海も暖冬! (親潮ウォッチ2016/01)

海の暖冬

我々アプリケーションラボが予測していたように(JAMSTECニュース2015/11/4「スーパーエルニーニョ現象のこれから〜2016年後半にはラニーニャ現象が発生か〜」、エルニーニョ発生による影響で今冬は暖冬です。この天候状況での海の様子を見てみましょう。

図1の上段は、JCOPE2のデータを用いて、昨年11月1日段階での日本周辺海面水温が、平年(1993から2012年の20年平均)より高いか(赤っぽい色)、低いか(青っぽい色)、を見たものです。昨年の大きな話題(2015/12/18解説)であった親潮域の高温(図中A)が目立つ他は、この時点では全体として平年より低温の海域が多く見られました。その後、今年1月10日(図1下段)には、逆に平年より高温の海域が多くなってます。温度の変化の様子は海域によって海流の影響を受け単純ではありませんが(※1)、全体として暖冬をもたらしている天候(※2)の影響を受けて、高い海水温になっていると言えます。

記録的に見て、これはどれくらい高い海面水温だったのでしょうか?図1下段の点線で囲まれた領域で12月の海面水温を平均して過去の年と比較すると(図2)、2015年の12月は、JCOPE2のデータが利用できる1993年以降、2008年に次いで2番目に高い温度でした。2008年はラニーニャの年だったので、冬の温度がエルニーニョだけで決まるというほど単純ではないようです。

長期的な今後の天候と海況の予測については、アプリケーションラボの季節予測のサイトhttps://www.jamstec.go.jp/frcgc/research/d1/iod/seasonal/outlook.htmlで情報発信を行っています。

Fig1

図1: JCOPE2再解析による海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(ºC)。[上段]2015年 11月1日。[下段] 2016年1月10日。

Fig2

図2: 図1下段bの点線枠(125-150ºE,26-46ºN)での12月平均の海面温度の平年値からの差の時系列。横軸は年。

 

※1
例えば図中Bの日本南岸では、黒潮が離岸流路のため、例年より温度が低めです。今週号の黒潮現状参照。

※2
12月の天候については、気象庁「12月の天候」参照。


親潮の現状

特に平年より高温が目立つ親潮域(図1のA地点)の現状を見てみましょう。先月解説したように(2015/12/4号)、この海域での高温は海流の影響が大きいです。海流の影響をより良く見るために、大気とは直接触れない水深100mの親潮域の様子を見たのが図3です。図3は、1月10日の水深100mの水温(図左)と、水温が平年より高いか、低いか、を見たもの(図右)です。暖水渦が東北沖から北海道南東沖を占めており、親潮の影響域(図3左の水温5℃以下の水が指標)は阻まれて東にとどまっています。そのため、平年より温度が6℃以上も高い所が見られます(図3右)。

図3: JCOPE2による1月10日の水深100mでの解析値。矢印は流れ(メートル毎秒)。[左図]色は海面水温(ºC)。[右図]色と等値線は 水温の平年(1993年から2012年の平均)との差(ºC)。

9月4日号で 紹介した、親潮の面積(図3左の点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)で見ると(図4の赤線)、平年の季節変化(図4の黒細線)のはるか下、通常の範囲(灰色の範囲)を超えてさらに小さい面積になっています。親潮面積が小さいということは、冷たい水(5度以下)の範囲が狭い、すなわち、親潮域があたたかいことを意味します。11月に引き続き(2015/12/4号の図6)、JCOPEのデータのある1993年以降で、親潮面積の12月平均は2015年が過去最少でした(図5)。

Fig4

図4: JCOPE2再解析データから計算した親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2014年から現在までの時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。

 

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図6: 親潮の12月平均面積の各年の比較。単位は104 km2

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。