研究紹介(受託)
【1】海洋生態系における生物多様性損失の定量的評価と将来予測
環境省では,アジアにおける生物多様性の現状を評価し,その損失を防ぐための政策提言を行うことを目標として,アジア規模での生物多様性観測プロジェクト(S9)を実施しています.私たちは本プロジェクトの海洋チームに属し,我が国周辺の重要な海洋生態系である沿岸生態系(アマモ場・藻場・サンゴ礁),外洋表層生態系および深海化学合成生態系を対象として,生物多様性劣化の定量評価と将来予測を目標に研究を進めています.その成果をもとに,生態的および生物学的に重要な海域(EBSA)の候補地を選定して保全と回復の方策を提案します.
図1 海域環境に応じた保全と回復の方策を提案するまでの解析フロー
海底熱水鉱床は,金属資源として有望視されているもののひとつです.しかしながら,その多くは深海底に分布しており,鉱床の採掘に関する技術開発が必要であると同時に,採掘が行われた際に普段の私たちの生活では目にすることのない深海生態系への影響が懸念されています.深海生態系は独立した生態系ではありません.深海生態系への影響は,めぐりめぐって私たちの生活に影響を与える可能性もあります.JOGMEC(石油資源開発機構)は,深海熱水鉱床開発に先立ち,熱水鉱床周辺に形成されている生態系を理解するための環境ベースライン調査を行っています.私たちは,この調査に協力しています.
【3】東北マリンサイエンス
東北マリンサイエンス拠点形成事業「海洋生態系の調査研究」とは,文部科学省の海洋生態系研究開発拠点機能形成事業費補助金制度により,東北大学,東京大学大気海洋研究所,海洋研究開発機構が中心となって実施する事業で,TEAMSはその英語名称(Tohoku Ecosystem-Associated Marine Sciences)の略称であり,その実施体制でもあります.TEAMSは,海洋科学技術分野のオールジャパンの研究者の力を結集し,対象海域の物理・化学的環境と生物動態について総合的に調査研究し,海洋生態系の変動メカニズムを解明することで,漁場の設定や資源量予測に資する科学的知見やデータを提供することを目的としています.