吉田 ゆかり

Yukari Yoshida Ph.D.
技術研究副主任
吉田さんは優しく朗らかで、大阪出身ですが会話の相手が関西系人でない場合は自動大阪弁キャンセルスイッチが作動します。私と同い年ということは知っていましたが、実は何の研究をされているのかも知りませんでした。言うまでもなく、インタヴューは大変興味深いものとなりました。

★ 吉田さんの実験のテーマを教えて下さい。

    深海熱水生態系に存在するウイルスの研究をしています。深海熱水生態系のウイルスについて、そのおおよその数についての報告や分離例が数報ありますが、宿主との詳細な相互関係についてはほとんど研究が進んでおらず、一体彼らが現場で何をしているのかはわかっていません。従って、新分野の研究を行っていると言えます。

★ 何と、ウイルスがテーマでしたか!もう少し詳しく教えて下さい!

    深海の熱水生態系におけるウイルスについて、主に次の2つのトピックで研究しています。

    1) これらのウイルスが、地球内部のエネルギーを使って生きている細菌(化学合成独立栄養細菌)に対してどのような生態学的影響を与えているか。
    2) これらのウイルスが宿主(細菌)内での水平伝播に関わっているか否か?(ウイルスは微生物のゲノムを取り込み、遺伝子の運び屋として機能するため。)

★ 非常にパイオニア的な研究をされているのですね。学生時代から現在に至るまでの経緯について教えて下さい。

    出身は大阪ですが、大学は福井県にある福井県立大学の生物資源学部(現海洋生物資源学部)・海洋生物資源学科へ入学しました。学部時代は湖沼で発生する有毒アオコ原因シアノバクテリアを死滅させる細菌の研究を行いました。その後、同大学の大学院に進学し、そこでは細菌ではなくウイルスに着目し、有毒アオコ原因シアノバクテリアに感染するウイルスの研究を行い、博士号を取得しました。博士課程3年時に日本学術振興会特別研究員DC2に採用され、博士号取得後はPDとして1年間出身ラボで研究を行った後、現職にいたります。

★ これまでウイルスの研究をずっと行われているようですが、なぜウイルスを選ばれたのですか?

    そもそも研究室に入るまではウイルスについて興味はありませんでした。学部3年で配属研究室を選択する時にも、海洋生物(特に大型哺乳類)の研究をしたかったのですが、相当する研究室がなかったため、学生実験で一番興味を持った微生物の研究を行っている研究室に進むことにしました。そこでは湖沼で発生する有毒アオコ原因シアノバクテリアの研究を行っていました。なかでも微生物(細菌やウイルスなど)の力を利用して有毒アオコを浄化しようという手法に惹かれ、学部時代はアオコを死滅させる細菌の研究を行いました。でも細菌に比べてウイルスの方が増殖も速くインパクトが大きいし、何より有毒アオコを死滅させるウイルスがこれまでに単離されていなかったので、なんとかウイルスを単離してやろう!!と思ったのがきっかけですね。

★ 博士号を取得しようと思われたのは?

    学部4年時にはなんとな〜くまだ研究を続けたかったので、とりあえず大学院(修士課程)へ進みました。それで有毒アオコを単離しようといろいろトライしていた修士1年の時、そのウイルスを単離することに成功しました。これは“運が良かった”の一言に尽きるのですが、この出来事でさらにウイルス研究魂に火がつきました!それで研究に本腰を入れ始めたのは良かったのですが、修士2年目の夏から秋にかけてという、博士に進むかの決断に関わる大切な時期に、ファージの研究がなかなかうまく進みませんでした。困ったなあ・・・家庭の事情もあるし、博士課程へ進もうか、迷うなあ・・・と思っていたある日、転機が訪れました!日本で赤潮藻類ウイルスの先駆者である瀬戸内海区水産研究所の長崎慶三室長のもとで、約9か月間、ウイルス学に必要な技術を習得する機会をいただいたのです。最終的には博士課程へ進むことを覚悟の上でこの研究所で修業させていただきました。こちらで習得した技術や知識を生かし、大学に戻ってからも有毒アオコに感染するウイルスの研究を続け、博士号を無事取得しました。

★ JAMSTECに応募されたきっかけは?

    学振研究員の期限が終了したら、結婚を機に横浜へ引っ越すことを決めていました。それで新たに就職先を探していたら、微生物関連の研究でJAMSTECがちょうど技術研究員の募集をしており、応募して現在にいたります。高井PDの噂は京大の同じラボ出身であった指導教官からいろいろ聞いていましたが、想像以上にパワフルでエネルギッシュな高井さんの下で仕事ができるとは思ってもいなかったので、何だか世間は狭いというか、ご縁があったというか・・・。今の仕事では、深海熱水生態系という新たなフィールドでウイルス研究を続けることができ、新たな発見の連続で毎日とても楽しいです!

★ 研究に対する情熱を特に感じる瞬間を教えて下さい。

    新たなウイルスを単離できたときですね。特に電子顕微鏡でウイルス粒子を確認できたときは、喜びも最高潮に達して思わず叫んでしまいますね(笑)。その後も一日中興奮していて、ウイルス粒子の写真を見てはニヤニヤしちゃってます。

★ インタヴュー後の感想 by 館洞

    吉田さんは、やはりSUGARメンバーの特性をお持ちのお一人で、明るく朗らかな大阪っ子。スピーディーに増殖するウイルスの研究を行う彼女は、今回お話をお聞きして、おそらく頭と運と勘の良い方なんだろうなと実感しました。というのも、吉田さんが修士1年の時にウイルスを(ご本人いわく「まぐれで」)単離出来てしまったというくだりや、諸々の事情から博士号取得への道が開けてしまったところや、さらにはご結婚された後で「な〜んかいい仕事ないかな〜?」というノリでお仕事を探していたら、またまた「あら、知り合いじゃないの!」的な流れで高井PDに出会ってしまったというあたりは、どうも「努力の人」というよりは、「好きなことをしながら自然の流れに身を任せていたら、いつの間にか良いところへ来ていた」という感じがします。もちろん、優秀な素質はお持ちなのですが、それプラスの何かがあるのが吉田さんの人生の特徴という気がしてなりません。ひょっとすると、無意識のレベルで、ものすごく考えていて、狙いをつけたウイルスを単離出来たのかもしれませんし、博士号取得を迷っていたと思ってはいたものの、実は潜在意識の中では研究を続けるガッツが既に固まっていたのかもしれません。ご結婚を機に横浜へ移られたというのも、もしかすると「あっちの方には、JAMSTECがあったなあ・・・」、なんて頭の片隅で未来の就職先を考えていたのをご本人が気づかなかっただけとか・・・。実際はどうなのかわかりませんが、いつも爽やかで自然体の吉田さんを見ていると、とてもオープンに物事を考えて軽やかに行動される方だと感じます。ご自身の幸せになれる道を自然に選んでいける、不思議な運と勘、そして優秀な実力をお持ちの吉田さん、これからも「あ!!また単離出来ちゃった・・・!!」という歓喜の叫びが実験室から響いてくることを、心から期待しています!
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