
ここ数年、地球温暖化が人類社会に及ぼすさまざまな影響が議論され、それに対する幅広い対策が活発に議論されています。特に最近は、グローバルな影響とともに、温暖化が特定の国や地域社会に及ぼす影響評価に重心が移りつつあります。このような地域的な影響は、地球温暖化からの影響を受けた自然変動の大きな変調という形で現れます。このような意味において、APLの活動は現実に非常に密着した形で地球温暖化問題とも深く関連していて、概念図に示されるようなさまざまな活動への貢献が期待されます。
世界気象機関(WMO)の報告によると、日々の気象予測によって世界全体で1年当たり、数兆ドル相当の資産と数千の人命が救われています。災害をもたらす顕著気象現象の多くは、気候変動と密接に関係しています。オーストラリアの小麦生産の変動は、その典型例です。(下段左)特に、近年は地球温暖化の進行に伴い、気候変動のパターンもその影響を受け変わりつつあります。今までにないその変動パターンを予測することは、生命、財産を守る非常に大きな社会貢献といえます。


多くの人が異常気象と関連して耳にするエルニーニョは熱帯太平洋で起こる有名な現象です。10年程前までは、インド洋には、特に重要な現象は無いと思われていましたが、インド洋にもエルニーニョと良く似たIODが存在することが発見され、最近では温暖化に伴いその発生が頻繁に起こるようになったと考えられています。その一方において、エルニーニョも温暖化に伴い少し異なったパターンで現れるようになり、それは「エルニーニョもどき」と命名されました。この二つの重要な現象はAPLの母体となった研究プログラムの活動で発見され、現在もそれに関する先端的予測研究を発展的に継続しています。
エルニーニョやIODは大洋上で起きる現象ですが、両者とも海面水温分布の大きな変動として、その上に存在する大気の運動に大きな影響を与えます。大気の下層から与えられるこのような海洋の影響は、大気自らが持つ波や流れに関する独自の運動のパターンを通して、その影響が水平、鉛直方向に伝搬していき、最終的には、洋上から遠く離れた世界各地にその影響が現れることになります。このような一連のメカニズムはテレコネクションと言われ、地上に暮らす人間にとっては非常に重要な情報を与えます。右の図はIODとエルニーニョのそれぞれに関連する独自のテレコネクションパターンを示したものです。
JAMSTECが保有する世界有数の計算速度をもつスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の能力を最大限に活用し、地球全体の気候変動から都市環境の気象や気候変動までを予測する超高解像度予測モデルの開発を行っています。このモデルを使用することによって、世界各地の異常気象に大きな影響を与えているエルニーニョやIODが起きたときに、私たちの身の回りの環境がどのような影響を受けるかについての予測が可能となることが期待できます。