


そこでJAMSTECが所有する「しんかい6500」が駿河湾へ潜り、水深2,406mの海底から泥を採取して調べたところ、いままで見つかっていないいろんな種類のアガラーゼ生産菌を見つけることができました。・・・まず、海底から持って来た泥のサンプルを集積培養し、そこで得た微生物群を寒天培地に乗せると窪みができます。それはアガラーゼ生産菌がいるという証拠です。・・・次に、窪みの微生物群からターゲットとなる種類を分離して解析します。するとその中に、そこは駿河湾の深海底ではあったがけっして熱水環境から採取してきたサンプルというわけではないのに、52℃の高温まで生育できる菌株 Microbulbifer sp. strain A94 が得られたのです。

菌株 Microbulbifer sp. strain A94 の菌の中には、どんなアガラーゼがあるのか。JAMSTECで開発された技術でA94株から遺伝子を分離、それを使ってアガラーゼを生成し、解析しました。その結果は、A94株の遺伝子から生成したアガラーゼを60℃で15分間処理した後でも高いアガロース分解活性が残り、反応の最適温度は55℃をしめすというものでした。さらにこれで寒天を分解してみると、ネオアガロ4糖という、ガラクトースとアンヒドロガラクトースが交互に結合した構造を持つ糖が高い選択性で生成することが分かり、工業生産にも有用であると判断できたのです。2004年に特許を申請し、2009年に4441486号として登録されました。これが耐熱性βアガラーゼであり、JAMSTECオリジナルの技術により大量生産にも成功しました。

特許申請後その情報が公開されると、複数の会社から問い合わせが来ました。株式会社ニッポンジーンはその中の1社です。ニッポンジーンは日本の代表的な研究用試薬メーカーのひとつで、ゲノム解析に使うアガロースゲル電気泳動用の寒天も主力商品となっています。その電気泳動用寒天の関連商品である試薬として製品化したいという提案でした。

アガロースゲル電気泳動は、中性の条件で電圧をかけると、寒天(アガロースゲル)の中を負に帯電したDNAやRNAが正の方向へ分子量の違いで異なる距離を移動することを利用した分析方法で、寒天を切り出すことによって目的のDNAやRNAを得ることができます。その後の処理として、アガラーゼで寒天(アガロース)を分解する方法では、物理的損傷の少ないDNA溶液を回収できます。この、切り出したアガロースゲルを分解する反応はアガロースゲルが融解している状態で行なうことが効率的であるため、反応中のアガロースが凝固しない高い温度で強力なアガロース分解能をもつアガラーゼが有効です。株式会社ニッポンジーンは、扱っていた自社アガラーゼも市販されていた他社製品も、耐熱性やアガロース分解能などの機能は十分ではなく、寒天を分解してDNAを回収する方法は改善の余地があると見ていました。




ネオアガロ4糖
寒天(アガロース)を分解してDNA溶液を回収する方法


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