2018年4月20日から6月21日の予測(4月25日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。八丈島付近を黒潮が通過しています。東海沖の蛇行のために、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。四国・室戸岬では黒潮が大きく離岸し、足摺岬では接岸しています。房総半島ではやや黒潮が離れています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。黒潮の少なくとも一部が八丈島の南から東に通過する時期がありそうです。黒潮大蛇行を作っている冷水渦は今後弱くなると予測しています。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2018年4月20日から6月21日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した2018年4月20日と4月25日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で非常に大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2)。下の図8を見ると先週より暖水が入りやすくなっているようです。

黒潮は八丈島付近()を流れた後、房総半島沖ではやや離れています(離岸傾向j[3]、図1,2)。

四国・室戸岬では黒潮が大きく離岸し、足摺岬でやや離岸していましたが(離岸傾向p, 図1)、接岸してきています(接岸傾向q, 図2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した2018年4月20日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 4月25日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は5月2日・5月9日・5月16日・6月21日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は続くでしょう(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

八丈島に黒潮が近づき、黒潮の少なくとも一部が八丈島の南から東に通過する時期がありそうです(図3)。

四国・室戸岬と足摺岬では離岸と接岸が大きく変化すると予測しています(図3~6)。房総半島沖では、離岸傾向lの通過によって黒潮の流路が大きく変化する可能性があります(図3,4)。

図7は、4月20日から6月21日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 5月2日の予測値。

 

Fig4

図4: 5月9日の予測値。

 

図5: 5月16日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 6月21日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7: 2018年4月20日から6月21日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴をひとつずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安です[4]。図8上段と中段は今年4月16日と4月23日の「ひまわり8号」が観測した海面水温を比較した図です[5]。黒潮は温度の高い帯として見えています。4月16日(上段)、4月23日(中段)とも、東海沖で冷水が北緯32度よりも南まで広がっています。それを迂回して、黒潮が大きく蛇行しています。予測では、大きな蛇行はまだ続きます(図3~6)。

黒潮は潮岬で離岸しています(図8上段・中段、黒潮の高水温が潮岬が離れている)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[6]

八丈島(★)の周囲は暖水になっており、黒潮は八丈島の周囲を流れています(図8上段・中段)。大蛇行を作る冷水塊が東に広がっていることから、黒潮は八丈島に近づいているようです。予測では、黒潮はさらに八丈島に近づき、黒潮の一部が八丈島の南から東に通過する時期がありそうです(図3)。東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフを見ると、執筆時点では八丈島の潮位がまだ高いことから、今のところ八丈島の北を流れる流路が続いているようです[7]。今後、八丈島の潮位が下がってくるかが注目点です。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。一般的には黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされています。三宅島では潮位が下降から上昇しているので、黒潮の位置が東から西に移ってきていることがわかります。

Fig8

図8:[上段]4月16日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。★は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく4月23日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。

 

図9は、水深水温3℃以下の海域の面積(冷水面積)による、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です(図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照)。黒太線は解析値(観測を取り入れて実際に近いと考えられる値)です。先週まで上昇していた値は下降しています。下降は先週の予測(点線)よりも大きくなっています。最新の予測でもさらに下降を予測しています(赤線)。

図9: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの赤点線枠で水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測で、青線が一つ前、黒点線が2つ前の予測(先週の予測)。参考のために、前回の大蛇行が終了した2005年の時の時間変化を薄い線で重ねた。


  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字k,m,,が接岸傾向で、青字j,l,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、たとえば離岸傾向lが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  6. [6]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  7. [7]八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。


JCOPE2Mは週2回の更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。
 


美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。