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アプリケーションラボ(APL)

APLコラム

JCOPEチーム

黒潮大蛇行は発生するか?

アプリケーションラボが運用しているJCOPE2M海洋変動予測システムは、7月以降に日本南岸において、黒潮の大きな蛇行(離岸)を予測しています。予測どおりに大きな蛇行が発生し、それが長期に続けば、2004年に発生した黒潮大蛇行(注1)以来の、13年ぶりの黒潮大蛇行の発生になります。黒潮大蛇行が発生すると漁業などに大きな影響を与える可能性があります。
図1は、5月25日から7月までの黒潮の蛇行の成長をしめしています。私たちが注目しているのは、日本南岸を現在移動している小蛇行と、その沖合にある時計回りの渦です。過去の研究から、小蛇行と強い時計回りがペアになって発生すると大きな蛇行が発生しやすいことが知られています。5月25日から7月27日までの予測のアニメーションは図2で見ることができます。
海面水温観測(図3)でも、5月29日には紀伊半島の東南沖で黒潮の離岸が始まっていることがわかります。

図1: JCOPE2Mの予測による5月25日、6月25日、7月27日の黒潮の変化。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

図2:5月25日から7月27日までの予測のアニメーション。

図3: ひまわり8号の海面水温観測(©JAXA)による5月26日、5月29日の黒潮の変化。5月29日には黒潮の離岸が始まっていることがわかります。黒潮の沖側には時計回りの渦の様子も見えます。

大きな蛇行が「黒潮大蛇行」と呼ばれるには、大きく蛇行するだけではなく、それが長期に続くことが必要だとされています。黒潮大蛇行は多くの場合1年以上持続します。蛇行が持続しやすいかどうかの判断のポイントになるのは、蛇行と伊豆諸島の関係です。図4の上段のように、伊豆諸島の西に蛇行が発達した場合は、持続しやすいとされています。伊豆諸島の海底地形(伊豆海嶺)が、黒潮が蛇行を東に押し流そうとする力に対抗する下支えになるからです。一方で、図4の下段のように蛇行が伊豆諸島をまたぐようになると(注2)、蛇行が長続きしないとされています。蛇行が東に流されるのを伊豆海嶺が押し止めにくくなるからです。現在の予測では、図4の上段のようになるか下段のようになるかは微妙なところで、予測の難しいところです。
 過去の実験では、蛇行が始まる前の小蛇行と時計回りの渦の強さのわずかな違いによって、生じた蛇行が大蛇行になるかならないかの結果が大きく異なることがわかっています(1999年の事例。この場合は実際には大蛇行になりませんでした)。今から一か月もたてばその様子がはっきりすることでしょう。

図4:黒潮大蛇行と伊豆諸島の海底地形の位置関係。

黒潮流路変動の予測は,天気予報と同じように,観測データを修正しながら少しずつ更新していく必要があります。JCOPE海洋変動予測システムの最新の予測結果は週二回更新されており、今後の黒潮の蛇行の成長の様子はJCOPEのサイトの図をご参照ください(注3)。毎週更新の黒潮親潮ウォッチでも注目していきます。

参考文献

(注1)
最近発生した黒潮大蛇行は2004年7月〜2005年8月です。
(注2)
このような蛇行を非典型的大蛇行流路と呼ぶ場合もあります。
(注3)
図の見方は黒潮親潮ウォッチ2017/3/27号で解説しています。