「ちきゅう」のための海流予測4 (3) 潮の満ち引きで流れゆらゆら

この記事は「ちきゅう」のための海流予測4の連載第3回目です。

支援船「あかつき」登場

「ちきゅう」から10月19日12時から11月2日12時までの海流の観測データが届いたので、今回はそれを見ていきます。これまで予測しているように、黒潮大蛇行で掘削地点では流れが弱く、作業が順調に進められているようです。

図1の赤線は、10月19日12時から19日午前9時までの「ちきゅう」の位置です。10月13日に掘削地点に到着以来、掘削地点(点線の緯度・経度の交点)で作業を継続しています。「ちきゅう」の作業内容に関しては「ちきゅう」公式twitterをご参照ください。

図1の背景は予測モデルJCOPE-T DAで推定した海流で、灰色の陰影で海流の流れの強さ、流線で流れの向きを表現しています。現在は黒潮が南に大きく蛇行して流れています。「ちきゅう」の掘削地点は大蛇行にともなう時計回りの海流の渦の中にあり、下で観測値をしめすように、流れが弱い所になっています。

今回の観測には支援船も参加しています。支援船は、「ちきゅう」に紀伊半島の新宮港から物資を補給したり、「ちきゅう」の上流から強い海流が来ないかを警戒したりすることで、「ちきゅう」の観測を助けます。前回もご紹介した支援船「第八明治丸」の航路を青線で、今回の期間から加わった「あかつき」の航路を緑線で、図1にしめしました。「第八明治丸」と「あかつき」は、掘削地点の「ちきゅう」の側にいるか、掘削地点と新宮港を結ぶ線上にいます。

Fig1

図1: 2018年10月19日12時から11月2日12時日までの「ちきゅう」(赤線)と「第八明治丸」(青線)、「あかつき」(緑線)の航路。背景は予測モデルJCOPE-T DAで推定した水深15mの期間平均の海流で、灰色の陰影で海流の流れの強さ(ノット)、流線で流れの向き。点線の緯度・経度の交点が掘削地点。

 

「ちきゅう」公式twitterより


 

掘削地点での流速

図2の薄い青線は、海流予測モデルJCOPE-T DAで予測した掘削地点の流速(15m深)です。毎日更新される予測をすべて図にしているので、複数の線があります。黒潮大蛇行のために流速は弱く、1ノット前後の流速を予測しています。前回は流速がさらに小さくなると予測していました。

図2の黒太線は、掘削点で(15m、ドップラー流速計)の「ちきゅう」が実際に観測した流速です。実際の流速は小さくならず、むしろやや大きくなって最終的には予測よりも少し大きな流速になっています。結果として前回ではあった予測と観測差が縮まっています。10月19日から11月2日までの予測の平均値は0.89ノット、観測値の平均は0.97ノットでした。

予測では流速が2ノット近くまでこれから上昇するとしています。図3は予測サイトから11月14日の流速分布を見たものです。黒潮本流は黒潮大蛇行のために依然として遠いのですが、反時計回りの渦の強い流れが掘削地点に近づくために、掘削地点で流速が上昇すると予測しています。

Fig2

図2: 黒太線は「ちきゅう」のドップラーによる15m深の流速(ノット)の時系列。掘削地点1.5km圏内にいるデータのみをプロット。薄い青線は、JCOPE-T DAによる海面近く(15m深)の流速(ノット)予測結果。毎日更新される予測をすべて重ねた。横軸が時間で、例えば「10/19」は10月19日の0時(日本時間)。縦軸が流速の強さ(ノット)。

 

図3: 予測サイトから11月14日12時(日本時間)の流速を見たもの。色が流れの強さ(ノット)。黒矢印(ベクトル)も流れの強さ(ノット)と向きをしめす。白い羽根は風速と風向をしめす記号。

潮の満ち引き

図4は、図2を10月28日から11月1まで拡大した図です。予測でも観測でも1日に2回上下しているのは潮汐(潮の満ち引き)の影響です。2016年4-5月の紀伊半島沖熊野灘365次航海の時のように黒潮の流れが強いときはこのような変化は目立ちませんが、今は黒潮大蛇行で黒潮の影響が弱いので、潮汐による流れの変化がよく見えています。

Fig4

図4: 図2を10月28日から11月1まで拡大した図。

 

 


美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。