「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較

海上保安庁海洋情報部がほぼ毎日発行している海洋速報での黒潮流軸と、こちらで紹介している短期予測と長期予測の黒潮流軸を比べてみます。海洋速報の流軸を「観測」とみなすのは厳密には検討する必要がありますが、これまでの経験では海洋速報の流軸は現場の実態と非常に一致しています。少なくともモデルの予測よりはずっと実態に近いです。海洋速報を作成されている皆様のご尽力にはいつも感謝しています。

「黒潮親潮ウォッチ」では、黒潮流路の10日先までの短期予測と、2か月先までの長期予測を紹介しています。

モデルの黒潮流軸ですが、検討の結果、モデル海面水位が0.3mの場所を流軸と定義するともっとも当てはまりがよいことがわかりました。このような簡明な定義によって迅速に比較ができるようになりました。

今日までに「海洋速報」で検証できる直近の結果である12月18日までの黒潮「短期」予測 (2020年12月9日発表) で紹介している予測(JCOPE-T DAモデルを紹介)について示します。まずその日の現況を図1に示します。

Fig1

図1. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。2020年12月9日。

 

現況予測の結果は(緑線)はかなり海洋速報の結果(黒線)に似ていることがわかります。その後の短期予測(図2)でも

Fig2

図2. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。左: 2020年12月13日。右: 2020年12月17日。

黒潮蛇行が徐々に南東方向に成長する様子を、やや過大ながら予測できていました。

一方、おおよそ11月に行った長期予測(JCOPE2Mモデルの結果を紹介)

2021年1月13日までの黒潮「長期」予測(2020年11月11日発表)
2021年1月21日までの黒潮「長期」予測(2020年11月18日発表)
2021年1月29日までの黒潮「長期」予測(2020年11月25日発表)
2021年2月2日までの黒潮「長期」予測(2020年12月2日発表)

の結果を並べて示してみました(図3)。

Fig3

図3. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE2M黒潮流軸(色線)。左: 2020年12月7日。右: 2020年12月21日。

予測開始日がそれぞれ違っていますが、全体として黒潮蛇行の位置を西寄りに予測しすぎていました。

今後も、「海洋速報」流軸との比較を続け、モデルの改良に役立てていきたいと思います。今回の結果から、長期予測に使っているモデル(JCOPE2M)の再検討が必要であることがわかりました。一方、短期予測に使っているモデル(JCOPE-T DA)については引き続きこのようなやり方で推移を紹介していきます。