2017年6月30日から8月31日の予測(7月5日発表)

黒潮は大きく蛇行した後、八丈島付近をS字型に北上しています。房総半島では西から黒潮が近づいています。四国・室戸岬と紀伊半島・潮岬では黒潮が接岸しています。小蛇行で九州東岸で離岸しています。黒潮は大きい蛇行を保ちながら、八丈島の南を流れる離岸流路が当面続くでしょう。長期的は九州東岸の小蛇行がどう動くかが注目点です。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年6月30日から8月31日の予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した6月30日と7月5日の黒潮の状態です。

黒潮は、比較的大きな蛇行が発達し、八丈島の南を通った後、八丈島付近をS字型に北上しています(図1,2)。S字型から切り離される形で、東海沖には暖水渦が存在しています(図2)。

房総半島沖に黒潮が西から近づいています(図1,2、接岸傾向u[1])。

四国・室戸岬では黒潮が接岸しています(接岸傾向w)。潮岬でも接岸しています。九州東部では、小蛇行の一部が残り(小蛇行2)、離岸が続いています(離岸傾向x)。足摺岬は室戸岬と九州東部の中間で流れが不安定です。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した6月30日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 7月5日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は7月12日・7月19日・8月1日・8月31日の予測です。

東海沖の(離岸傾向v)蛇行は、比較的大きな規模を維持しつつ東にも広がりそうです(図3~5)。房総半島では黒潮が次第に離岸すると予測しています(図3~5)。

九州東岸の小蛇行(小蛇行2)が黒潮下流(東)への移動をはじめる予測が出ています(図3~5)。小蛇行が通過する沿岸では流速の変動が大きくなります。長期的には、東海沖の今の大きい離岸は東に去り、小蛇行2が次の大きな蛇行になる可能性があります(図6)。

図7は、6月30日から8月31日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 7月12日の予測値。

 

Fig4

図4: 7月19日の予測値。

 

Fig5

図5: 8月1日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 8月31日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7
2017年6月30日から8月31日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の蛇行はどうなるか?

先週までは、2017年5月31日付けのAPLコラム「黒潮大蛇行は発生するか?」での予測のシナリオにもとづいて黒潮の蛇行の発達の様子をこの欄で検証してきました。黒潮親潮ウォッチでの通常の予測検証期間である一ヶ月間が過ぎましたので、今週からはAPLコラムのシナリオにはこだわらず黒潮蛇行の発達の様子を検証していきます。APLコラムの予測の一ヶ月後の検証結果は2016/6/30号をご覧ください。

注目ポイントは、1.蛇行はどこまで大きくなるか?2.蛇行がどこに位置するか?3.次の蛇行(小蛇行2)がいつ来るか?の3つです。

まず、蛇行の大きさですが、予測通り大きくなりました。図8は6月19日と7月3日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[2]。2週間前の6月19日(図8上段)よりも、7月3日(図8下段)には温度が低いところが南に広がり、黒潮(温度の高い帯)は北緯32度(赤点線)の南まで蛇行しています。黒潮が北緯32以南まで蛇行すると蛇行が大きいという目安になりますになりますので[3]、現在の蛇行は大きいと言えます。私たちの予測によれば、蛇行はさらに大きくなる可能性があります(図3~5)。

次に、蛇行の位置ですが、「ひまわり8号」海面水温を見ると、7月3日(図8下段)には、冷たい水温の海域が八丈島()まで広がり、黒潮が八丈島の南を流れていることがわかります。さらに紀伊半島では黒潮が接岸しています。典型的な黒潮大蛇行では、黒潮は八丈島の北を流れ紀伊半島で離岸しているので(2017/6/21号「2004年の黒潮大蛇行と今年(2017年)の比較」参照)、現在の大きな蛇行は典型的な黒潮大蛇行ではありません。そのため、典型的な大蛇行のように大きな蛇行が1年以上続く可能性は低くなっています。黒潮が八丈島の南に流れることを2017/6/14号からは予測できていました。

ただし、九州東に存在している小蛇行2の存在に注意する必要があります。この小蛇行が黒潮下流(東)に移動してきて、今の黒潮の蛇行に加わって蛇行をさらに大きくしたり、別の大きな蛇行に発展する可能性があります。最新の予測では、今の蛇行は東に去り、小蛇行2が移動してきて次の大きな蛇行になる可能性が出ています(図6)。2013年にも、2回蛇行が大きく発達して、2回目の蛇行は黒潮大蛇行の発生か?ということがありました。2013年の蛇行に関しては、今週の解説で見ています。とは言え、小蛇行2が近づいてくるのまだ先の話であり、今の蛇行を引き続き注意深く見ていきます。

Fig8

図7:6月19日と7月3日に「ひまわり8号」で観測された海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。

  1. [1]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字u,w,,が接岸傾向で、青字v,x,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  2. [2]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センター和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  3. [3]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。