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深海において,ホネクイハナムシ類が海底に沈んだ脊椎動物の骨の主要な分解者であることはよく知られています.有人潜水調査船「しんかい6500」による潜航調査で,南西大西洋,水深4204mより発見した世界最深記録の鯨骨生物群集をよく観察すると,骨によってホネクイハナムシ類が分布しているものとそうではないものがあることがわかりました.そこで,ホネクイハナムシ類の有無が骨に集まる生物相にどのような影響を与えるのかを調査しました.ホネクイハナムシ類が生息していない脊椎骨は骨がよく保存されており,骨の表面には,骨の分解過程で滲出する硫化水素を利用する化学合成細菌がマットを形成し,そのマットを餌とする表在性の動物が数多く出現しました.反対に,ホネクイハナムシ類が出現した脊椎骨は激しく分解され,硫化水素を利用する生物が出現せず,ホネクイハナムシ類のいない骨とは異なる表在性の動物群が出現しました.ホネクイハナムシ類がいない骨では出現する動物の77%がセンチュウ類で,骨の最表層のみに分布していました.ホネクイハナムシ類が分布する骨は内部まで分解が進み,骨の空隙に暮らす内在性の動物が多く出現しました.ホネクイハナムシ類がいない鯨骨に比べ,ホネクイハナムシ類が分布する骨では個体数で3倍(100立方㎝あたり1800個体),種数で2倍(16種)の動物が出現しました.ホネクイハナムシ類のいる鯨骨ではセンチュウ類(全動物数の52%)に加え,ゴカイの1種Capitella iatapiuna(同39%)が多く出現しました.加えて,ホネクイハナムシ類の分布する鯨骨からは多くの希少種が出現しました.ホネクイハナムシ類の侵食によって骨内部まで海水が浸透し,それによって硫化水素などの滲出量が低下したことや骨の内部構造が複雑になることが骨内部への生物の定着に影響を与え,生物多様性に影響を及ぼしたのではないかと推察しました.以上の結果から,ホネクイハナムシ類は深海鯨骨生物群集の生物多様性を高める重要な生態系エンジニアであることがわかりました.

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0967064517301297