Seasonal Prediction

 エルニーニョもどきは熱帯太平洋における大気海洋相互作用現象として同定され、その時空間特性とテレコネクションパターンは従来のエルニーニョ南方振動(ENSO)とかなり異なることが明らかになってきました(Ashok et al. 2007; Weng et al. 2007; Ashok and Yamagata 2009)。「エルニーニョ」は東太平洋赤道域に暖水を伴う従来のエルニーニョ現象を指す用語として用いられてきました。しかし、エルニーニョもどきの場合は東太平洋赤道域は影響を受けず、赤道太平洋の東部と西部では海面水温が低下し、それらに挟まれた熱帯太平洋中部で海面水温が上昇します(図1)。エルニーニョもどきの対に相当するラニーニャもどきは赤道太平洋中部で海面水温が低下し、赤道熱帯太平洋の東部と西部では海面水温が上昇します。エルニーニョもどきとラニーニャもどき、これら二つの現象を総称してENSOもどきと呼びます。最近の研究ではENSOに比べてENSOもどきは近年顕著になり、太平洋赤道域からのテレコネクションも変わりつつあるという報告もあります。さらに、エルニーニョもどきに付随する十年スケールの海面水位の変化は中央太平洋の島々だけでなく、カリフォルニア沖やインド洋の南西部などの離れた地域にも影響を与えていることが分かってきました(Behera and Yamagata 2009)。

El Nino Modoki 01 El Nino Modoki 02

Figure 1: Schematic diagrams of El Nino Modoki and La Nina Modoki the two phases of ENSO Modoki.

 ENSOとENSOもどきはそれぞれ海面水温偏差のEOF第1モードと第2モードとして捉えられます。海面水温変動の約45%を説明するEOF第1モードはエルニーニョの特徴を抽出します。一方、第2モードは海面水温変動の約12%を説明し、太平洋赤道域に東西の三極構造を持ちます。この第2モードでは太平洋赤道域の東部と西部の海面水温偏差は同じ符号を持ち、太平洋赤道域の中央部では逆の符号を持ちます。このような第1モードと第2モードの違いのため、Nino3インデックスと第2モードの主成分はほとんど相関を持ちませんが、Nino3と第1モードの主成分は高い相関関係を持ちます。Ashokら(2007)は海面水温偏差に現れるENSOもどきを捉えるために、ENSOもどきインデックス(EMI)を考案しました。

El Nino Modoki 01

 右辺の3つの項は領域A(165°E-140°W, 10°S-10°N)、B(110°W-70°W, 15°S-5°N)、C(125°E-145°E, 10°S-20°N)のそれぞれの領域平均した海面水温偏差を表します。

 ENSOもどきは明瞭なテレコネクションを示し、世界各地の天候に影響を与えます。例えば、エルニーニョのときはアメリカの西海岸では雨が多くなりますが、エルニーニョもどきのときは雨が少なくなります(例えば、Weng et al 2008)。最近の研究によれば、ENSOもどきに付随するテレコネクションはインドと南アフリカの降水に影響を与えることが報告されています(Ratnam et al. 2010; Ratnam et al. 2011)。