


同社からは2007年初め頃にアプローチがあり、12月に技術実施許諾契約して共同開発に入り、2009年3月に製品を発表しました。契約から製品化まで1年ちょっとというスピードでした。実は研究用試薬は利用者の数が限られ、さらにさまざまな製品が利用される傾向があるため少量多品種展開となり、開発に時間とコストをかけることがむずかしいのです。その中で製品化の決め手になった材料のひとつが、すでにJAMSTECが開発していたタンパク質大量生産システムであり、この技術ですでに耐熱性βアガラーゼの大量生産にも成功していたことです。さらにチームから技術指導もおこなって、大きな困難にぶつかることなく製品化へと至りました。

このように、耐熱性βアガラーゼは研究用の試薬として製品化されました。売り上げは順調であり、これまでに「市販されていた既存の類似製品に置き換わり得るもの」という高い評価があります。また、こんな酵素を開発したJAMSTECで研究したいという、開発者としてとても嬉しい声が届いています。製品発表後、海外の類似の研究が活発になっている形跡も見られます。私たちには最初、試薬として製品化する意図はありませんでした。紅藻類の高度利用に役立つ酵素の発見にそのイメージはなかったのです。あらためて感じるのは、いいものを作れば、それが持っている利点を私たちが気付かない角度から見てくれる人がいるということです。今日、産業のさまざまな分野でDNAを使った研究は欠かせないものになっています。その時間や労力を大幅に低減し、かつ分子量の大きいDNAを回収して遺伝子の解析を容易にする製品を産み出すことができました。ということは、深海の未知の物質には私たちの予想を超えた可能性が秘められているということではないでしょうか。耐熱性βアガラーゼのストーリーはこのことを意味していると思います。

また、今回の製品開発は、研究用試薬のメーカーにとって提携しやすいレベルにまで仕上げていたことが大きいと思います。たんに研究用試薬の市場だけでなく、他社と競争している企業にとって開発のスピードやコストは死活的な要素。生産ラインに乗せるための新たな技術開発や設備投資をできるだけ抑えて製品を世に送り出すことが求められています。それができれば結果として人の生活に役立つことにつながります。海底から未知の有用物質を探索するということ、そしてそれを大量生産する方法をあわせて開発しておくということ。この2つのオリジナル、JAMSTECだから可能だった独自の2つの技術がドッキングして生まれたのが今回の成果だったと言えます。
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耐熱性βアガラーゼ カタログ

耐熱性βアガラーゼ

潜航中のしんかい6500から見たマニピュレータ

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