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海の多様性に迫る

私たちは,海洋生物の多様性(種/系統・機能・生態系)を把握すると共に,その多様性を創出する進化のプロセスとメカニズムを理解することを目標にしています.人類の持続的繁栄のためには,海の生物多様性を理解することが大切です.生物は,真核生物・バクテリア・アーキアに分けられます.真核生物は,原生生物や真菌類から高等動植物にいたる高い多様性があり,海洋生態系において重要な役割を担っています.海には,科学的な知見が極めて少ない極限環境があります.例えば,地球上最大の生命圏の一つである深海,酸素が乏しい環境,熱水噴出域・メタン湧水域・動植物の遺死骸域といった深海化学合成生態系がある環境です.

真核生物は,有光層以深が還元的であった原生代に誕生し,地球史を通じて出現した新たな生態的地位(ニッチェ)への適応や共生により多様化してきたと考えられています.極限環境を含めた様々な海洋環境を調査対象とすることは,真核生物の進化のプロセスとメカニズムを理解する上で重要です.極限環境である深海には,多様性を考える上で未着手な現象があります.最近,トップ・プレデター(頂点捕食者)が,生態系の構造や機能を維持する上で重要な役割を果たしていると考えられるようになりました.しかし,深海域ではトップ・プレデターの知見そのものが少なく,その重要性を議論する前段階にあります.そこで私たちは,深海域におけるトップ・プレデターの多様性と生態を理解し,新たな海洋生態系像を描くことを目指します.そして,このような極限環境の研究には,さまざまな技術開発も必要です.

私たちは,極限環境をターゲットとし海洋生物の多様性と多様化のプロセスに迫ります.そして,人類の持続的繁栄のために,多様性応答予測やイノベーションの創出にも貢献したいと思っています.

真核生物における多様性創出メカニズムの理解

概要
 海洋生物の多様性(種/系統・機能・生態系)を把握すると共に,多様性を創出するプロセスとメカニズムを理解する.得られた結果は,環境変動への多様性応答予測やイノベーションの創出に貢献する.

生物の3ドメインの1つである真核生物は,原生生物や真菌等で構成される単細胞性微生物から高等動植物等の多細胞生物にいたる高い多様性を有し,海洋生態系において重要な役割を果たしている. 真核生物の誕生および多様化を促した大きな要因として,地球環境変動や地球史を通じて出現した新たなニッチェへの適応や共生が挙げられる.未踏領域を含む海洋環境や室内に再現した極限環境において未知系統の真核生物を探索し,真核生物特有の共生現象の仕組みやその進化を把握することによって,真核生物の誕生・多様化創出メカニズムを明らかにする.

  • 真核生物が誕生および多様化した原生代に普遍的に存在した還元環境を中心に新規系統真核生物を探索,および該当生物の形態学的・生理生化学的・生態学的特徴を把握
  • 共生において細胞中に異種細胞が(取り込まれ)維持され次世代へ伝えられる仕組みやその進化,そして背景となる環境要因を把握

 5カ年の目標として,これらにより得られる知見を統合し,共生や環境変化によって駆動される真核生物の進化・多様性創出に対するシナリオ,つまり「どのような環境で真核生物は誕生し,どのような環境で種分化を繰り返し,進化してきたことによって現在の真核生物の多様性はあるのか」について提唱,得られた情報も加味し,生物多様性データベースの構築と統合解析に資するようにする.

 今年度は,公募航海を実施し共生菌の伝達や取り込みに関して主に遺伝子発現解析などを行う.
また還元環境などでの新規真核生物の探索,有孔虫における地域集団間の遺伝的関係の把握を行なう.

深海域におけるトップ・プレデターの解明

概要
 海洋生物の多様性(種/系統・機能・生態系)を把握すると共に,多様性を創出するプロセスとメカニズムを理解する.得られた結果は,環境変動への多様性応答予測やイノベーションの創出に貢献する.

 近年,生態系の構造や機能の維持に,トップ・プレデター(頂点捕食者)が重要な役割を果たしていることが知られるようになった.しかしながら深海域においては,トップ・プレデターに関する情報が非常に少なく,その多様性やバイオマスなど基礎的な情報が大きく欠如しており,トップ・プレデターの重要性を議論する前段階にある.そこで本研究では深海域に生息するトッププレデターを対象として,以下の課題を実施し,新たな深海生態系像を描くことを目指す.

(1)安定同位体比解析により栄養段階の測定を行い,トッププレデターを特定
(2)形態観察や分子系統解析により,特定海域におけるトップ・プレデターの多様性を把握
(3)集団遺伝学的手法によりトッププレデターの有効個体数(Ne)を推定
(4)バイオトラッキングによりトッププレデターの行動範囲を求め,個体群密度を推定
(5)これらを実施するための技術開発.

以上により求めたデータから下位栄養段階生物のバイオマスを算出して先行研究と比較,統合することにより,真の深海生態系の姿を捉えることが可能となり,生態系や資源の持続的利用のための貴重な基礎情報を提供できる.

 今年度は,主に相模湾や駿河湾の既存試料を用いた栄養段階の特定およびin-situバイオプシーシステムやバイオトラッキングシステムの開発に取り組む.また本研究により開発したシステムを国際共同研究により各海域に展開し, グローバルスケールでの深海生態系の理解を目指す.加えて,取得した情報は生物多様性データベースの構築と統合解析に資する.

コンタクト・アクセス

海洋生物多様性研究分野
国立研究開発法人海洋研究開発機構
〒237-0061 神奈川県横須賀市夏島町2番地15