6月18日から7月23日の予測を検証します

毎月月末は過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2016年6月24日号の、6月18日から7月23日までの予測を検証します。

図1上段は、6月18日から予測した7月23日の黒潮の状態です。6月24日号の予測のポイントは、黒潮流路が7月に八丈島の北を流れる接岸流路的な状態になるということでした(図1上段)。現実の進行は予測よりも少し遅かったものの、実際に八丈島の南を流れる離岸流路は減衰し、黒潮が八丈島付近から北を流れています(図1下段)。つまり、先月の予測は大筋で良く当たっていました。7月23日の実際の様子については図2の「ひまわり8号」による海面水温画像(※1)も参照してください。

図3は2016年6月18日から7月23日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。

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図1: [上段]2016年6月18日から予測した7月23日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した7月23日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。アルファベットq,r,..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。

Fig2

図2: 「ひまわり8号」が観測した2016年7月23日の一日平均海面水温(°C)。JAXA提供の1時間データを合成した。白の空白は雲がかかって観測できなかった所。赤星()は八丈島の位置。

 


図3: 2016年6月18日から7月23日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

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八丈島付近の黒潮流路について、詳しく見てみましょう。過去の解説で(※2)、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

観測を確認してみましょう。図4は、過去の解説でも使用した、東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から、八丈島での海面高度(潮位)の今年の変化をグラフ作成したものです。八丈島の潮位は7月になって上昇しています。これは、上で述べたように、黒潮が離岸流路から接岸流路的になった証拠です。

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図4: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」の「各潮位データの図示」から、「期間: 2016年までの 1年間」で、「八丈島」でグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

 

予測を見てみましょう(図5)。図5の青線が、6月24日号の6月18日からの八丈島潮位予測です。現実(図5の点線)に比べると少し進行が早すぎましたが、離岸流路(八丈島潮位が小さい)から接岸流路的な状態(八丈島潮位が大きい)への変化を良く予測できていました。

これからどう変化するでしょうか?6月24日号の6月18日からの予測(図5青線)では、接岸流路的な状態は一時的で、再び離岸流路(八丈島潮位が小)が発達すると予測していました。これは今週号の最新の予測(図5の赤線)でも同じで、再び離岸流路(八丈島潮位が小)が発達すると予測しています。それに加えて、8月にももう一回、接岸流路(八丈島潮位が大)、離岸流路(八丈島潮位が大)への繰り返しがあると予測しています。八丈島付近の黒潮流路の今後の変化に注目です。

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図5: JCOPE2による八丈島周辺の海面高度の予測の2016年6月1日からの時系列。青線が6月18日からの予測。赤線が7月23日からの予測。点線が観測値を取り入れて推測した現実に近いと考えられる値。図4が1地点の観測値であるのに対し、図5の値はモデルの分解能の約9km四方の平均であり、0の値の基準点も違うので、図4と図5の値は完全には一致しません。上昇と下降の変化の傾向を主に見てください。


※1 「ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら

※2 過去の八丈島水位の解説一覧はこちら