深海生態系研究チーム このチームについてメンバー研究紹介活動研究成果ギャラリー

研究紹介

【1】原生生物の多様性および進化に関する研究

【2】日本近海の高い生物多様性

【3】シロウリガイ類の繁殖生態

【4】深海化学合成生態系の食物連鎖:ツブナリシャジクを例に

【5】極限環境に適応した動物のセンシングおよび認識能力の解明

【6】環境圧力応答の分子メカニズムの解明—圧力生理学の展開—

【7】巨大地震後の海洋生態系を観る

【8】深海環境における微生物学的多様性の解明

【9】動物プランクトンと海洋の物質循環

【10】深海生物生息域の物理環境の計測

【11】深海微生物の有用性に関する研究

【12】深海熱水噴出域生物群集は,どこから来てどこへ行くのか

【13】受託研究


【1】原生生物の多様性および進化に関する研究

 動物や植物といった人間の目に見える生物は,真核生物(バクテリア等とは異なり細胞核を持った生物)の多様性の中のごく一部に過ぎません.真核生物の本当の多様性は,顕微鏡を使って初めて見ることが出来る単細胞性の真核生物,つまり繊毛虫や鞭毛虫のような原生生物の世界に広がっています.我々は海洋環境における原生生物の多様性,進化そして生態に焦点を当て,多角的アプローチ(遺伝子解析,代謝産物解析,形態観察等)によって研究を進めています.深海や酸素が存在しない特殊な環境等に生息する新奇な原生生物の探索も行っています.

 図1 真核生物の系統関係

【2】日本近海の高い生物多様性

  国際プロジェクト海洋生物のセンサスCensus of Marine Life: CoMLの一環として,日本近海にはどれくらいの生物種がいるのかを評価しました.そして,日本の200海里以内(日本近海)には,バクテリアから大型哺乳類をあわせると,33,629種が科学的に認識されていることがわかりました.これは,全海洋生物種25万種の13.5%を占めます.日本近海の容積は全海洋の0.9%にしか満たないのですが,その小さな容積に多くの生物種が生息していることになります.種の多様性からみれば,日本近海は生物の宝庫なのです.


図2 海洋生物の出現種数比較.
さらに詳しく

【3】シロウリガイ類の繁殖生態

 深海化学合成生態系を代表する構成種であるシロウリガイ類 Calyptogena soyoae / okutanii の繁殖生態を明らかにするために,相模湾初島沖の湧水生物群集に設置してある長期観測ステーションのデータを解析しました.
 そして,シロウリガイ類の放卵放精は,
・オスは水温のわずかな上昇をトリガーにして放精すること
・オスは水管を回転させるようにして精子を広く放出すること
・長期観測ステーションで観察できる範囲では,年間に放卵は約90回,放精は約200回と見積もられること
・メスの放卵は放精後約10分以内で流速が遅いときにのみ起こること
・相模湾初島沖シロウリガイ類個体群の年間放卵卵数は約5.8×108個であることがわかりました.

 図3 シロウリガイ
 さらに詳しく

【4】深海化学合成生態系の食物連鎖:ツブナリシャジクを例に

 相模湾初島沖の湧水生物群集に固有な腹足類ツブナリシャジクPhymorhynchus buccinoidesは,同所に生息する二枚貝ヘイトウシンカイヒバリガイBathymodiolus platifronsを専食し,貝殻表面を産卵場所としています.そのために,ツブナリシャジクはヘイトウシンカイヒバリガイが固着する特定の露頭に生息しています.しかし,ヘイトウシンカイヒバリガイは,沖縄トラフの熱水噴出域にも生息していますが,そこにはツブナリシャジクは分布していません.したがって,食性や産卵基質だけではツブナリシャジクの分布を規定する要因は説明できないことがわかりました.  

図4 ツブナリシャジクPhymorhynchus buccinoides
さらに詳しく

【5】極限環境に適応した動物のセンシングおよび認識能力の解明

 深海底の熱水が噴出する場所では,高温であるために鉄やマンガンなどの重金属が溶け,硫化水素などの他の動物にとって致死物質が充満しています.その最近縁部に生息するゴカイの仲間である「パラアルビネラ」は最も過酷な環境に適応した動物の一種です.その体には硫黄の粒子が付着しているために黄色に発色します.「花」のような部位には感覚子が密集していわゆる化学センサーの役割を果たしています.私たちはこのような極限環境に適応した動物に注目し,有害物質や重金属イオンに対するセンシング機能の進化,遺伝子の構造,生理学的な特性の理解を通して,最終的には耐性能力を持った高感度バイオセンサーの素子を提供するための研究を行っています.

図5 高熱かつ有毒環境に耐性を持つ動物パラアルビネラ(Paralvinella hessleri Desbruyeres & Laubier, 1986)

【6】環境圧力応答の分子メカニズムの解明-圧力生理学の展開-

 深海生物が高圧環境に適応して生きていくためには,その環境圧力を認知して遺伝子発現のスイッチをオン・オフする分子メカニズムが存在しています.深海高水圧環境に適応している好圧性微生物を材料としたこれまでの研究結果から,加圧応答する遺伝子発現のメカニズムについて知見が増大しています.また一方,大気圧下に適応した微生物における加圧応答の分子機構の解析も進んでいます.本テーマでは,タンパク質における圧力適応の分子的なメカニズムや構造に関する総合的な理解を目指しています.

図6 環境圧力応答の分子メカニズムの図

【7】巨大地震後の海洋生態系を観る

 東北地方太平洋沖地震及び巨大な津波は,三陸の海洋生態系を激変させました.事実,これまでの調査で,海底の亀裂,メタンの湧出とバクテリアマットの形成など様々な変動がとらえられています.このような巨大自然現象による海洋生態系へのインパクト,その後の再生・回復過程を知ることは,海洋生態系研究に携わってきた我々の使命です.また,三陸沿岸から沖合にかけては世界三大漁場といわれるほど豊かな水産物を人類に供給してきましたが,今回の地震・津波は,漁業設備の破壊や漁場への瓦礫・化学物質の蓄積といった被害ももたらしています.そこで,我々は科学的目標として,
・海洋生態系に対する巨大地震の影響を記録
・巨大地震からの海洋生態系再生プロセスやメカニズム解明
社会的目標として,
・三陸水産業の復興や持続的漁業へ貢献に資する研究を展開しようとしています.

【8】深海環境における微生物学的多様性の解明

 深海底のプレート境界域に分布する微生物生態系は地殻活動と直接的に関わっています.本研究では現場に棲息する微生物学的多様性の解析を行い,そうした微生物相とプレート活動,地殻活動との相関性について解析を行っています.これまでに,地殻活動に相関する微生物群とその役割についての知見が集積し,今後はこうした微生物群の存在と地震活動との相関について詳しい解析を試みる予定です.特に2012年度は3.11東日本大震災の震源域である日本海溝を重点海域として調査する予定です.

図7 プレートテクトニクス(日本海溝)の図

【9】動物プランクトンと海洋の物質循環

 地球温暖化に最も大きな影響を与える温室効果ガスは二酸化炭素であり,炭素の環境中での挙動を知ることは,地球温暖化プロセスの理解に欠かせません.海洋表層で植物プランクトンに固定された炭素は,その後,食物連鎖によって上位の捕食者に運ばれたり,動物の鉛直移動によって深層に輸送されたり,海洋生態系内を循環します.私たちは,動物プランクトンのはたらきに焦点をあて,群集構造・鉛直移動・摂餌速度・食物網構造などに関する研究を行っています.調査は西部北太平洋の亜寒帯域(北緯47度)および亜熱帯域(北緯30度)に設けられた観測点で行い,動物プランクトンが持つ両海域の炭素循環へのインパクトを比較します.
E.pacifica2.jpg
図8 昼夜鉛直移動者ツノナシオキアミ

【10】深海生物生息域の物理環境の計測

 深海に生息する生物は,どのような環境下に生息・分布しているのでしょうか?また,それらの卵や幼生は,何処まで分散・輸送されるのでしょうか?深海生物の生息域付近における海水の流れや水温の変動は,深海生物の分布や幼生分散を規定する重要な物理環境要因です.そこで,深海の物理環境の特性を,超音波流速計を用いた流れの現場観測や,既存の物理環境データの解析から明らかにすることを目標に研究を進めています.特に,深海特有の生物が生息している熱水噴出域や湧水域の流れの周期性や長期変動に着目し解析を進めています.

【11】深海微生物の有用性に関する研究

 深海底は,人間活動がもたらす廃棄物の最終処理場です.事実,深海の調査をしていると,いたるところにゴミが集積している様が観察されます.本テーマでは,特にプラスチック製廃棄物に着目して,プラスチック様バイオポリマー(BPs)の分解に関わる微生物の探索を行い,現在開発が著しい生分解性プラスチックに関する深海環境での分解評価の系を立ち上げる事を目標としています.あわせ,新規BPs生産菌などの探索を行い,深海微生物の有用性を明らかにします.

図9 深海底のゴミ

【12】深海熱水噴出域生物群集は,どこから来てどこへ行くのか

 深海熱水噴出孔は,世界中の海底拡大軸や海底火山列などに沿って断続的に分布しており,ほとんどの場合,豊富な生物群集を伴っています.この生物群集は海底火山の爆発などによって失われたり,また新たな熱水活動の開始によって形成されたりします.生物群集の多くは,深海熱水噴出孔の周辺環境に特化した生物で構成されています.つまり,深海熱水噴出域の生物群集は,受精卵あるいはプランクトン幼生の時期に海流に乗って深海底に断続的に分布する熱水噴出域を渡っていく必要があります.私たちは国内外の研究者と連携しながら,幼生の生態学的特徴とDNA塩基配列情報を基に,深海熱水噴出域の生物群集がどこから来てどこへ行くのか,を調べています.

図10 深海熱水噴出域の生物群集

【13】受託研究

このページの先頭へ

Copyright © Deep-Sea Ecosphere Research Team. JAMSTEC