第11回推進委員会

第11回アルゴ計画推進委員会議事概要

日時:平成22年12月8日(水) 14:00〜17:00
場所:海洋研究開発機構 東京事務所セミナー室AB

出席者:
花輪公雄委員長,久保田雅久委員,道田豊委員,安田一郎委員, 菅沼真樹委員(代理出席:吉田洋氏),堀内義規委員(代理出席:岩村公太氏), 平井光行委員,米田浩委員(代理出席:大森正雄氏),安藤正委員, 仙石新委員,大嶋真司委員,河野健委員,須賀利雄委員

*開会の挨拶(海洋研究開発機構 須賀委員)
*各委員およびオブザーバーの自己紹介を行った.
*配布資料確認

【前回議事録の確認】

花輪委員長:前回の議事録はメール等で推進委員の了承を得ているが,更なる修正点がある場合には, 会議終了までに発言頂きたい.修正は今週中まで受け付け,何もなければ,議事録としてJapan Argoホームページに掲載する.

【議題1:国内アルゴ計画の進捗状況(観測関連)】

1.アルゴフロートの展開状況・計画

(海洋研究開発機構 細田氏が説明)

説明の要点:

フロートの展開状況について
日本郵船(株)によるJAMSTECフロートの投入依頼について
昨年度購入PROVORフロートの不具合について
JAMSTECで投入したコアアルゴとArgo equivalentフロートの推移

質疑・応答:

花輪委員長:日本郵船にて投入してもらう海域に理由はあるのか?
細田氏:EEZを考慮しつつ,フロート密度の薄い海域に入れてもらう.日本郵船との間で覚書が締結されたので, 投入希望海域を改訂し,改めて日本郵船と協議したいと考えている.
久保田委員:日本郵船側の理由で投入海域が限定されることはあるか?
細田氏:日本郵船の所有する船舶は世界の様々な海域を往来しているため,投入海域の制限は基本的にはない. 投入船舶は,外国でのフロート積込は手続きが煩雑になる可能性があるため,まずは国内(関東近郊)に出入港する船舶に依頼する予定である. 先方からはその範囲内であれば何台でも投入できると心強い言葉を頂いている.投入マニュアルを準備し,なるべく舷が低い船舶によって注意して投入してもらうようにお願いした.
久保田委員:日本郵船の船は南半球にも行っているのか?
細田氏:行っている.インド洋にも行っている.
安田委員:NKEとはどこの会社か?
細田氏:フランスの会社.もともとはマーテックという会社が始まり.PROVORはこの当時からあったが,会社が次々と変わっている. フロートの開発や修正はフランスの研究機関のIfremerと連携して行っている.
安田委員:日本の代理店はどこか?
細田氏:三興通商である.
花輪委員長:マリーナでテストしたのは、JAMSTEC納品分だけか?
細田氏:気象庁の1台もJAMSTECの納品時に日本に一緒に送られてきたので、同様の問題が生じる可能性があるため,気象庁側が代理店に依頼し, JAMSTECと同じ改修作業を行っていると聞いている.
花輪委員長:他の国で同様の事態が起こっていないのか?
細田氏:こちらでは把握していない.PROVORを大量に購入しているのはIfremerであるが,Ifremerはタンク等の整備環境があり独自にテストが実施可能であるため, 今回のような問題は発生しないのではないかと考えられる.

2.気象庁によるフロートの展開状況・計画

(気象庁 平原氏が説明)

説明の要点:

平成22年度投入計画と経過
フロートの運用状況
イリジウム通信型中層フロート

質疑・応答

花輪委員長:設定①に設定したときのParking depthはどうするのか?
平原氏:500dbarとなる.
安藤委員:パラメータは可変なので7月までに確定したい.
花輪委員長:オペレーションにも興味がある.気象庁のパソコンからフロートの設定を変更することができるのか?
平原氏:Eメールで設定可能.
道田委員:フロートの浮上中にメールをフロートに送るということか?
平原氏:インターネット環境を使って,設定を変更できる仕様となっている.
道田委員:イリジウム通信型フロートのメリットは浮上時間が短くて済むことだと思う. 浮上時間内にプロファイルデータの送信と設定メールの受信を行うと思うが,それはどのくらいか?
細田氏:おそらくAPEXタイプのフロートを購入されたと思う.海面滞在時間は最長で2-3時間だが, フロートは通信が完了次第沈降開始するので,実際は15分くらいになると思う.
道田委員:その間にメールを送るというオペレーションをするということか?
細田氏:APEXタイプの場合,フロートから電話をかける仕組みになっている.設定を変更する場合,サーバに設定ファイルを置いておいて, フロートがサーバに電話をかけてきたときにそのファイルを取得する.JAMSTECでは最近別のタイプのイリジウム通信型フロートを購入した. このフロートはメールでやり取りするタイプである.同じイリジウム通信でも2種類の通信形態がある.
花輪委員長:通信コストはどうか?
細田氏:通信費用の計算方法も2種類で異なる.APEXのような電話をかけるタイプは,定額制でたくさん通信しても電話料金はそれほど大きくは変わらない. メールのやりとりの場合には従量制で通信すればするほど金額が増加する.このタイプの場合,通信が頻繁で,かつ大容量のデータを取得するようなフロートであると, 計算上通信料金が結構かかることになる.
道田委員:フロートの設定はもう少しフレキシブルに変えられると思うが,浮上間隔も短くできるのか?
平原氏:できる.
道田委員:各年の達成率は15台のフロートの合計で計算していると考えるが,個々のフロート毎に達成率はどの程度異なっているのか?
安藤委員:後で調べる.
*投入したフロートが全て運用を停止している平成17年度と平成18年度の30台中で,50%以下が7台,50〜100%が9台,100〜150%が7台, 150〜200%が7台であった(委員会後に確認).
花輪委員長:イリジウムフロート投入は凌風丸・啓風丸の定線上で投入するのか?
平原氏:その通りである.

3.水産庁及び水産総合研究センターによるフロートの展開状況・計画

(水産庁水産総合研究センター中央水産研究所 渡邊氏が説明)

説明の要点:

2010年12月のフロート稼働状況・今後の予定
酸素(オプトード)センサーの観測精度に関する検討
水中グライダー観測の実施状況
クロロフィルセンサー付フロートの紹介

質疑・応答

河野委員:グライダーで500m以浅でのオペレーションが不可能に近い理由は何か?
渡邊氏:漁業活動が盛んなところでグライダー観測を行うと,トロール漁業や巻き網漁業等漁業活動に影響が出るため.
河野委員:それに対応するための浅海用グライダーとはどんなものか?
渡邊氏:大阪府立大学の先生が非常にコンパクトなグライダーを開発している.現在のグライダーは高価だが, それを使えば,万が一,船や網などにぶつかってグライダーが故障しても経済的なダメージが小さいと考えている.
花輪委員長:購入費用の他に投資したコストはどのくらいか?
渡邊氏:日本国内用のカスタマイズにメーカーに対応してもらった等あるのではないかと思うが,具体的にどのくらいの金額になったかは把握していない.
河野委員:グライダー観測は何人で行っているか?
渡邊氏:4,5人程度.
久保田委員:アメリカではオペレーションで使用されているのか?どういう体制で行っているのか?
渡邊氏:詳しい情報はない.太平洋側では数台で動かしていると聞いている.プロジェクトとして運用していて,本当のオペレーションまでは至っていないと思う.
久保田委員:そのくらいであれば,日本はグライダー後進国ではないのではないか.
須賀委員:今年3月にニュージャージー州ラトガース大学に見学に行った.10年前くらいから観測を開始し,現在24台グライダーを保有. 多いときには4,5台を同時に沿岸から投入し1ヶ月程度連続観測させているらしい.グライダー観測とHFレーダー観測を組み合わせて,北部東海岸の準オペレーショナルな運用をしている. 州と官庁と大学が連携して実施していて,まだ実験段階のようだ.慣れてくると,一人のオペレータが3,4台面倒見ることが出来るらしい.


【議題2:国内アルゴ計画の進捗状況(データ処理関連)】

1. 第11回アルゴデータ管理会合報告(気象庁・海洋研究開発機構)

リアルタイムQC

(気象庁 星本氏が説明)

説明の要点:

第11回アルゴデータ管理チーム会合について
第11回アルゴデータ管理チーム会合の主要検討事項報告

質疑・応答

花輪委員長:なぜ新しいデータセンターの設立が必要なのか?様々なタイプのフロートや観測要素によって複雑化してアルゴ情報センターが悲鳴を上げているという意味か?
星本氏:アルゴ情報センターではない.データセンターと遅延品質管理を行う機関である.フロートが増加し,取り扱うデータが増えてきているので,手一杯な状況のため.
花輪委員長:地域的にデータが集まってきているところが手一杯になっているので,もう少し,リージョナルセンターをたくさん作ろうということか?
須賀委員:リージョナルセンターではない.日本の場合,気象庁がデータセンターとして即時処理を行い,JAMSTECが遅延品質管理を行っている.そういう場所をもっと増やそうという動きである. 例えば,フロートは持っているがデータ管理は他の国に任せている国があるが,そのような国が自前でデータセンターを持つことを奨励するという動きである.
花輪委員長:双方向通信フロートのデータ配信先にアルゴ情報センターを追加する件について,アルゴ情報センターにデータを送信するよう指定はできないのか?
星本氏:データ送信先はフロート保有者が指定する.その宛先は5カ所設定可能と聞いたことがある.そこにアルゴ情報センターを含めればいいと考えている.
細田氏:補足する.先ほども述べたが,イリジウムフロートには2種類ある.データをメールで送信するタイプのフロートの場合、5カ所指定することが可能. 電話回線でデータを送信するタイプのフロートの場合,サーバに直接電話をかける形になるので,そのような設定はできない.
星本氏:その場合には,アルゴ情報センターにデータを送付するしかないということか?
細田氏:それしかないと思う.
花輪委員長:24時間以内に最初のユーザにデータが届くようにするのが,国際アルゴ計画の原則.この原則が破られるオペレーションもあり得るのか?
須賀委員:フロート保有者にはフロートから瞬時にデータが送付される.イリジウムフロートであってもアルゴフロートである限りフロート保有者はデータセンターにデータを転送している. したがって,アルゴデータが即時にユーザに配信される流れは確保されている.アルゴスデータはCLSでデータを一括で取り込み,データ保有者に配信している. フロートの展開情報を監視しているアルゴ情報センターはアルゴス通信のデータはCLSで一括に取り込まれたデータを見れば管理できた. しかし,イリジウムフロートはデータの配信経路がアルゴスとは異なるため,監視ができなくなった.そのため,排他的経済水域への流入の監視等の役割が果たせなくなってきている. そのための要望だと思う.
道田委員:イリジウムフロートはメリットが多いのでこれから増えるだろう.メタ情報ファイルをバージョンアップして, イリジウムフロートもアルゴスフロートも通信形態に関わらず一括管理するということか?
星本氏:その通りである.
道田委員:良く議論されて決定されたことだと思うが,直観的にはアルゴスフロートとイリジウムフロートを別に管理したほうがいいと思う. イリジウムフロートのミッションを頻繁に変えるフロート保有者が出る可能性もあり,メタ情報が複雑になると思うが,どうだろうか?
星本氏:複数回のミッション変更に対応するフォーマットになっている.


遅延品質管理

(海洋研究開発機構 佐藤氏が説明)

説明の要点:

遅延データ処理実施状況の報告
データ処理におけるmicroleak問題への対応

質疑・応答:

花輪委員長:Sea Birdプロファイル数が少ないのは,交換した時期が遅いということか?
佐藤氏:Druck社製に交換したものが少ないということ.
花輪委員長:他国が遅延品質管理処理を速めているようだが,特別な理由はあるのか?
佐藤氏:特にはわからない.JAMSTECでは昨年のmicroleak現象判別方法が曖昧だったため処理を待っていたが, 問題ないプロファイルについてはいつも通りのペースで遅延品質管理処理を進めていた.

2.アルゴに関する研究成果

(海洋研究開発機構 佐藤氏が説明)

説明の要点:
Japan Argoホームページからの登録数は,英文論文は6件,和文論文は16件.

質疑・応答:

花輪委員長:和文はどういうものが含まれるのか?
佐藤氏:査読がないものも含む.
花輪委員長:月刊海洋も含むのか?
佐藤氏:その通りである.
花輪委員長:Argo Project OfficeホームページのArgo Bibliographyに自動的に更新されているのか?
佐藤氏:手動で更新している.
花輪委員長:学会会員の皆さんの協力状況は?
佐藤氏:良好である.前回のアルゴ計画推進委員会の報告時よりも多いと思う.
花輪委員長:関係者に周知されてきている.


【議題3:国際アルゴ計画に関わる国内外の情勢】

1.AIC Trust fundの対処

(海洋研究開発機構 須賀委員が説明)

説明の要点:

質疑・応答:

花輪委員長:毎年同じ手続きで進んでいくのか?
須賀委員:その通りである.
花輪委員長:JAMSTECへの感謝のレターがIOC事務総長からJAMSTEC理事長宛に届くのか?
須賀委員:そうなると思われる.

2.秋田保安部で拾得されたJAMSTECフロート

(海洋研究開発機構・海上保安庁)

経緯について

(海洋研究開発機構 細田氏が説明)

説明の要点:

フロート情報
回収の概要
フロート拾得に関する要望について

海上保安庁の対応について

(海上保安庁 仙石委員が説明)

説明の要点:

質疑・応答:

平井委員:管区から他にこのリーフレットが渡っているのか?
仙石委員:今回は保安部までとしている.何かあった場合には,漁協等への説明に使えるかと思う.
平井委員:漁協団体等にリーフレットを出した方がいいかどうかを持ち帰り内部で相談したい. 作成する際にはご協力をお願いしたい.
花輪委員長:拾った人のフロートを拾った時の感覚はどうだったのか?
細田氏:得体の知れないものと感じられたようだ.JAMSTECで展開するフロートの殆どは,日本よりも少し遠い外洋域で投入されるため, 日本沿岸で拾得されたり漂着したりすることを殆ど想定していなかった.このため英語の連絡先しか書いておらず,不審に思われたのかもしれない.
安藤委員:リーフレットでフロートが黄色となっているが,それでいいのか?
細田氏:黄色以外の色のフロートも存在するが,日本近海に展開されているフロートの殆どは黄色であり, まずはArgoフロートが何であるかという説明に重点を置き,混乱を避けた.今後フロートに対する理解が広まり,黄色以外のフロートの展開が増加してきたら, 詳しい説明を検討する必要があるかもしれない.

3. Argo将来構想検討会報告

(海洋研究開発機構 細田氏が説明)

説明の要点:

経緯
第1回アルゴ将来構想検討会の報告
第2回アルゴ将来構想検討会の報告
将来構想検討会を通じて見えてきた事実と今後の方向性

質疑・応答:

河野委員:JAMSTECは研究機関であるのでアルゴフロートの投入は研究活動の一環で,研究費の中で賄っている. 昨今の予算削減のため,例えば一律に予算削減されれば本数も減っていく.展開するアルゴフロートの台数を維持するための研究内容を問われる. それが「ロジック」と書いたところである.気象庁等他の機関のように,業務のために必要な事業であるという位置づけが出来ないので, 継続困難になる可能性があるということに繋がっていくことをご理解頂きたい.
花輪委員長:日本学術会議の大型研究マスタープランについて進展があったので報告する.日本学術会議とは内閣府の下にあり, 約200名の会員と約2000名の連携会員が学術の振興のために議論している組織である.ここ最近,急激に100億円を越える大型研究の予算の取り方が変わってきた. 今までは,研究計画を持っている組織や個人がFundingエージェンシーに直接交渉して理解してもらい資金提供を受けてきた.経済悪化と予算削減により, もらった研究資金での研究成果が強く求められるようになった.日本学術会議では,100億円を越える大型設備・研究をまとめて公開しようという考えに立った. 昨年秋頃から急に始まり,結果的にマスタープランとしてまとまり,今年3月に公開された.7つの分野に分かれて合計で70ほど大型設備・研究が出てきたが, 海洋を含む地球惑星科学委員会では徹底した議論をする前にまとまってしまったので,いろんな学会から不満が出た. 日本学術会議ではマスタープラン改訂版を来年10月に出すことに決定.それまでのコミュニティーで議論してもらうように伝えた. 12月22日締め切りで日本学術会議は提案を受け取る.地球惑星科学委員会では企画分科会が音頭を取って地球惑星科学でまとめて提案することに決定. 35の提案があり,すべての提案を12月4日と5日にJAMSTEC東京事務所でヒアリングを開催した.企画分科会が約12にまとめた. この結果をもとに,12月22日に学術会議に提出する.全体にコミットしなかったことを海洋学会で反省し,設備を中心とする一つの課題を申請した. 具体的には「研究船がほしい」ということ.白鳳丸・淡青丸・みらいの設備を新しく搭載した研究船,アルゴの基盤観測システム, グライダー観測が必要であるという申請を出した.JAMSTECは表面係留系を利用した研究計画を提案した.これらをまとめて1つにして申請すべきと提案があった. それを受けて,現在案を練っているところである.コミュニティーで大型設備や大型研究計画は常に持っているべきだと思う. 海洋学会の中に将来構想検討委員会を設置することを考えている.日本学術会議には海洋関係の分科会や小委員会が幾つかある.それらの委員会を巻き込んで, 常に将来構想を考えるような方向に考えて行きたい. Argo計画を存続するために短期的の部分に書かれている「何らかの提言とは何か?」をもう少し具体的に説明してほしい.

細田氏:日本におけるArgoフロートデータの活用事例を交えて説明.

説明の要点:

日本におけるArgoフロートデータの活用事例
コアアルゴの存続状況について

質疑・応答:

花輪委員長:ミレニアム・アルゴは,一つのチームを組んで長期予報の精度を70%に向上させるという目標の達成のために5年間の計画で進んできた. その後2005年から今までは,それぞれの機関の目標でそれぞれに推進してきた.そんな中で着々と成果が上がり,例えば海洋貯熱量の増加を精度良く見積もれるようになったり, 予報へのアルゴのインパクトが非常に高くなり,さらに,思いもかけないところでアルゴデータが役に立っているという例も出てきている. そのような成果を元にアルゴ計画を続けなければならないというアピールが必要だというのが細田氏の主張.その主張がどういうタイミングで、どういうルートで, どういう形で行うかを議論すべきことだと思うが,それでいいか?
細田氏:その通りである.
花輪委員長:気象庁はどうか?今年から観測船を減らし,その代わりにアルゴフロートを増やして展開するなど,大きな舵を切っている. 今後の見通しはどうか?
安藤委員:気象庁は今年4月から観測船5隻から2隻の体制に大きく変更した.廃船した3隻の観測を代替する意味で12台のフロートを追加し, 今後は年間27台の投入を行う.これらのフロートは日本近海の海況把握を目的としているが,すべてのフロートは実質的にはコアアルゴに貢献するものと理解している. 先ほど紹介したイリジウム型フロートは業務実験であるが,台風をターゲットにした観測を行いたい.今後は少なくとも27台は維持し, 当庁の業務と結びつけた形で拡充する努力を続けたい.
花輪委員長:水産庁はどうか?水産総合研究センターで実施するからには研究でしかないが,それを超えた議論はあるのか?
平井委員:基本的にはオペレーショナル観測をアルゴフロートに入れ替えるという議論はない. むしろ県の試験場の船舶や水産総合研究センターの観測船をなんとか維持することで手一杯.水産庁の観測は水温・塩分だけでなく, 漁獲高を伴ったものが重要なので,すべての観測をアルゴフロートに置き換えることは考えていない. 先ほどのアルゴデータを利用した成果で紹介があった資源調査や沿岸の漁場予報への活用はそのとおりである.特に最近, 沿岸域で漁業活動を阻害するもの(赤潮等)や漁業被害に関する予測が大きなニーズになってきている. 外部境界条件としたモデルを利用して沿岸域の海況予測が重要になってきている.昨年度八代海での大きな赤潮発生や陸奥湾でのホタテの大量死等があり, 引き続きこういう活動が必要だと考えている.
花輪委員長:JAMSTECの内部で継続して今のような資金が獲得できるかについて危惧を抱いていると思う.JAMSTECの理屈の中で主張していくことが考えられる. 実際には戦略的海洋監視システムの構築を目指し,気候変動をターゲットに含めた海洋環境変動を非常に効率的に監視することを目的とする. アルゴフロートは非常に有効な手段だということを証明しつつ,アルゴ計画を進めていくということだと思う.今日紹介された成果の中では, 気候変動等に直結するような成果がJAMSTECとしての成果となり,JAMSTECとしてはアルゴがなければこれはできないという主張を常にしていく必要があるという理解でいいか?
須賀委員:全球あるいは北太平洋全体にフロートを展開する根拠にはならない. あくまで研究費なのでJAMSTECの投入したフロートがカナダの漁業予報に役立っているといっても何の威力もない. 豊後水道のマアジの予測向上に役に立っているという事実もそれほど威力がないと思われる.戦略的海洋監視研究チームでは,コアアルゴを維持しながら, これがなければできないより高度な観測網を,領域を限定して実施することを行っている.例えば,ある研究のために重要な海域を選び, そこにコアアルゴの50倍あるいは100倍の密度でフロートを投入し集中的に観測する.モデルで言うネスティングのような形で, コアアルゴがあった上で集中的な観測を進めていく.アルゴには正式に取り込まれていない酸素やクロロフィルセンサーを使った研究をしていく. この実施により,物理・地球化学・生物を含めた次世代全球統合海洋観測システムの構築に貢献していく.こういう形で進めている. 仮に予算が切られていくと,実験的にやっている部分は研究なのでJAMSTECで実施できるが,コアアルゴが真っ先に削られる. コアアルゴを維持すべきという主張をすると,ミレニアム・アルゴ終了後,コアアルゴをしかるべきところで続けていこうとJAMSTECの外でオーソライズされたか?と問われる. 日本としてコアアルゴをやっていこうという声明等の形で出ているかというと必ずしもそうではない.その中で非常に苦しい説明をJAMSTECの中でしようとしている. 細田氏から紹介があったようにアルゴは重要なので,日本としてはコアアルゴをやらなければならないと思われる. 特に北太平洋のかなりの部分は日本が投入を止めたら4,5年はフロートが埋まらないだろう.他国も自分たちのところで手一杯. 日本として北太平洋への投入をしっかりやっていこうという考えがオーソライズされて,さらにその上で我々が実施している実験的観測を強化することに意味がある. 気象庁が行っている,日本周辺海域への投入はまさにそれを業務として行っているものと言える.世界でもかなり進んだ試みだと思う. 北西太平洋を非常に細かく観測する.現業の同化システムであるMOVEで北西太平洋を細かいメッシュで計算しているが,それの観測版と言える. これが,Japan Argoとしてはグローバルなもののうち,北太平洋はしっかりやる,その上で気象庁が北西太平洋を集中的に観測するという風に仮にそのように謳われていたら, 非常にすばらしく世界に自慢できるものであると思う.Japan Argoとしてはオフィシャルにはそういう形にはなっていない. どこかでJapan Argoとして目指すものがきちんと文章の形で各機関の役割がわかるようにまとめられていれば, それを使ってJAMSTECでは今後のことが考えられる.
花輪委員長:それが細田氏の「何らかの提言・要請を出すことが有効か」の背景にあるという理解でよろしいか?
須賀委員:その通りである.
道田委員:提案を出すことにはなるだろう.それがここで検討した結果だとすると,自己評価をしてコアアルゴは維持すべきというロジックになるだろう. 須賀委員が言うことはよくわかるが,須賀委員が言った論理では究極的にはコアアルゴはどこが担うのかという答えがない.それがないと苦しい. 結局ロジックがないということに答えられない.そこを突き崩す論理はないかと考えている.気象庁は業務に役に立つから実施している. そのこととJAMSTECでは研究機関だから研究として行うということを両方書けるような論理があるのではないかと思う.ちょっと考え方を変えて, 研究とオペレーションは対立軸ではなく,両方揃ってアルゴという観測システムだという書き方にして,研究は研究でコアアルゴを担う意義があり, 現業は現業でコアアルゴに貢献するという論理構成にしないと,一番問題の誰がアルゴを担うのかに対する答えがないと思う. そのあたりをもう一度議論したほうがいいと考える.
花輪委員長:オペレーションと研究のための観測を統一的な物の見方で融合させる.結果的に同じことをやっているが, 二つの特徴を持った組織が一緒に実施できる考え方はないか.
河野委員:道田委員が仰ったところはまさに我々が苦労しているところ.最初の目標が長期予報業務の精度向上であって, そのためのネットワークを維持する担い手がJAMSTECだというのは受け入れられにくい.現状ではコアアルゴを維持できて,かつ, 遅延品質管理データをきちんと提出できて,関係国際会議に参加できて発信できる機関はJAMSTECだけだろうと自負している. 継続への強い意思と奉仕の精神はあるが,組織の役割分担の中で受け入れていくのかというところで困っている. 将来構想検討会ではJAMSTECはアルゴを止めたがっていると感じた方もいらしたようだが,そうではない.我々はやりたいと思っている. オールジャパンとしてJAMSTECが担い手だと言って頂ければ苦労は厭わない.アルゴフロートがない海洋学はもはやあり得ないと思う. それを続けるのは責任だろうと考える.うまい具合に日本としての方向性・役割・担い手はこうあるべきだとなれば,予算を付けやすいのではないか. JAMSTECも説得しやすい.
花輪委員長:基本的には研究ベースというのがJAMSTECの立場.サポートレターを書くことを想定すると, 学会や学術会議等の支持が重要になってくると思う.推進委員会は声明を発する機関としていいのかどうかは疑問. JAMSTECの活躍には誰もが期待していると思う.それの表現の仕方をどこからどのように発信したら有効なのかを少し頭を冷やして検討する時間がほしい. 個の単位ではなくコミュニティー全体としてどう考えているのかを議論しやすくなってきている. そういうところに訴えかけていくのもいいのではないかと思う.急ぐのは理解するが,知恵を出し合って次の段階に行きたいと思うが,いかがか?
道田委員:国際的に,また国内的に日本が担うべき部分が何なのかを精査したほうがいい.精査している議論の途中に, 組み立てられるロジックがあると思う.もう少し丁寧に行ったほうがいい.アルゴが役に立っている例には出てこなかったが, 例えば,日本近海の海洋の管理に役に立つ等の論理はないのか?細田さんの紹介以外にも答えがあるかもしれない.もう少し視野を広くしてはどうか? 海洋の管理に役に立つとなれば,アカデミックではないところからの支援も得られる.
花輪委員長:海洋基本政策や海洋基本法に出てくるキーワードを積極的に利用して眺めたらどうなるかを考えてみたらどうか.
須賀委員:ヨーロッパのユーロアルゴを紹介する.この背景にはヨーロッパの地球観測データに関するユーロのポリシーが10年ほど前に発表されている. 地球観測データを自分達で取得することが安全保障上重要であるというもの.少なくとも自分達に重要な海域は自分達でデータを取得しなければならないという考えが一つの柱. 一方でリサーチインストラクチャーの構築も目標となっている.二つの合わせ技となってユーロアルゴが立ち上がったようにみえる.全球の4分の1をヨーロッパが受け持つ. これのために年に200台投入.それに加え,毎年50台を自分達の大事な海域に,より集中的に展開する.彼らは5,6年前,3000台に達する前からそのような構想を返答してきた. 出足は遅れたが,日本もそういう方向に持っていくべきではないかと,将来構想検討会の議論を経ていく中で考えるようになった.細田氏の提案もそういうことを考えて, それに向けて動き出すための将来の指針が欲しいというもの.それを出せるとしたら,学識委員と関係省庁の委員で構成されるこの推進委員会ではないか. 将来への指針があると,そこから動き始められるのではないか.
久保田委員:論理に様々な矛盾を抱えていたからこういう事態になったと思う.ミレニアム・アルゴは長期予報を70%まで向上させるというシンボルがあった. 気象庁だけがやるのではなく,それに関連するものは関連省庁で協力して実施するという一つの旗印であった.しかし,それ自体にも矛盾があった. 長期予報を70%まで向上という目標を達成できたとしたら,予算が定常的に必要だという論理になるが,そういう論理にはなっていない. ここに大きな矛盾を抱えている.簡単な解決策としては,母体となる新しい組織を作るということかもしれない. 現在のように関係機関同士で複雑に結びつけるやり方は日本の中では解決策としては得策ではないかもしれない. 関係省庁から人を出してアルゴセンターを作るというのも一つの考え方だが非現実的かもしれない.旗印を何にするかが鍵だろう.例えば, 再度長期予報とすると,その論理の下にどう結びつけて維持していくかということになるだろう.現実的な解決策としては何を旗印にするかと, それにどれだけきちんと関係するものを取り込めるかだろう.そして,その中にはオペレーションの部分と研究の部分がうまく配置されている. こういう構造を作るということが解決策としては必要だろう.旗印がオペレーション側に振れれば,JAMSTECはどんどん撤退する方向となる. オペレーションを目指していけば,JAMSTECが実施することには矛盾が生じる.解決策は幾つかあってどれも簡単ではないが, 論理の矛盾を解決しつつ組織としてどういう形で取り込まれていくのがいいのかはそれぞれが協力して考えるべき. 推進委員会はアルゴ全体を推進するということであり,どこかの部分のみを推進するわけではない.最終的な判断をここで求めるのは難しいと思う. 時間が経てば経つほど解決が難しくなるので,早急に考えるべきだろう.
花輪委員長:今日の推進委員会はここで議論を終わるが,のんびり構えられる問題ではないので, 引き続き可能性を模索するために当面どこからどういう文章が出せるのかを河野委員,須賀委員,細田氏,私で検討してメール審議になるかもしれないが, 持ち回りで議論して進めていくということでどうか?
全員一致で賛同.
花輪委員長:JAMSTECがアルゴ情報センターのトラストファンド拠金することに対して本委員会として感謝の意を表することに合意して頂きたい.
全員一致で合意.


【閉会】

司会:次回は来年の5,6月に気象庁が事務局で開催する.