JAMSTEC

シロウリガイの放卵放精

1993年12月から1995年11月にかけて、相模湾初島沖の深海底総合観測ステーション (水深1,174m)によりシロウリガイの放卵放精現象を計17日間観察しました。それま で深海生物の放卵放精の観察例は殆どありませんでした。
シロウリガイには雌雄があり、まず「放精」が行われます。通常、多くの 個体が同調して精子を放出し、深海底総合観測ステーションのTV画面を一面に白濁 させます。それから約10分の間隔を置いて「放卵」が始まります。

シロウリガイの放精
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シロウリガイの放卵
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多くの個体が同調して放卵放精を行うためには何らかの誘導因子が必要です。シロ ウリガイの場合、放卵放精は海水温度上昇時にのみ起こりました。従って、水温上昇 がシロウリガイの放卵放精活動の引き金であると推定し、1995年11月25日に潜水調査 船「しんかい2000」第831潜航で現場加温実験を実施しました。
シロウリガイは加温から5分後に、まず「放精」を開始しました。加温時 間は計70分で、その間に19回の放卵放精を観察しました。

現場加温実験によるシロウリガイの放精(相模湾初島沖)
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今回の実験により、シロウリガイは年間を通じて放卵放精が可能であること、シロ ウリガイの放卵放精は温度の上昇により誘導されることが明らかになりました。深海 環境の特性を考えると、温度変化に対応して放精放卵する行動は、深海に生息する生 物にとって一般的な繁殖戦略であるかもしれません。



参考文献

Fujiwara et. al. (1998) In situ spawning of a deep-sea vesicomyid clam: Evidence for an environmental cue. Deep-Sea Research I, 45, 1881-1889.
Fujiwara et. al. (1997) Induction of in situ spawning of a vesicomyid clam by increasing the water temperature. JAMSTEC J. Deep Sea Res., 13, 425-431. (Japanese with English abstract)