2019年7月の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。予測通り、黒潮大蛇行が続いています。

予測と実際(長期予測)

今回は6月26日号の、6月20日から予測した7月26日までの結果を検証します。6月20日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1左は、6月20日から予測した7月26日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる7月26日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、6月20日から7月26日までのアニメーションにしたものです。

7月26日の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。伊豆諸島付近では八丈島の北を流れる流路が続くと予測しており、それも当たっていました。

6月26日号では、8月以降に大蛇行から反時計回りの渦がちぎれる可能性があると予測しました。7月末には渦がちぎれそうな傾向がはっきりしてくると予測していましたが(図1左A)、実際はまだそうなっていません(図1右)。また、渦がちぎれそうになるとともに黒潮大蛇行が変形するため、伊豆半島沖で離岸すると予測していましたが(図1左B)、実際はそうなっていません(図1右)。ただし、6月26日号の予測ほど大きくないものの、渦がちぎれるという予測は今週の長期予測でも続いています。

Fig1

図1: [左]6月20日から予測した7月26日の予測値。[右]観測値を取り入れて推測した7月26日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 6月20日から7月26日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、6月26日号の6月20日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。この期間はほぼ横ばいを予測していました。実際(黒線)に、ほぼ横ばいでした。

黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年[2]たっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上3番目の長さの黒潮大蛇行になっています(「黒潮大蛇行が過去3番目の長さに」)今回より長い大蛇行は30年以上前の1981-1984年(約2年7か月)までさかのぼります。

Fig3

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が6月20日から7月26日までの予測。参考のために前回の大蛇行が終了した2005年の時間変化を薄い線で重ねた。

予測と実際(短期予測)

今回は先週の7月21日から予測した7月28日の予測を検証します。図4上段は、7月21日から予測した7月28日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる7月28日の状態です。

黒潮の流れはおおよそ予測できていました。四国と紀伊半島沿岸の温度は予測と実際に違いが見られます。

Fig3

図4: [上段]7月21日から予測した7月28日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した7月28日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。青は八丈島の位置。

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。
  2. [2]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。