更新日:2020/06/12

公募研究

特定温位面以下の寒気質量を通して見る黒潮・黒潮続流上の大気海洋相互作用

研究代表者 菅野湧貴# (電力中央研究所・主任研究員)
研究協力者
[学位:*海洋学,#気象学]

冬季における寒気の吹き出しは、冬半球の中高緯度で最も活発な気象現象の1つであり、黒潮・黒潮続流上で 大気海洋相互作用を引き起こす。黒潮・黒潮続流域への寒気の吹き出しは海面の冷却と同時に、 海洋側では亜熱帯モード水の形成、大気側では海洋からの加熱による寒気の消滅を発生させるが、 これら3者の関係の定量的な理解は十分でなかった。特に、海洋上における寒気の消滅量の定量的な評価が不十分であったが、 研究代表者らが開発した温位座標に基づく寒気の定量評価法によって、非断熱加熱による寒気消滅量の定量評価が可能となり、 寒気の吹き出しと海洋側の変化の定量的な理解に取り組む準備が整いつつある。本研究課題は以下の3つのテーマに取り組む。

  1. 黒潮・黒潮続流上での寒気の消滅に寄与する物理プロセスの解明
    寒気の消滅には非断熱過程が寄与する。水蒸気の相変化、放射過程、鉛直拡散のそれぞれがどの程度寒気の消滅に寄与するのかを 定量的に明らかにする。
  2. 海洋の微細構造が気団変質(寒気の消滅)に与える影響
    海面水温の解像度のみが異なる大気再解析データJRA-55CとJRA-55CHSにおける寒気の消滅量の比較から、 海面水温の微細構造が寒気の気団変質へ与える影響を明らかにする。
  3. 寒気消滅の量・分布と亜熱帯モード水形成の関係の解明
    黒潮・黒潮続流上の寒気消滅量と海面熱フラックスや亜熱帯モード水形成量の変動関係を定量的に明らかにする。

図. 冬期の東アジアにおける気候学的な寒気の流れ。 矢印は温位280 K面以下の寒気の流れを表す。青色が濃くなるほど、寒気の流れが強い。 赤線で囲われた領域は、温位280 K面以下の寒気の消滅域である。寒気の消滅域に接するようにして、亜熱帯モード水の形成域が広がる。