第9回アルゴ計画推進委員会議事概要
日時:平成21年12月2日(水) 14:00〜17:10
場所:海洋研究開発機構東京事務所セミナー室AB
出席者:
花輪公雄委員長,久保田雅久委員,道田豊委員,安田一郎委員,
柳淳委員(代理出席:松本勝弘氏),堀内義規委員(代理出席:岩村公太氏),
平井光行委員,天谷直昭委員(代理出席:服部宏之氏),北村佳照委員(代理出席:岩尾尊徳氏),
佐藤敏委員,大嶋真司委員,河野健委員,須賀利雄委員
*開会の挨拶(海洋研究開発機構 須賀委員)
*各委員およびオブザーバーの自己紹介を行った.
*配布資料確認
- 第9回アルゴ計画推進委員会 議事次第(海洋研究開発機構)
- 第8回アルゴ計画推進委員会 議事録(案)(気象庁)
- 第9回アルゴ計画推進委員会 出席者名簿(海洋研究開発機構)
- アルゴ計画推進委員会 名簿(海洋研究開発機構)
- 気象庁によるアルゴ計画関連観測について 他説明資料 計3資料(気象庁)
- アルゴフロートの展開状況 他説明資料 計6資料(海洋研究開発機構)
【前回議事録の確認】
花輪委員長:前回の議事録はメールなどで推進委員の了承は得られているが,更なる修正点があれば,
会議終了までに発言頂きたい.
【議題1:国内アルゴ計画の進捗状況(観測関連)】
1.アルゴフロートの展開状況
(海洋研究開発機構 細田氏が説明)
説明の要点:
フロートの展開状況について
- 2009年9月30日現在3,264台のフロートが全球で稼働中.
- 25ヵ国でフロートが展開されている.
- Druck社製圧力センサーのmicroleak問題で投入を見合わせていたため,今年春に比べ全球で稼働中のフロート台数は
若干減少している.
- JAMSTECでも同様にmicroleak問題のため投入を見合わせていたため,今年度は6航海で15台の投入に留まっている.
- 今年度の今後の投入計画は関係省庁・研究所・大学・水産高校等の協力により合計16航海で52台のフロートの投入を予定している.
- microleak問題のため今年度展開するフロート台数は例年よりも少ないが,来年度はこの巻き返しを図るべく,
できるだけ多くの船舶に投入をお願いする予定.特に,南太平洋・インド洋を航海する船舶を調査中である.
圧力センサーのmicroleak問題について
- すでに納品済みのフロートについて,8月にセンサーメーカーSea Bird社からすべてのフロートを返送してほしい旨連絡があった.microleak問題はほぼ解決し,
順次センサーの交換が行われている.海洋研究開発機構にもまもなく全て納品される予定.
- 今年度新規購入分はまだ混乱が続いている.徐々に納品の目途が立ちつつある.
- 今年度追加購入分(13台+酸素センサー付フロート3台)は先月入札が行われ,来年3月末には納品される予定.
富山湾に流入したフロートの回収について
- Sea Bird社製およびAanderaa社製酸素センサー付フロート2台を2009年1月末に気象庁清風丸で投入して頂いた.
- 変化の少ない日本海固有水を観測し,両センサーのキャリブレーションを行う目的で投入.
- そのうちの1本が今年4月に能登半島に近づき,6月末頃に富山湾に流入.
- 8月6日から通信が途絶したが,8月31日に復活.バッテリー電圧が十分あり漁業被害も心配されたため,9月のアルゴ合同会議で回収する方向で検討した.
- 水産庁増殖推進部でアルゴ計画推進委員でもある平井参事官にご相談したところ,富山湾農林水産総合技術センター水産研究所副所長佐藤氏と
石川県水産総合センター海洋資源部柴田氏をご紹介頂いた.
- 10月5日に柴田氏より,翌6日に船が8時半に出港し,浮上予定海域付近を通過するので,浮上・通信時の位置を知らせてほしいとの連絡があった.
- 6日早朝よりARGOS通信毎の時間と位置を受信し,逐次柴田さんに連絡.
- 6日昼頃,無事回収.フロートは船が帰港後石川水産総合センターで保管して頂いた.
- 波は1m程度であったが天候があまり良くなかったこと,センサー部が黒色であったために見つけにくかったとの報告があった.
- フロートは現在海洋研究開発機構むつ研究所で保管中.フロートに搭載されている酸素センサー2台はキャリブレーションを依頼する予定.
このフロートの圧力センサーはDruck社製であるため,圧力センサーの交換の必要があるかどうかを確認する予定.
質疑・応答:
花輪委員長:最後の話題の富山湾に流入したフロートは,10月まで観測しているのか?
細田氏:10月まで観測できている.富山湾に近づいてからは水深が浅いため,2000mまでのプロファイルデータはほとんどない.また,8月に通信途絶がある.
これは着底してブラッターに砂が入ったためと考えられる.欠点はあるものの,観測期間中はほぼデータが取れている.
花輪委員長:富山湾はかなり深いので,直前まで日本海固有水を観測していると考えていいか?
細田氏:詳しく解析しないと詳しいことはわからないが,比較的沿岸に近いところで日本海固有水のような非常に低温の水を捕えているという印象がある.
安田委員:10カ月くらい漂流していて回収され,貴重なフロートだと思う.酸素センサーに関して付着物等やそれによるセンサーの変化等があったら報告してほしい.
細田氏:了解した.
花輪委員長:microleak問題でのセンサーの取替について,センサーがメーカーから送られてきて,こちらでセンサーを交換するのか?
細田氏:すでに納品されていたフロートは,センサーメーカーと代理店でセンサーヘッドだけのやり取りである.海洋研究開発機構では自前で組み立てできるので,
センサーメーカーからセンサーヘッドが納品されて,フロートを再度組み立てている.
花輪委員長:海洋研究開発機構は組み立てができるからいいが,大学等の個人ユーザはできない.この場合はフロートの取り扱いはどうなるのか?
細田氏:代理店が返送手続き等を行っているようである.気象庁の場合はフロート本体を代理店に送り,代理店でフロートを分解し,センサーだけをメーカーに返送した
と聞いている.
2.気象庁によるアルゴ計画関連観測について
(気象庁 林氏が説明)
説明の要点:
フロート運用状況
- 4年前からフロート運用開始.5日周期で2年運用としている.平成17年,18年に投入したフロートは通信途絶しており,現在稼働中のフロートは平成19年,20年に投入したフロートで
合計25台である.この中には位置のみデータを配信しているフロートが含まれており,それはグレーリストに載せている.全体としては予想通りのデータ取得数である.
- Druck社製圧力センサーmicroleak問題のため,今年度購入したフロートはまだ投入に至っていない.
- 平成20年度の購入分4台は,センサーメーカーから不具合が発表された後,契約業者にフロートを返送し,その業者が分解しセンサーヘッドのみをメーカーに返送.メーカーから
納品されたセンサーヘッドを業者が組立て,10月に納品された.そして,11月に投入.
- 今年度購入分14台は11月に契約業者へ到着し,近日中に納品予定.来年1月航海で投入予定.
- 現在,正常稼働中23台,グレーリスト掲載2台,最近1年間で19台が停止した.
- グレーリストに掲載したフロートのうち,1台はmicroleak現象が発生したと思われる.
- もう一台は,不審な移動をしている.2009年1月20日に日本南方沖で投入したが,10月3日から約1カ月間,尋常ではない速さで石垣島まで移動.この間,位置情報のみを送信してきた.
何者かによって捕捉されたものと考えられる.11月2日よりプロファイルデータを再度送信するようになる.現在,与那国島と台湾の間を北上中.東シナ海に入り,順調にデータを送信する
ようになれば,グレーリストから外す予定.
フロート投入計画
- 今年度購入分のフロートのうち,10台は来年冬の航海で,4台は来年夏以降の航海で投入予定.
- 次年度は例年購入してきた15台に加え,新規12台を概算要求に追加.日本近海の観測を充実させていきたい.
AICからのフロート投入情報共有
- フロートが投入された場合,投入者がAICへ投入報告を行っている.この通知は各国のフォーカルポイントに自動的にメールで送られる.
- 気象庁ではこのメールをアルゴリアルタイムデータベース上にアップデートするようなシステムを作成した.
- ご意見等あれば気象庁まで連絡をお願いしたい.ご意見等反映後,アルゴリアルタイムデータベースのホームからリンクを貼る予定(平成22年1月リンク済み).
質疑・応答
花輪委員長:来年度購入予定だが,例年要求している15台に加え,さらに12台を要求しているということか?
林氏:地方観測船3隻の廃船に伴い,この観測船が行っていた観測の一部をフロートで補充するという考えである.
岩尾氏:廃船は大変残念だが,このような状況になってしまった.
大嶋委員:海洋研究開発機構の発表にあった投入計画の世界地図には気象庁の投入計画が含まれているのか?
林氏:含まれていない.
大嶋委員:投入場所は気象庁と海洋研究開発機構で調整しているのか?
細田氏:毎月開催しているアルゴ合同会議等で情報交換し,投入場所を調整している.
大嶋委員:一枚の図になっていると一目瞭然だが,それはないのか?
細田氏:海洋研究開発機構で示した世界地図には別の印(星形)で気象庁の投入計画を載せている.
林氏:気象庁は日本近海の予報に役立てるという目的なので,日本近海に展開する.海洋研究開発機構はアルゴプロジェクトに貢献するために遠洋に展開する.
久保田委員:来年度の追加要求は来年度以降も継続する予定か?
林氏:毎年12台を追加要求する予定である.
久保田委員:来年度以降,気象庁は合計で27台要望するということでいいか?
林氏:その通りである.
花輪委員長:アルゴフロート27台購入は概算要求では1項目で出すのか?
林氏:予算項目は従来のものと新規のものと違うので,2項目で出す.
久保田委員:追加要望分のフロートの投入海域はどこか?
林氏:廃船となる函館・長崎の観測領域を考えている.
3.水産庁及び水産総合研究センターによるアルゴ計画関連観測について
(水産庁中央水産研究所海洋データ解析センター 渡邊氏が説明)
説明の要点:
平成21年のアルゴフロート稼働状況
- 水産総合研究センターおよび科研費で運用しているフロートは9台.北海道区水産研究所では5台の等密度面追随型フロートを2005年7月に投入し,1台が通信途絶し,現在4台が稼働中.
東北区水産研究所は酸素センサー付等密度面追随型フロート4台を2008年3月に投入しすべて現在稼働中.
- これらのフロートデータを用いて,親潮域から混合水域への動物プランクトンの輸送の時間スケールを見積もった.
農林水産技術会議プロ研でのアルゴフロートの利用
- 農林水産技術会議プロジェクト研究「環境変動に伴う海洋生物大発生の予測・制御技術の開発」でクロロフィルセンサー付フロートAPEX4台およびNINJA3台を投入.このうちNINJA3台の
フロートデータの解析結果を紹介する.
- NINJA3台は2008年4月下旬から5月上旬に房総半島沖で投入.NINJAにはWETLAB社製蛍光度計センサー(生物付着防止用シャッター付)が搭載されている.
- フロートは漂流深度が40dbarで5日周期.観測深度は500dbar.
- もっとも南に流されたフロートのクロロフィルデータは異常なシグナルが入っている.
- 残り2台は黒潮続流南北に分かれ,それぞれの海域で混合層やクロロフィル量の変化を通年で観測できた.
- 混合層発達とクロロフィル分布が非常に合っている.
- 混合層が浅くなる4,5月にクロロフィル量が増加している様子が捉えられている.
- 50-70dbarにクロロフィル極大層が見られる.
- 2004年に投入したフロートは亜熱帯再循環内を観測していた.クロロフィル極大層は100dbarと深く,混合層とクロロフィルの関係は別のようだった.
- 今回の観測で,黒潮続流域の混合層の季節発達と植物プランクトンの変化の関係および昇温開始期の表層クロロフィル量の高濃度化・暖候期の亜表層極大を把握できた.
質疑・応答
花輪委員長:NINJAフロートの漂流深度はどのくらいか?
渡邊氏:40dbarである.
花輪委員長:NINJA3台ともに観測開始付近で500dbarまで観測していないようだが,その理由は何か?
渡邊氏:データがうまく入ってこなかったのではないか.
安田委員:フロートは投入前にあらかじめ浮力を調整する.投入域がフロント域だったため設定した浮力よりも軽かったり重かったりしてうまく観測できなかったようだ.なぜか時間が経つと500dbarまで観測できている.学習効果があるのかもしれない.密度が変わった可能性もある.
岩尾氏:観測の最後の部分も500dbarまで取れてないが,季節的なものがあるのか?
安田委員:そうかもしれない.原因は不明.
花輪委員長:2004年の観測ではクロロフィル極大層が100dbarだが,クロロフィル極大層が50dbarというのはどう理解すればいいのか?
渡邊氏:2004年の観測では100dbar強のところにクロロフィル極大層が見られている.ここは亜熱帯モード水の上部に当たる.栄養塩の分布が亜表層水塊構造を反映している.クロロフィル極大層はその栄養塩分布を反映したような構造になっている.今回は,栄養塩が多い層が浅くなっていると考えられる.
花輪委員長:今回の観測は亜熱帯モード水の分布域より北に位置し,亜熱帯モード水はないが,50dbarが栄養塩供給の一番上面に当たっていると考えればいいのか?
渡邊氏:植物プランクトンが増殖できる領域は栄養塩と光の関係で決まる.データがないのでわからないが,クロロフィル極大層に栄養塩が多く存在しているのではないか.
花輪委員長:暖候期に入るとき,海洋上層から暖められて浅くなったり風でかき混ぜられ深くなったりを繰り返しながら混合層が浅くなる.光が温めていると理解していいだろうか?混合層が浅くなる時にクロロフィル濃度が高いのは,本質的には光がいつネットとして入ってくるかによって(スベルドラップ関係というのか?)決まっているのか?
須賀委員:成層が形成され,植物プランクトンが有光層内に留まれるようになったことがおそらく効いていると考えられる.混合層が深いと,植物プランクトンが有光層よりも深いところまで強制的に運ばれてしまうので生産の効率が悪い.春先に成層が形成されてくると有光層内に植物プランクトンが留まれるようになり,増殖が進みクロロフィル濃度が高くなる.
花輪委員長:成層のほうから記述したほうが本質的ということか?
渡邊氏:その通りである.
花輪委員長:科研費は若手Sだと記憶しているが,3年前くらいに採択されたものか?いつまで観測ができるか?
渡邊氏:情報がないのでわからない.
花輪委員長:受信料の心配はしていないのか?
渡邊氏:そこまで聞いていないのでわからない.
【議題2:国内アルゴ計画の進捗状況(データ処理関連)】
1. 10th Argo Data Management Meetingの報告(気象庁・海洋研究開発機構)
リアルタイムQC
(気象庁 菅野氏が説明)
説明の要点:
10th Argo Data Management Team会議について
- Argo Data Management TeamはArgo運営チーム(AST)の下部実務機関的機能を持つ.各国のArgoデータ管理関係者が参加.2000年以降毎年秋に開催されている.
- 今回の第10回ADMTは9月30日から10月2日までフランス・トゥールーズで開催され,事務局はCLSとArgo情報センターであった.この会議は,Argo地域センター会合および遅延モード品質管理ワークショップも同時に開催.
- 参加者は10カ国29機関51名.日本からは気象庁とJAMSTECが参加.アメリカ以外は,各国の主要な海洋研究機関が出席.アメリカはNAVY関係機関,NOAA関係機関,NOAA以外の研究機関が出席.
10th Argo Data Management Team会議の内容報告
(1)Argo運営チームからのフィードバック
- Argo運営チームから,第10回ADMT直前に開かれたOceanObs'09の内容を反映して今後の道標が示された.今後,アルゴは大きく2つの道標に乗って進んでいく.
- 一つはコアArgoの維持・強化.具体的には,フロートの小型化や長寿命化などフロートの技術開発,フロート分布設計の達成と維持(南半球は未だに疎.全球モニタリングには3,200台の正常フロートが必要),そしてデータ品質管理が重要である.
- 気候変動解析に用いることが出来るようにデータ品質管理を行う必要がある.近年問題になっているシステマティックエラー問題の解決(ほとんど解決しつつある)が必要.また,プロファイルデータ・メタデータ・技術情報データ等のデータの完備が必要.これによりデータの問題の早期発見につながる.
- もう一つの道標は拡張Argo.これは,アルゴの拡張形で多目的な応用観測を行う.具体的には,極域・内海・深海など観測海域の拡大や大容量通信を導入し高分解能なデータの取得,そして,新要素センサーを搭載し化学生物等のデータの取得である.ただし,これらはArgoの価値を高めるが,新しいリソースによって実施されるべきであり,コアArgoの負担となってはならない.
- グライダーは現段階ではArgoデータに含める明確な要求は無いが,将来的にはその一部をArgoに取り込んでいくことになると考えられる.
(2)システマティックエラーの進捗状況
- 前回会合のAction Itemでは今年3月までに対応終了予定となっていたが,各国の対応は若干遅れている.
- 日本はリアルタイム,遅延モードとも,これまで取得したデータの修正および今後取得されるデータへのシステム修正とも,すべて終了している.
- データ利用上の混乱を避けるため,システマティックエラーへの各国の対応状況をWebサイトで公表することとなった.
(3)その他の話題
- 軌跡データファイルの再作成に関連して,フランスが各国のデコード前のデータを集めて軌跡情報の再作成を試みることに決定した.日本のデータも再作成される.今後,デコード前データの提供を各PIと相談させて頂きたいので,ご協力をお願いしたい.
- ArgoのNetCDFは現在Climate and Forecast (CF) Metadata Convention標準フォーマットではないが,それに準拠しようという動きがある.準拠に対応するためには,フォーマットの大幅な変更および構成の考え方の見直し等,大幅な変更が必要であり,直ちには対応できない.慎重に調査を進めて対応することになった.IODEおよびJCOMMでもフォーマットの標準化が進められているので,そちらの動向とあわせて対応していくことになると考えられる.
- 今年のIOC総会で海水の状態方程式が更新された.2010年1月から新状態方程式を用いることになったが,Argoデータは現段階では従来どおりとなった.
遅延品質管理
(海洋研究開発機構 佐藤氏が説明)
説明の要点:
遅延データ処理実施状況の報告
- 今年4月ではGDACへの遅延モードデータ登録率が52%であったが,11月現在65%まで上昇した.
- 2009年11月27日現在,日本の遅延データ数は世界の遅延データ数の16%を占める.
microleak問題への国際的な対応について
- microleakとは,Druck社製圧力センサーに見られる不具合で,圧力センサーチェンバー内部から小さな裂け目を通じてオイルが漏れる現象のこと.オイルが漏れると,チタン膜がセンサーチェンバー側にそり,その結果,圧力データに大きな負のオフセットが現れる.
- microleak問題発生は,海面圧力値を監視すれば検出可能であるが,実際にはそれでは検出できない.なぜなら,基板番号APF8は負の海面圧力値を0としてデータを送信するためである.JAMSTECフロートの多くがAPF8でDruck社製圧力センサーを搭載しており,microleak問題を検出できない.
- 第10回ADMTではAPF8におけるmicroleak問題の検出方法が議論された.フランスで開発されたAltimetry QCが有効だと考えられてきた.Altimetry QCは衛星海面水位偏差とArgoデータ水温・塩分データから算出される力学的高度偏差の時系列を比較しArgoのシステマティックエラーを検出する方法である.この方法には問題点があり,30度より極側では20dbar以上のオフセットが無ければ5cmの差も得られないことが会議で報告され,この方法があまり有効ではないことがわかった.
- そこで会議では,APF5・APF7・APF8では,海面圧力値が観測回数の80%以上連続して0値を取っているフロートはmicroleak問題の発生が疑わしいフロートとするという定義が決まった.
- このようなフロートのデータは,水温・塩分データにエラーが見られない場合には遅延モードデータフラグを2(Probably good data)とし,一方,水温・塩分データにエラーが見られた場合,遅延モードフラグを3(bad data that are potentially correctable)か4(bad data)にすることに決定した.どちらの場合でもコメントの部分に「microleak問題発生が疑わしいフロート」であることを明記することになった.また,このようなフロートはグレーリストに載せることに決定した.
- 基板番号APF9は負の海面圧力値もそのまま送信するため,海面圧力値を監視すればmicrokleak問題発生が検出できる.microleak問題が発生した場合には圧力データから海面圧力値分を引いて補正する.ただし,海面圧力値が10dbar以上になった場合の補正方法は,メーカーに圧力値の特徴を問い合わせた後その回答を得てから決定することになった.
microleak問題の日本のフロートの現状
- 基板番号および圧力センサーメーカーをJAMSTECが把握しているフロートのみを集計した.APF8については,microleak問題発生が疑わしいフロートの検出において,定義に観測回数の80%とあるので,どの時点で判別するかが問題となる.今回は2年程度稼働しているものを対象とした.その結果,日本のフロートでmicroleak問題発生が疑わしいフロート台数の割合は,Argo運営チームで報告された30%を下回る.
- APF9でmicroleak問題発生は5%程度である.
- microleak問題発生のモニタリングには,基板番号・圧力センサーメーカー名が最低でも必要である.PIからご要望があればこれら2つの情報を頂ければモニターおよび判定する.
その他の話題
- フォーマットの大幅な変更によりユーザマニュアルが改訂される.
Argo地域センターの活動について
- データの一貫性チェックは各地域センターで実施され始めた.チェック結果はAICを通じてPIおよび遅延モード担当者に報告することが決定.JAMSTECでもそれに対応するように準備する.
- 教育・アウトリーチ活動や投入計画立案のためのツール公開を行っている地域センターもある.
質疑・応答:
花輪委員長:microleak問題についての対応で,フラグの付替えをいつまでに行う等時期の議論はあったか?
佐藤氏:無かった.
花輪委員長:microleak問題については,まず補正方法などを議論したということか?
佐藤氏:その通りである.
道田委員:NetCDFフォーマットについて,IOCやIODでArgoについてNetCDFフォーマットを合わせる話は出ていない.資料をチェックしたところ,ヨーロッパのSeaDataNetというメタデータセットシステムの議論のところで,NetCDF Climate and Forecastを使用するという議論がされている.その流れの議論であることが理解できる.影響が大きいので,私の出来る範囲で情報収集する.収集結果は後日報告する.
菅野氏:宜しくお願いしたい.
【議題3:国際アルゴ計画に関わる国内外の情勢】
1.拾得された韓国フロートについて
(海洋研究開発機構 細田氏が説明)
説明の要点:
拾得された韓国フロートの経緯
- 2009年10月9日に輪島付近で,漁船船員が岸から300-400mにある定置網付近で海面漂流しているフロートを発見し,拾得.輪島漁協が警察に連絡.それと共に,輪島漁協はJAMSTEC本部に連絡.JAMSTEC本部から戦略的海洋監視研究チームに連絡が来た.漁協からフロートのシリアル番号をFAXしてもらい調べたところ,韓国のフロートであることが判明.
- 文科省・外務省と協議し,今回の件に関しては早急に対応が必要であるため,JAMSTECがAICへ通告し,AICからフロートが拾得された旨と拾得時の情報をPIへ連絡.現在,PIから連絡を待っているところ.
- フロートの拾得者がAIC経由でPIへ通告することは,Argo運営チームで決定された正規の手続きである.
- フロートは現在七尾保安部で保管されている.発信しているかどうかは不明.
- 拾得されたフロートは2006年9月5日に日本海で投入され,2009年10月7日に拾得された.
- 拾得されたフロートはデータセンターがKMAでPIはYong-Hoon Younである.Parking depthとProfile depthは800dbarで,観測サイクルは7日.標準的なAPEXフロートである.
過去の拾得フロートの対処事例
- 他国のフロートが日本で拾得された事例
(1)2007年11月に奄美大島でUS Navyのフロートが拾得された.これについては第5回アルゴ計画推進委員会で報告済み.このときは,AICへの通報およびPIとの連絡はJAMSTECが担当.フロートの保管は海上保安庁が担当.PIから再投入の依頼があった.偶然,保安庁の船舶で観測があったので,保安庁の船舶で再投入して頂いた.
- JAMSTECフロートが拾得された事例
(1)2007年1月にハワイに漂着.AICからJAMSTECへ連絡があった.電源が入っていた.輸送するには電源を停止していなければならないので,JAMSTECから人を派遣し,作業と返送手続きを行った.
(2)2008年2月にフィリピンに漂着.拾得者から連絡があった.電源が入っていたため,(1)と同様に人を派遣し作業と返送手続きを行った.
(3)2009年6月に米国オレゴン州沿岸に漂着.AICからJAMSTECへ連絡があった.すでに電源が停止していたため,JAMSTECで返送手続きを行い,業者がフロート保管場所に引き取りに行った.
対処方法に関する検討課題について
- 国内での対処方法が決まっていない.
- 拾得直後は,連絡経路はどうするか?拾得者からの受け口やAICへの通報担当者等はどこが担当するのか?また,PIから連絡を待っている間の保管者と保管場所はどうするか?
- PIとの連絡がつき,PIが返送希望の場合は,どのように対処するか?JAMSTECのフロートが拾得された場合には拾得者にできるだけ負担がかからないよう,返送手配や費用はすべてJAMSTECが負担している.しかし,各国それぞれ考え方が違うので,「着払いで返送してほしい」「運送費がないのでそちらで何とかしてもらえないか」という場合も考えられる.この場合どうするのか?
- PIとの連絡がつき,PIが廃棄を希望する場合は,誰がどのように処分するのか?廃棄処分費用が必要な場合どこが負担するのか?
- PIとの連絡がつき,PIが再投入を希望する場合は,どうするか?
- PIとの連絡がつかない場合,保管期間はどうするか?保管期間が過ぎたときのフロートの処分はどうするか?
- 漁業活動に支障がない限り海洋上で観測中のフロートを拾わないように,漁業関係方面に対して通知していただけないだろうか?
質疑・応答:
花輪委員長:拾得された韓国フロートの写真を見ると,ラベルには日本語ないようだ.
細田氏:日本語はない.国際公用語6カ国語で記載されている.
花輪委員長:日本語はないが,拾得者がこれは科学的な観測で使用されていると判断して,警察に通報があったのか?なぜJAMSTECに問い合わせが来たのか?
佐藤氏:漁協から通報を受けた警察が,これが何であるかを調べて,Argoフロートであることがわかり,JAMSTECに連絡があったと聞いている.
花輪委員長:現実的にはここまでも来ない可能性がある.議論すべきことは二つ.一つは,「Argoフロートは科学観測で使用されているので,海洋上で見つけた場合に拾わないでほしい.網に引っ掛かってしまった場合には再投入してほしい」と漁業関係者に依頼をすること.これを広めるには,どこにどのようにお願いすればいいか.もう一つは,フロートが拾得され,すでに保管されている状態での対応ガイドラインをどうするか.今日は持ち帰ってもらい,一番良い現実的な方法を調べて頂きたい.
平井委員:漁協宛に連絡する場合,単に拾得しないでほしいというだけではなく,観測の目的も説明した上で,網に引っ掛かった場合フロートがどんな状況なら再投入するのか等一連の流れを構築して総括的に行われるべきだと考える.
花輪委員長:同意する.
佐藤委員:前回の奄美大島の場合は特別な例.海保庁の巡視船は基本的には沖合に出ないので,再投入は難しいと考える.最後のスライドに「投入時点では投入者の所有物という考え」とあるが,この考え方だと漁協に再投入をお願いする場合,再投入者に責任を負わせることになる.また,再投入したフロートが再度漂着する可能性もあり,事故につながる可能性もある.安易に,再投入をお願いするのは問題がある.
細田氏:必ずしも再投入を依頼されるわけではないし,フロートに関する責任はあくまでそのフロートの所有者にある.PIが再投入を希望していて再投入場所の議論になった場合,拾得者が投入できるのは日本のEEZ内か公海上しかないと考えた.誤認であれば訂正して頂きたい.
河野委員:海洋研究開発機構にはこの件について何の権限も責任もない.日本に他国のフロートが漂着あるいはそれに類することが起こった場合,どのように処理するのが今の法令の想定なのか?もはや所有権は放棄されたものと見なして漂着物と同じと考えて処理するのか?その場合,海上と海岸で拾得した場合には処理が異なるのか?また,漁網に絡んで破損した場合にどうなるのか?等,何か想定されていないのか?
佐藤委員:今回の場合は,意図的に流したフロートで所有者がはっきりしているので,所有者の対応が基本となる.
河野委員:海洋研究開発機構では他国に漂着してしまったフロートについては先方の善意で連絡して頂いていたので,できればPIにお返ししたいと思い,対応している.どうすれば適法なのかがわからずに,文科省と外務省と相談しながら進めてきた.ガイドラインを作成して頂きたい.
花輪委員長:海洋研究開発機構にとっては,なぜここに来たのかというところから始まる.
河野委員:我々の活動が広く受け入れられたと解釈し対応している.
花輪委員長:法的にどういうことをしなければならないのかがわからないと解決できないと考える.
平井委員:今のところ大きな漁業被害はないが,もし網の破損が発生した場合,所有者に賠償責任を問えるのかどうか等考えておく必要があるだろう.このような体制を整えておかないと漁協にお願いするにも難しい.
花輪委員長:どこが母体となってガイドラインを作るか?例えば,海上保安庁,水産庁,文部科学省,外務省およびJAMSTECで検討チームを作成してガイドラインを作成するということでいいのか?
久保田委員:拾得の定義は何か?観測中のものを取っても拾得というのか?定義をはっきりしておかないと,それに対して正しい対策を決めにくいと考える.以前にはドリフティング・ブイをたくさん展開した.そのときに同じような問題があったと思うが,このような議論にはならなかったのか?
道田委員:特に問題になった事例はおそらくないし,ガイドラインもない.提案のように漁業関係者に周知することはできるが,何人がフロートに遭遇するのかが疑問.対策を考えなくても対応できるのではないか.
岩尾氏:気象庁の漂流ブイは漂着が年に何回かある.ブイには日本語で拾得した場合には気象庁に連絡して欲しい旨が書かれている.要望があれば,気象庁が取りに行く.また,処分していただく場合もある.高層気象観測も同様に対応している.ただし,国外に流れることは考えていない.
岩村氏:このようなことはArgo運営チームやArgoコミュニティーでは議論がなかったのか?
須賀委員:漁業被害までは具体的に議論されていない.最後にゴミになることについては議論があったのかもしれない.日本国内ではArgoフロートは法律的にゴミではないことは認識されているが,漁業被害等にどう対処するかについて議論はなかったと思われる.
花輪委員長:今のところはリチウム電池が使われてないから安全なのか?爆発とかはないか?
細田氏:海洋研究開発機構で投入しているフロートのほとんどはアルカリ電池であるが,電池の種類によっての危険性の違いはそれほどない.フロートを解体しない限りそれ程問題はない.
岩村氏:拾わないで欲しいとコメントすることについて,漁業関係者がArgoフロートを見分けられるのか?
細田氏:ステッカーが貼られているのがアルゴフロートである.
花輪委員長:道田委員が言うように,ケース・バイ・ケースで対応できるのではないか?
細田氏:韓国が日本海にかなり集中的にフロートを展開している.
花輪委員長:今ここですぐにガイドライン作成期限を設ける等Action Planを決めるところまではいっていないのではないか?
細田氏:フロートはこれからも随時投入されていくので,検討する必要がある.
平井委員:水産庁にとっても大きな課題なので,Action Planを決める前に,どういう事例があるのか等水産庁内で調べ,次回ご報告させて頂きたい.日本海がいちばん問題だと考える.現在は日本語のステッカーが貼られていないので,韓国に日本語のラベルをつけてもらえないかと要求できないのか?
花輪委員長:追加のラベルになる.日本でラベルを作成して韓国に貼ってもらうことは可能か?
北沢氏:このラベルはIOCとWMOの合意の下で作成した国際的な標識である.国連公用語6カ国語で表記されている.日本のフロートを日本海で展開するのであれば,韓国語表記のラベルを追加で貼ることも意味がある.漂着した場合のガイドラインは,2000年以前から話題になっている.国際チームにはIOC部会を通じてガイドラインを作成したほうがいいと提案していたが,科学者中心のScience Steering Team(SST)ではそれほど重要視されなかった.しかし,現実はアメリカのフロートが32本漂着している.AICの機能の一つとして各国のアルゴフロートの情報を集約しておこうという動きもある.それもうまく使えばいいのではないか.
花輪委員長:水産庁からは調査してみるとの提案を頂いたが,可能であれば,海上保安庁・文科省・外務省・国土交通省でもこの問題について,各省庁の立場で問題となるところを次回くらいまでに報告して頂けないか?随時,海洋研究開発機構と相談しながら対応してもらえないか?
佐藤委員:今回のフロートはどうするか?韓国には再度連絡してもらえるか?
細田氏:PIを知っているので,イレギュラーだが直接連絡を取ることは可能.ただし,反応があるかどうかはわからない.
佐藤委員:いつまでも七尾保安部に放置することはできないので,PIに対し何らかの連絡をJAMSTECから行ってほしい.
2.アルゴ計画の枠組内における公海上でのフロート展開に関するIOC総会決議XX-6関係事項の最近の動向
(気象庁・海洋研究開発機構)
公海でのフロート投入に関するIOC決議について
(気象庁 林氏が説明)
説明の要点:
公海でのフロート投入に関する実施指針について
- 1999年IOC第20回総会では下記が決議された.
(1)アルゴ計画は国連海洋法に則ったものでなければならない.
(2)フロート漂流の際は,事前に適切な方法で当該沿岸国に情報提供しなければならない.
- 2008年IOC第41回執行理事会で実施指針が決議された.
(1)公海でのフロート投入の際は,フロート運用者はアルゴ情報センターを通じて加盟国フォーカルポイント(FP)に情報提供する.
(2)漂流が予想されるアルゴフロートについては,フロート運用者が通報を希望する加盟国FPに対して情報提供する.
(3)通報を受けた沿岸国はEEZ内データの配信中止を要請できる.
- 情報提供希望の加盟国はIOC事務局長にその意思を表明し,IOC事務局長からIOC加盟国に対して情報提供希望国として通知される.2009年11月現在,情報提供希望国はアルゼンチン,ペルー,トルコの3国.
- 今年開催された第25回IOC総会および第42回IOC執行理事会でフロート展開に対する実施指針が検討された.
(1)アルゼンチンはIOC事務局長が同実施指針を積極的に推進すべきと主張.
(2)ロシアは同国内の海洋活動については同国の事前同意が必要と主張.
(3)日本は同実施指針に基づき観測活動を実施している加盟国リストの公表を要望した.
(4)沿岸国EEZ内でのフロート投入に関しては,調査国と沿岸国で二国間で調整すべき.
Argoフロートの沿岸国の同意とりつけについて
(海洋研究開発機構 細田氏が説明)
説明の要点:
現状の同意とりつけ手続きについて
- 公海上で投入されたArgoフロートが,外国の内水,領海,群島水域,排他的経済水域または大陸棚に漂流することが予測される場合には,調査開始予定日の7カ月前までに外務省へ計画書を提出し,事前に沿岸国の同意を取り付けている.これは,Argoフロートが国連海洋法締結時(1982年)以降に開発・実用化され,同意とりつけ手続きが未定であったためであり,暫定的に観測船による調査と同様の手続きを行っている.
- 投入前の事前の漂流予測(シミュレーション)にも限界があり,実際にフロートが入域する沿岸国と予測が異なる事態も発生する.また,観測船のための手続きと同様であるため,沿岸国が混同することも起こっている.
投入フロート数・航海数・申請国数と漂流実績について
- 2004〜2007年に6本以上フロート投入を行い,EEZ許可申請を必要とした航海を抽出.
- 21航海で235本が投入された.このうち,漂流シミュレーション枠外を漂流したフロートが80本(投入総数の34%).このときEEZ許可申請国はのべ95カ国.許可申請国に流入しなかった国は39カ国(申請国数のうち41%).未申請国に流入したのは21カ国で,未申請国が発生した航海は11航海(航海総数の52%).
- 今回の集計はかなり限定した航海で集計しており,これまでの実績をすべて集計すると結果は異なる可能性はある.
- シミュレーションには限界がある.許可申請をしても流入しなかった国が41%に上っていることから,現状は余分な仕事を皆さんに要求してしまっている.
今後の沿岸国への手続き方法について
- 第41回IOC執行委員会で決議された手続きが国際的に認識されつつあることから,公海におけるフロート投入および沿岸国への漂流の可能性がある場合は,従来の沿岸国の同意とりつけ手続きに代わり同決議の則った手続きをとることを提案する.
質疑・応答:
花輪委員長:フロートが流入する可能性のある沿岸国で投入情報を提供するというのは,今までとどう違うのか?
細田氏:船舶の観測の場合はあらかじめ航海計画が決まっているので,7カ月前までにEEZ許可申請書を外務省に提出し,外交ルートで相手国に申請する.それに対して,各国にフォーカルポイントを設け,EEZ内に漂流する可能性のあるフロートがある場合には,EEZ内に漂流する前に実施者から相手国のフォーカルポイントに通告する.したがって,これまでと申請許可の経路が違う.外交ルートで行うと航海の7カ月前までに提出しなければならないので,航路変更等に対応することが難しく,また予測が外れることもある.新しい方法を利用すれば,ある程度目処が立った段階で必要に応じて申請できる.
花輪委員長:投入してからでもこれはできるのか?
細田氏:その通りである.
花輪委員長:実務としてはだいぶ簡潔になるだろう.
須賀委員:EEZ許可申請を事前にやっているのは日本だけである.また,フォーカルポイントへの通告も各PIが実施するのは非常に大変だというのが国際的な認識である.各PIが常に自分のフロートをモニターするのは困難である.漂流される側の国が同意すれば,AICがPIに代わってフロートをモニターし,フロートがどこかに漂流しそうであればAICから相手国へ通告するような自動化システムをAICで構築中.これができれば,このシステムを利用したい国は多いだろう.IOCの事務局長からこの自動化システムの稼働許可が出ていない.新事務局長のもとでのIOC事務局の体制が整うまでは,このシステムの稼働許可はおりないと見込まれる.
岩尾氏:ある国のEEZ内で投入し,それが別の国のEEZに漂流する場合もこれに含まれると考えていいのか?
細田氏:この実施指針を読むと,原則は公海上での投入について書かれているが,それははっきりしていないように思う.
花輪委員長:これはWMOでIDを出したフロートが対象と考えていいのか?
細田氏:その通りである.
花輪委員長:コアArgoと拡張Argoがあるが,WMOの考え方では拡張Argoを含めて基本性能があればIDを出すということか?この問題に対する対応はどうなるのか?
須賀委員:それは難しい問題だと考える.IOC決議のような手続きでやってもいいと考えられている前提は,海洋の水温・塩分の観測は気象観測と同じようなオペレーショナルなフロートであるということである.例えば,酸素やクロロフィル計測のような明らかな学術研究目的の観測であるとなると,その前提の範疇には入らないと思われる.現在のところ,クロロフィルセンサー等が付いているフロートでもWMO IDを申請すると断られることはない.IDが割り振られたものは,すべてArgo equivalentとして扱われている.Argo運営チームでは,多様なセンサーを付けたフロートがすべてArgoフロートと呼ばれることを非常に警戒している.上述の前提が崩れるとコアArgoの維持が危うくなると考えられるからである.Argo equivalentとしての生物化学センサー付きのフロートが今後増えて行った場合にArgo運営チームとしてどう対応するかについては明確な案は出ていない.
松本氏:アルゴはすでに締約国間で事前同意があるとの説明ができるのか,持ち帰って省内で検討したい.
3.OceanObs'09の報告
(海洋研究開発機構 須賀委員が説明)
説明の要点:
OceanObs'09のついて
- 1999年にOceanObs'99が開催され,国際的な合意のもとにArgoや衛星をはじめとする観測システム要素を組み合わせて,物理パラメータに関する全球海洋観測システムの構築が進められてきた.OceanObs'99から10年が経過して,Ocean Obs'09では,その観測網構築を評価し,さらに維持し発展させるために社会のニーズに答える観測網を構築することの国際的な合意形成を目的とする会合だった.
- OceanObs'09の前に,観測手段や研究分野など海洋観測のコミュニティごとにCommunityでWhite Paperが作成された.コミュニティ毎の今後10年の観測網構築に受けた提案書としてこのCommunity White Paperが99編も提出された.それにはArgo Community White Paperも含まれる.比較的小さなコミュニティや個人はAdditional Contributionを提出した.Community White PaperおよびAdditional Contributionに基づいてPrimary Paperが44作成され,これがOcean Obs'09での講演として発表された.Ocean Obs'09では,その他,関連機関長官クラスの方や国際機関のリーダーの方の立場から全球観測網に関する意見を述ベたり,いくつかの分科会に分かれてフォーラムを行ったりした.これらのアウトプットをconference statementおよびconference summaryにまとめる作業が現在進められている.Conference statementはすでに作成され,webサイトに掲載されている.
- 具体的な実施プランはワーキンググループで考えることになっている.来年の秋ごろまでかけてOcean Obs'09の内容を踏まえて具体的なプランを練った上で,研究コミュニティーや国連関係機関を主体として,あるいは各国の政府・産業界にも働きかけて,次世代の観測網の構築を開始する.
conference statementの内容について
- 全球海洋の情報を,物理パラメータだけでなく化学・生物パラメータを含めて供給し,社会のニーズに応えていく.
- 物理・化学・生物パラメータに関する統合された観測網の構築を目指す.
- 会議のスポンサーや支持団体の,全球観測に対するこれまでの貢献およびこれからの目標が記載されている.
- 全球観測を維持・発展させていく必要性の根拠が記載されている.
- 各国政府への要求
(1)2015年までにOcean Obs'99で計画した観測網を完成させてほしい.
(2)生物地球化学的または生物学的要素の観測を含んだ観測網を構築してほしい.
(3)各国政府にOcean Obs'09で作ってできたフレームワークを採用してほしい.
- ワーキンググループでこれから具体的な観測プランが作成される.日本からもワーキンググループに入る必要があると考える.
Ocean Obs'09のプログラム構成
- 全球観測網を用いた科学的成果と可能性,社会へのサービスや貢献,技術開発,今後の展望.
- 特徴的だったのは,社会へのサービスや貢献について1日議論するプログラムが組まれていたこと.この部分にかなり力を入れているのがわかる.これをやらないと全球観測網は維持できないという認識に基づいている.
Argoに関連する発表の報告
- 現在,Argo運営チームのco-chairはDean RoemmichとHaward Freelandであるが,Haward FreelandがArgo関係からの引退を表明したため,Susan Wijffelsが来年3月からco-chairになる予定.
- Susan Wijffelsは,Argoはまだ完成していないと発表.北緯60度から南緯60度までの外洋域を3度格子で観測するためには3200台のフロートが必要であるが,この範囲で正常稼働中のフロートは現在2800台でまだ足りない.
- ECMWFのMagdalena Balmasedaは,SSTの予報にArgo,衛星高度データ,係留系データがどれだけ予測エラーを小さくすることに貢献しているかについて発表した.どの観測も予測エラーを小さくするのは非常に貢献している.Argoは特に大きな貢献をしている.これは暫定的な統計であり,各観測の貢献度を正確に計算するためには観測を継続する必要がある.
- Dean Roemmichは発表の中で,最重要課題は観測網を維持することであると主張した.また,継続的なサポートをお願いしたいこと,今後,自動観測網は観測深度や観測海域を広げていくこと,多様なセンサーを付けて発展していくこと,Argoは他の観測網と協力・統合して価値が高まることが主張された.
Argoに関連する論点
- コアArgo
(1)Argoは全球海洋観測システムの重要なコンポーネントである.
(2)当初のコアミッションをまず達成すべき.
(3)海氷下のサンプリングを加えるべき.
(4)2000m以深の観測を含めるべき.
(5)データ品質の長期安定性を目指す必要がある.
- 拡張Argo
(1)領域的に強化した観測網(西岸境界域など)を構築
(2)生物・化学パラメータ計測の要望.これは物理・化学・生物統合観測システムにつながる.どんなパラメータをどんな時空間スケールで観測するか,どんな精度で計測するか等,生物・化学パラメータの観測を全球システムとするための戦略が現在は欠如している.
(3)センサーやフロートの開発.
(4)データシステムの発展.
(5)モデル・データ同化との連携.
【総合討論(アルゴの将来像について)】
1. 2010年度日本海洋学会春季大会シンポジウムについて
花輪委員長:上記について細田氏から説明をお願いする.
2010年度日本海洋学会春季大会シンポジウム(案)
(海洋研究開発機構 細田氏が説明)
説明の要点:
2010年度日本海洋学会春季大会でのArgoに関するシンポジウム開催の提案
- OceanObs'09を受けて・・・
題名:「Argoの進むべき方向性」―Argoによる研究成果と今後の展望―
主催:Argo計画推進委員会
コンビーナー:道田委員,気象庁林氏,海洋研究開発機構細田氏
開催予定日:2010年3月30日(火)
目的:広い分野から情報と意見を集めて,アルゴ計画が次に向かうべき方向を示したい.本シンポジウムは,現在までの成果をレビューし,OceanObs'09での議論や国内外の新しいフロート・センサー技術に関する情報を共有しつつ,Argo計画の今後の方向性について議論を行うことを目的とする.
- 日本海洋学会ではこれまで3回のArgoに関するシンポジウムを開催した.いずれもオペレーショナルな部分とサイエンスの部分をArgoという一枠で紹介していたが,今回はOceanObs'09を受ける形で,サイエンスに特化してサイエンスでこれまでわかってきたことと,今後どのような方向性を持たせるべきか,OceanObs'09の内容に沿って集中的に議論してはどうか.
シンポジウムプログラム内容について
- フロートデータを用いた現在までの研究成果
(1)全球海洋観測網による海況モニタリング(データ同化・全球観測を生かした観測研究等)
(2)海洋内部プロセス研究(モード水形成・変動過程,混合層形成過程,二重拡散過程等)
(3)水温・塩分以外のセンサー搭載フロートによる先駆的研究(酸素,クロロフィル,CO2センサー)
- 現在進行中あるいは将来的な展望・計画
(1)時空間密度を高くした観測網の構築
(2)海の健康診断のより高精度な運用
(3)化学生物過程を含めた統合的観測
(4)グライダーを絡めた沿岸観測
(5)大深度変動を捉えるための観測
- モデル研究の立場からの提言
(1)高解像度化に対し,モデルの物理パラメータに関する検証に必要な観測データ
(2)生物地球化学や生態系に関して,観測に要求するデータおよびその品質管理は?
- 総合討論
質疑・応答:
花輪委員長:このシンポジウムを認めてほしい.
全員一致で認められた.
花輪委員長:シンポジウムの締切はいつか?
細田氏:12月14日である.
花輪委員長:いろいろな意味で(アルゴを理解してもらうため,アルゴデータを使ってもらうため,アルゴフロート展開に協力してもらうため)アルゴサポーターを増やすことが目的の一つ.1日のシンポジウムでは盛りだくさんではないか?やむなく削るところがあるかもしれない.
細田氏:ご意見がありましたら,後日でも頂きたい.
花輪委員長:アルゴ計画推進委員会が主催なので,シンポジウムのプログラムを決定する前に関係者に情報を流せば,意見が集まるのでないか?では,シンポジウム開催は推進委員会で承認された.
2. その他
道田委員:次のステップとして大深度フロートの開発が挙げられている.センサーの精度の問題もあるが,変動の時間スケールが表層とは違う.それにアルゴのようなタイプの観測が向いているのか?設計や思想等が議論されているのか?
須賀委員:具体的な設計の段階にはまだ入っていない.repeat hydrographyで観測されているだけではデータが不足している.repeat hydrography観測の間を時間的に埋める必要があるだろう.必ずしも10日に一度や3度格子に1つは必要ないと思う.時空間的には今までArgoに比べたらもっと疎でいいと考えている.海氷下の観測はぜひやったほうがいいという話になり,具体的な設計についてはArgo運営チームで作成中である.大深度フロートもコアArgoに取り込むことになったときに,海氷下のフロートの場合と同様に進むのではないかと考えている.
河野委員:JAMSTECでは大深度フロート開発すべく第一歩を踏み出したところ.時空間的な設計はだいたい想像できるが,もしフロートができたらどの辺りで投入すべきなど作って頂ければ,今後の展開の見通しがつく.
道田委員:ゆっくりしか動かないけれどラグランジュ観測なので,時間変動なのか空間変動なのかがわからなくなる.Argoの欠点が出やすくなる領域ではないだろうか.いわゆるArgoとは別のものが必要ではないか?
花輪委員長:Stommel先生のスローカムのアイデアの中に,数十分の一でキャリブレーションのためのスローカムを作成している.だいたい似たような発想だと思う.
【閉会】
細田氏:次回は5,6月に気象庁が事務局で開催する.