2018年5月24日から7月26日の予測(5月30日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。八丈島の南を黒潮が通過しています。東海沖の蛇行のために、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。四国・室戸岬では黒潮が大きく離岸し、足摺岬でも離岸しています。房総半島では黒潮が近づいています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。黒潮は八丈島の北を通過する流路に戻るという予測になっています。黒潮大蛇行を作っている冷水渦の強さは、今後やや弱くなると予測していますが、下げ止まる傾向も見えます。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2018年5月24日から7月26日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した2018年5月24日と5月30日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で非常に大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2)。

黒潮は八丈島()の南を流れるています(図1,2、離岸傾向n)。三宅島()に対しては、黒潮の位置が北から南に変化してきています(図8の説明も参照)。

房総半島沖で黒潮が近づいてます(接岸傾向㎡[3]、図1,2)。

四国・室戸岬では黒潮が離岸し、足摺岬でも離岸しています(離岸傾向r, 図1,2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した2018年5月24日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。赤星()が三宅島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 5月30日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は6月6日・6月13日・6月20日・7月19日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は続くでしょう(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

黒潮は、八丈島の北を流れる流路に戻ると予測しています(図3~6)。

四国・室戸岬と足摺岬では黒潮の離岸と接岸の変化が見られると予測しています(図3~6)。房総半島沖でも、接岸と離岸が交互にあらわれ、離岸傾向nの動きによっては大きく変化するでしょう(図3~6)。

図7は、5月24日から7月26日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 6月6日の予測値。

 

Fig4

図4: 6月13日の予測値。

 

Fig5

図5: 6月20日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 7月26日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7: 2018年5月24日から7月26日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。黒潮大蛇行の判定基準は(1)と(2)のみですが、(3)も満たされると典型的な大蛇行流路として長期間持続しやすいとされているので、(3)にも注目します。特徴を一つずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度(赤点線)以南まで蛇行するというのが目安になります[4]。現在、黒潮は北緯32度以南まで蛇行しており、蛇行は大きいです(図1,2)。JCOPE2Mは、大きな蛇行が続くと予測しています(図3~6)。

紀伊半島・潮岬での離岸は続いています(図1,2)。潮位計の観測を利用して黒潮の流路を確認してみましょう。黒潮親潮ウォッチでしばしば使っている東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のデータを今回も使います。「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のサイトから、黒潮の流路情報に進み、「期間: 2018年までの1年間」を選ぶと、図8のような時間変化のグラフが出てきます。

図8の一番上のグラフは、串本・浦神の潮位差です。串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります[5]。図を見ると、串本・浦神潮位差が安定して小さくなっています。潮岬で黒潮の離岸が続いていることをしめしています。予測でも、潮岬での離岸は続きます(図3~6)。

八丈島の北を流れるという点に関しても、潮位計の観測を利用して黒潮の流路を確認してみましょう。図8の2番目と3番目のグラフは、三宅島と八丈島の潮位の時間変化です。過去の解説で[6]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島・三宅島での潮位を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図8を見ると、ここにきて八丈島の潮位は下がっています。つまり黒潮の位置が八丈島の北から南に移っていることをしめしています。三宅島の潮位も下がってきていますので、三宅島対しても北から南に移ってきています(図1,2参照)。

予測では、黒潮が八丈島の南に位置するのは一時的で、再び北に戻ると予測しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。一般的には黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされています。

 

Fig8

図8: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から「黒潮の流路情報」で「期間: 2018年までの 1年間」を指定しグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

図9は、水深水温3℃以下の海域の面積(冷水面積)による、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です(図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照)。黒太線は解析値(観測を取り入れて実際に近いと考えられる値)で、先週(点線)の予測通り、微減です。最新の予測では、これからの下降を予測しています(赤線)。ただし予測検証記事に書いたように、先月から今月にかけては、横ばいからやや上昇になっています。6月から下降のペースも遅く、8月に大蛇行が終了した2005年ほど弱くはならないと予測しています。

Fig9

図9: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mで水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測で、青線が一つ前、黒点線が2つ前の予測(先週の予測)。参考のために、8月に大蛇行が終了した2005年の大蛇行の時の時間変化を薄い線で重ねた。


  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字m,o,,が接岸傾向で、青字l,n,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、たとえば離岸傾向nが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  6. [6]三宅島水位についての解説一覧はこちら、八丈島水位に関しての解説一覧はこちら


JCOPE2Mは週2回の更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。
 


美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。