牧田 寛子

Hiroko Makita Ph.D.
技術研究副主任
白衣姿がよくお似合いで、金属・サビが大好き、そしていつも動向を把握しておかないとすぐに航海に出てしまって聞きたい事も聞けなくなってしまうので要注意の牧田さん。今回もお忙しい中、トレードマークのにこやかさでインタヴューに応じて下さいました。

★ 牧田さん、私の気のせいか牧田さんは頻繁に航海に出られているように感じるのですが、実際どの位の頻度で乗船されていますか?

    そうですね、2010年は多くの航海に参加させて頂きました。自ら課題提案した航海を入れてなんと5回も参加していました。大体、2・3ヶ月に一回のペースで乗船していましたね。言われてみると、結構なペースですね!

★ では、牧田さんをそこまで航海へと駆り立てる「研究のテーマ」を教えて下さい。

    深海には、その場所ごとにキープレーヤーとなる微生物がいるのですが、それらを単離・培養して、その生態の詳細を調べています。現在は主に、鉄・マンガン酸化細菌や硫黄不均化細菌そして大型生物に共生している細菌についての研究を行っています。私が特に力を入れているのは鉄を利用する微生物の研究です。深海・地殻内といった環境では、鉄や硫黄などの無機物をエネルギー源とする微生物がその場の生態系を支えるうえで重要な役割を担っていると考えられます。鉄を利用する微生物は、物質循環に大きな影響を及ぼす存在であると予想されているにも関わらず、培養が困難であるために種類、存在量、活性など、その生態についてほとんど明らかになっていないのが現状です。この未知の微生物について(微)生物学、生化学、同位体化学、電気化学などの手法を駆使して全貌を明らかにしたいと思っています。そんなことから、目的の微生物が生息している場所(例えばマリアナや沖縄、インド洋など)に行き、船酔いをしながら研究試料となるチムニーや鉄酸化物、そして大型生物(貝)などを採取しています。

★ なるほど、牧田さんの研究者魂を思い知りました。その情熱の源は?

    微生物が好きなんです・・・! 本格的に「微生物が好きかも・・・。相当好きかも!」と決定的に自覚したのは、大学3年生の時です。母校では、3年生から研究室に所属することができました。その時のテーマが「微生物由来のヒスタミンオキシダーゼの研究とその応用」でした。はじめに行った事は、土壌中からヒスタミンオキシダーゼを産生する糸状菌や細菌の単離を行うことでした。各地の土を寒天プレートに塗布し培養することにより、そこに色とりどりのコロニーがたくさん出来ているのを見たとき、とても美しいと思いました。まるで空に輝く星々のように見えるコロニーの一つ一つは異なる微生物からなり、それぞれ別の機能・機構を持っている事を体感して感動したのを覚えています。研究室に所属するまでは、学生実験を含めて微生物を扱うことは全くなかったため、とても衝撃的でした。その時以来、微生物の神秘的な魅力にとりつかれてしまいました。特に、無機的な物質を利用して生きられる微生物に心奪われています。無機化合物から、他の生物にとっても有益な物質を作り出しながら生きていると考えると、微生物に尊敬の念すら感じます。

★ JAMSTECで働き始めた経緯を教えてください。

    学生時代、なにかと生体試料の成分分析や構造解析を行うことが多く、また新しい分析機器を扱う事も好きだったこともあり、博士課程修了後は分析機器を取り扱う会社に勤めることにしました。アメリカにある本社に日本の研究者の要望を伝え機器の改良を依頼したり、国内外の研究者とともにデータを出したりする日々は忙しくも非常に充実していたのですが、ある日ふと微生物が恋しくなってしまいました。その後、JAMSTECの技術スタッフとして職を得て、現在はポスドク研究員となりました。再び微生物を自らの手で扱えるようになって、とても嬉しいです。特に嬉しいのは、微生物が何をしているかを明らかに出来た時です。私は好奇心が強く、なぜ?何をしているのだろう?と興味が尽きません(笑)。自分が一番好奇心をかき立てられる微生物の研究に携われることは本当に幸せです。

★ インタヴュー後の感想 by 館洞

    はっきり申し上げましょう。牧田さんは、初対面の人に(会話をしなければなおさらです・・・)「知的な美人」とか、「清楚でちょっと現実離れした感じの女性」といったイメージを与える女の人です。白衣姿ではなく普通の服装の牧田さんを街角で見かけたら、そのようなイメージを抱いて終了してしまうかもしれません。しかしお話ししてみると、彼女はそんな外見が与えるイメージ以上に独自の「寛子ワールド」をお持ちだということがわかります。本当に、彼女の面白さには脱帽です。微生物の話になるとその瞳の輝きは数倍、いやそれ以上になり、仕事としてのプロ意識からというよりは、純粋に「微生物ラヴ」なオーラを放ちながら一生懸命、かつ丁寧に微生物のこと、研究のことについて教えて下さります。いつも思いやりと向上心を持って行動される牧田さん。誰に対しても礼儀正しく、優しい対応をしようと心がける大和撫子・・・。と書くと、あまりにも牧田さんを褒めすぎではないかと言われそうですが、ここからが本題なので、ちょっと待って下さい。

    そう、完璧な人なんて存在しません。そして、私が牧田さんを好きなのは、その不完全な部分なのです。それはずばり、「不器用さ」。牧田さんが周囲に与えるお人柄のイメージと、実際の牧田さんの本質の部分が大きく異なっていて、他人から誤解されてしまうことが多いのです。これは、牧田さんご自身が能動的で、他人からどう思われているかよりも、自分が実際にどう思い、行動するかを大切にする方だということが理由かと思われます。たとえば、優しくにこやかな微笑みをたたえながら、茶色くて見るからに汚い感じのドロドロした池の写真を指し示し、「ここに私の研究している○○という微生物がいます。彼らは○○を栄養源としていて・・・」と心から愛しそうに説明されたり、また、同じく優しい笑顔で「これが私のメールアドレスです。よろしくお願いします。」と言って、いかにもイカツイ感じの細菌の名前(学名)が含まれたメールアドレスを渡して下さるといった具合です。あるいは、いかにも才色兼備のデキる女性研究員かと思いきや、結構忘れっぽかったり・・・。年に何度もハードな研究航海に出られるというのが信じられないような、か弱そうな外見にも関わらず強い信念を持ち、「以前から目をつけていた極珍微生物をゲットして来ました。これから生やしてみせます!」(with牧田スマイル)と高井PDに報告したりもします。多くの方々(高井PDも含む)が牧田さんのこうしたイメージギャップについて行けず、結果的には誤解してしまいますが、私の目はイメージだけではごまかせません。牧田さんは、純粋に微生物が大好きな、ご家族を大切にする心優しい女性なのです。ただ、微生物が好きすぎて、誤解を招くということがあるということなのでしょう。これは、ある意味彼女が不器用だとも言えるかもしれませんが、金属を食べる微生物が大好きな美人というのは、とても魅力的だとは思いませんか!?私はそんな牧田さんの大ファンです。
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