


寒天の材料テングサなどの紅藻類は、海の大型藻類の6割を占めています。ただ、人間はまだ食用などの限られた利用しかしていません。近年、たとえば寒天を分解して得られる寒天オリゴ糖は、人の体に作用するいい機能をたくさん持っていることが分かってきました。制がん、活性酸素産生抑制、抗炎症、免疫機能活性化、メラニン産生抑制、保湿、肝障害改善などです。だから、健康食品としてあらためて注目を集めているし、医療や工業への応用も期待されています。

ところで紅藻類の細胞壁には、アガロースという多糖の一種が多く含まれていて、寒天の主成分もこのアガロースです。寒天の中のアガロースが酵素によって分解されて、健康食品として注目される寒天オリゴ糖になります。アガロースはそのままでは人間の体では分解できない種類の多糖ですが、オリゴ糖に分解すれば細胞の中に入っていきます。つまり、アガロースを分解する酵素のパワーによって、紅藻類の持ついい機能を引き出すことができるのです。この酵素、アガロースを分解して寒天オリゴ糖にする酵素、それがアガラーゼです。従来、寒天オリゴ糖を効率良く生成できるアガラーゼは見つかっていなかったので、もし発見できれば紅藻類の高度利用につながる。私たちのチームはここに注目しました。

実は私たちが研究の対象にしている深海は、さまざまな意味で特殊な環境の中で生物たちが暮らしています。そのひとつが、光が届かず光合成はできないので、限られた栄養をいかに効率良く利用するかの世界だということ。そしてもうひとつが、超高熱環境や超高圧環境に適応した生物が存在する世界だということ。120℃という熱水の中で増殖するものさえいる、生命が依存する環境がかなり異なる世界です。地上とはもちろんまったく違うし、浅い海の中の環境とも大きく違う。そういう環境には、おそらく、新規性の高い微生物が持つ新規性の高い酵素、高い耐熱性をしめす酵素も存在するはずです。

ここで、なぜ耐熱性が大事かと言うと、寒天は40℃以下の低温だとゲル化して酵素であるアガラーゼの反応が鈍くなるため。だから寒天を高い温度で保ってゲル化しないようにしながらアガラーゼを働かせたいのですが、高温でも酵素としての活性が落ちないものは見つかっていませんでした。また高い温度でなら時間が短くてすみ、目的とは違う別の反応が生じるのを防ぐことにもなるので、なおさら耐熱性に優れたアガラーゼが見つかればいいということです。

テングサ



海底の熱水活動

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