答:
細田氏:関連情報の、海洋観測グライダーの計画とは。
中田氏:生物大発生の解明プロジェクトのために、混合水域における変動を見るために購入した。日本では初めてなので、まずはどのように使えるかから進める予定。
【議題2:国内アルゴ計画の進捗状況(データ処理関連)】
1.リアルタイムデータベース
(気象庁 吉田氏が説明)
説明の要点:
- データフローの説明。
- データ管理システムのポイント。
- 3月に比べて、稼働中のフロートは減少している。今後も、この水準で推移するのではないか。
- 即時処理における塩分補正を先月より変更した。
- 過去の遅延データから分かっているバイアスで、予め補正する。
- 稼働中のフロート102個のうち86個は、補正値=0。
- 停止したフロートでも、補正値=0が大半。
質疑・応答:
花輪委員長:遅延QCの結果で補正しようという動きは、世界的にも行われているのか。
吉田氏:世界的にもやろう、という話になり、カナダが進んでいる。
2.高品質データベース
(海洋研究開発機構 中村氏が説明)
説明の要点:
- 海洋研究開発機構のフロートは気象庁とは別に自前でデコードした上で、遅延QCを行なっている。
- 各国のデータにおける、遅延QCデータの割合:
アメリカ:40%、日本:30%、カナダ:80%。
- 新しいQCツール(OW法):各国でテスト中。全世界共通ツールにする計画。現行ツール(WJO法)で時々見られる過剰な補正は改善しているようだ。
- このツールに対応したフォーマットのリファレンスデータセットを作成する予定。
- 塩分の他に海面気圧のオフセットエラー、躍層でのセル熱慣性エラーを補正することが昨秋のADMTで決まり、日本でも実施を始めた。
- 気象庁の稼働中のフロートにも同じ処理を行っている。
- その他の機関のものについては、気象庁が処理したGDACのリアルタイムデータから遅延QCを行う予定。(準備中)
- 酸素については、QCはまだこれから。海洋研究開発機構のWebで値を参照できるように改修しているところである。
質疑・応答:
花輪委員長:WJOとOWは、同じ人が開発したものか。
中村氏:W(Wong)とO(Owens)はどちらも同じ人である
松山委員:DOの補正の現状は。
中村氏:QCの方法が確立されていないので、現在は単位変換ぐらいしか行っていない。
松山委員:QCツールで、安定しているか否かは、気候値からの比較か。
中村氏:その通りである。気候値に基づいて、補正量を決定している。
【議題3:アルゴ計画の現状】
1.8th Argo Steering Team Meeting
(海洋研究開発機構 四竈氏が説明)
説明の要点:
- ウッズホール海洋研究所が製作しているSOLOフロート(FSIセンサー付き)の圧力に負のオフセットが見つかる。→水温が低めに出てしまう。→当面はこのフロートのデータを使用しないでほしい。補正については検討中。
- Argo-Oxygen Program:パイロットスタディとして、テスト海域に2種類の酸素センサーをつけたフロートを多数投入し、船舶による観測との比較で精度、長期ドリフトを確認する。
- アルゴのフェイズ:
現在は、持続的アルゴへの取り組みを始めるフェイズである。現在の観測網を5年間維持し、技術的・予算的な問題を解決すれば、持続的アルゴのフェイズに入ったと言える。
- 最新技術の紹介(表層専用T/Sセンサー、フロートの浮力を増す機能、センサーの追加)。
- アウトリーチの紹介(イギリスのThe Scholar Ship)。
- 今後のアルゴ関連会議の開催予定。
2.日本海洋学会:第3回アルゴシンポジウム報告
(海洋研究開発機構 四竈氏が説明)
説明の要点:
- 次第の説明。
- 当シンポジウムのまとめは、月刊「海洋」に印刷発表される。
【総合討論】
海洋基本法成立に基づき今後作成される、海洋基本計画について情報交換を行った。
【閉会】
花輪委員長:第4回アルゴ計画委員会を、これにて閉会する。
事務局:次回は、海洋研究開発機構の事務局で、秋頃に開催。日程等の調整方、宜しくお願いする。