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シュガープログラムはゲノムチーム、京都大学 跡見晴幸教授、慶応大学 金井昭夫教授、東京大学 服部正平教授のグループと共同で、地下鉱山の熱水に繁茂する微生物マットのメタゲノム解析を行い、誰もが培養したことのない系統に属する好熱性アーキア(恐らく70度程度で増殖する。
Caldiarchaeum subterraneumと名付けた。‘熱いアーキア’‘地殻内生物’の意)の全ゲノム解析に成功しました(図1参照)。
勿論、シュガープログラムのワシは1031(世界のKT?)も、このアーキアの培養にはアッサリと跳ね返されています。共生菌を除けば、培養できない微生物の全ゲノム解析に成功したのは日本国内では初めてです。世界でも、共生菌や集積培養を経ていない試料からの例に限れば、両手の指に収まるくらいの報告しかありません。色んな“巡り会い”なしには、自然環境中の試料から、特定微生物の全ゲノム解析なんて出来ませんでした。良い試料・共同研究者・技術・研究資金その他諸々、色んなものが上手くはまりました。このプロジェクト自体、そもそもは
Caldiarchaeum と共存する別のアーキア(2008年にアメリカで集積培養されたアンモニア酸化好熱性アーキア;ちなみに1031はこのアーキアの培養にも至らず。)のゲノムを解析しようと始めた仕事です。それがあれよあれよという間に別のアーキア(
Caldiarchaeum )の全ゲノム解析にまで成功してしまったのです。2004年に始めた仕事ですから(数度の中断もあり時間がかかりました)、本来の目的の通りに行っていれば2008年の好熱性アンモニア酸化アーキア集積培養成功!で半泣きになっていたはず。しかも、
Caldiarchaeum を含む試料を採取できたのは、同じフィールドで何度もサンプリングしていますが、後にも先にも、このメタゲノム解析試料のみ。ですので、どんな形をしている細胞かも分かっていません。紆余曲折を経ましたが、ホント、‘何か持ってます’。
さて、アーキアのゲノムを構成する遺伝子を既知のアーキアゲノムと比較しますと、このアーキアは、既存の
Crenarchaeota門、
Euryarchaeaota門は勿論、最近提唱されている
Thaumarchaeota門、
Korarchaeota門とも異なる特徴を示しました。つまり、このアーキアを含む系統群が新たな門を構成する可能性が示されたのです。そこで
Aigarchaeota門(夜明け・オーロラアーキアの意)をシレッと提唱しています。ここまではアーキアオタクの話題。バイオロジーのグローバルな観点から見て最も重要なことは、真核生物と原核生物を分ける特徴とされてきた、真核生物型のユビキチン修飾に関する遺伝子が見つかったことです。この発見はちょっとしたセレンディピティですね。そもそも、このメタゲノム解析は、別のアーキアの生理生態を知りたくて始めたプロジェクトですし、
Caldiarchaeum の生理生態は‘フーン、ただの好熱性アーキアだったんだ・・・’と大して感激もありませんでしたから、これがなければ、アーキアの世界だけの話題でした。ユビキチン修飾系の代表的なものは、ユビキチンという小さな蛋白質で不要な蛋白質を標識し、その標識を目印にプロテアソームが不要な蛋白質を分解する仕組みです(図2参照)。最近、アーキア型あるいはマイコバクテリア(結核菌の類です)型と呼ばれる類似のシステムは発見されていましたが、やっぱり原核生物から見つかるものは真核生物型の仕組みとは違うね(所詮、下等よね)といった感じで片付けられていました。
今回の発見は、真核生物とアーキアの共通祖先が既に真核生物型のユビキチンシステムを持っていたこと、大部分の?アーキアが何故か真核生物型のユビキチンシステムを放棄したことを意味します。実際の機能的な証明は、今しばらくお待ち下さい。ゲノムから想像した絵が証明できれば勝ちです。また、このメタゲノム解析には、論文でも触れていない分子生物学上の結構重要な発見がいくつかあり、共同研究者が解析中です。まだ秘密ですが、お楽しみに。
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我々シュガープログラムは東京大学の橋本和仁教授のグループと共同で深海底熱水噴出孔から採取したチムニーの電気化学的な解析を行った。これにより、ブッラクスモーカーによって形成された硫化鉱物チムニーは高い電気伝導性を持つことが明らかとなった。さらに自然環境ではチムニーの内外で電池のような化学反応が起きチムニーの壁を電気が流れることも明らかにした。これらの結果は、地球の内部エネルギーが海底に放出される際に電気エネルギーに変換されることを世界で最初に実験的に証明したものであり、極めて画期的な研究成果である。この「熱水チムニー電池」とも言うべき現象は深海熱水活動域の生命活動や物質循環、更には生命の起源を説明する新たなメカニズムとして注目される。
Nakamura, R., Takashima, T., Kato, S., Takai, K., Yamamoto, M., & Hashimoto, K. (2010) Electrical Current Generation across a Black Smoker Chimney. Angew.Chem.Int.Ed, 122:7858-7860
(左図)今回実験で使用したブラックスモーカーチムニーの塊の写真
(右上図)チムニー内壁面の拡大写真(走査型電子顕微鏡)
(右下図)チムニー横断電流の概念図
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2001年に発見され世界唯一の“硫化鉄の鱗をまとう生物”として一気に深海の人気No.1アイドルとなった巻貝「スケーリーフット」。しかし、世界各地に熱水活動域が存在するにもかかわらず、インド洋、しかも「かいれいフィールド」、さらにこのかいれいフィールドでもたった1つのチムニーにしか存在しない超希少イケメンである。しかし、このスケーリーフットが大量のエビ(リミカリス)もしくは、アルビン貝の下に大量に存在することを2009年のインド洋航海において、ついに突き止めた。我々はこのスケーリーフットがなぜこんなにモテモテなのかを解明する大チャンスを得たのである。そこで、このスケーリーフットに対して、我々SUGARプロジェクト&プレカンはモテモテになるためについに本腰をいれることにしたっ!
どうする・・・今後の我々の研究にご期待くださいっ!
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宇宙における生命の存在条件を知る上で欠かせない地球における生命の存在可能条件(Limits of Life& Biosphere)を更新する超好熱メタン菌をインド洋かいれいフィールドから分離することに成功した。JAMSTECシュガープログラムとプレカンブリアンエコシステムラボが共同で高温高圧培養法(高井法)を開発し、122°Cでの増殖を確認した。また深海底と同じ条件でのメタン生成では、「微生物の作るメタンは軽いのだ。文句あっか。」というこれまでの地球化学の常識を覆す「本当は微生物もおもーいメタンをつくるんだよ」という革新的な成果を得た。本成果は地球におけるメタンの起源や火星におけるメタンの起源を探る上で重要な手がかりを与えるものである
Takai, K., Nakamura, K., Toki, T., Tsunogai, U., Miyazaki, M., Miyazaki, J., Hirayama, H., Nakagawa, S., Nunoura, T., & Horikoshi, K. (2008) Cell proliferation at 122°C and isotopically heavy CH4 production by a hyperthermophilic methanogen under high-pressure cultivation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105:10949-10954.
図 過去50年にわたる生命の最高生育温度記録更新の歴史(中)と今回分離された
Methanopyrus kandleri 116株の電子顕微鏡写真(左)、及び有機地球化学の教科書に載っている自然環境中のメタンの安定炭素同位体比による分類表(右)。従来121°Cで、この世すべての生き物は抹殺できると考えられてきたが、本菌はその人間の思い上がりを打ち砕いた(中)。また「微生物の作るメタンは同位体的に軽いに決まっている」と格言のように唱えられてきた考えも再考を迫られることとなっちまった(右)。
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20世紀の地球科学最大の発見と言われる1977年の深海熱水活動の発見以来、生命の起源の場とも考えられてきた深海熱水活動は、多くの研究者の興味を惹きつけてきた。しかしながら、何故深海熱水活動において世界規模で異なる微生物や生物の群集組成が熱水域毎に異なり、或いは熱水の周辺の各ゾーンで棲み分けているのかについては、発見から30年以上不明のままであった。JAMSTECシュガープログラムでは、太平洋、大西洋からインド洋に至るまで、世界各地の熱水活動域を探索・制覇し、その微生物生態系の違いを圧倒的な研究力の差を見せつけながら明らかにしてきた。その結果、「熱水が生まれいづる場が異なる命を育む」という地質ー生命相互作用を見出し、その相互作用の源泉となっているのが「熱水に含まれる水素濃度」であるという仮説「水素ワールド」仮説を提唱した。硫化水素やメタンではなく、水素による微生物や生物の群集組成の規制はまさに世界初の概念であり、圧倒的な研究創造力の差の賜である。
Inagaki, F., Kuypers, M. M. M., Tsunogai, U., Ishibashi, J., Nakamura, K., Treude, T., Ohkubo, S., Nakaseama, M., Gena, K., Chiba, H., Hirayama, H., Nunoura, T., Takai, K., Jørgensen, B. B., Horikoshi, K., & Boetius, A. (2006) Microbial community in a sediment-hosted CO2 lake of the southern Okinawa Trough hydrothermal system. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:14164-14169.
(左上図) JAMSTECシュガープログラムで探索・調査を行ってきた世界の熱水活動域の分布
(左左下図) 沖縄トラフ第四与那国海丘熱水活動域の写真。フランジと呼ばれる奇妙な構造の下に二酸化炭素が大量に含まれる熱水が噴出し、まるで沸騰しているように見える。また、熱水中の二酸化炭素濃度が高すぎるため、熱水から分離した二酸化炭素の液滴がブドウ状にかたまったような構造が多数観察された。さらに、熱水から分離した二酸化炭素が、周辺の堆積物中に蓄積され、液体二酸化炭素プールを形成することを明らかにした。
(左右下図) 南西太平洋でJAMSTECシュガープログラムが発見したマリナー熱水活動域の写真。アメリカ人研究グループと同時期に調査を行い、先駆けてこの熱水活動を発見した。
(左下下図) JAMSTECシュガープログラムにおいて世界で初めて発見した「青い熱水」ブルースモーカーの写真。沖縄トラフ鳩間海丘の熱水活動域で観察された。当初、マグマ活動との関連性が議論されたが、その後の研究により、超臨界二酸化炭素のレイリー散乱による光のマジックであることがわかりつつある。
(下図) 全地球規模での熱水微生物生態系の比較から、それぞれの熱水の微生物生態系が地域性ではなく地質学的セッティングの違いで異なることが明らかになり、その結果として詳細な統計学的解析によって、各熱水活動の微生物生態系の生産力が熱水の水素濃度に支配されること、「水素ワールド」仮説が導かれることとなった。
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1990年代の後半から、世界各地の深海熱水環境にイプシロンプロテオバクテリアと呼ばれる一群の微生物が圧倒的に優占する事実が明らかになってきた。そのイプシロンの最も近縁な分離株は、胃ガンの原因菌とも言われるピロリ菌や下痢を引き起こすカンピロバクター属細菌であり、その不思議な類縁関係とともに、大きな謎であった。JAMSTECシュガープログラムでは、このイプシロンの謎を解明するため、とっておきのイケメン研究者(中川聡、独身及び高井研、既婚)のコンビを投入した。やはりイケメン、見事に世界に先駆けて深海イプシロンを次々に分離し、未知イプシロンが水素や硫黄化合物をエネルギー源とする化学合性独立栄養微生物であることを明らかにした。さらにゲノム解析を行い、これらの深海イプシロンが深海熱水環境で勝ち抜く為に有する遺伝的特徴や分子生物学的メカニズムが、ピロリ菌などの病原性微生物を有害性の祖先型形質であることを提唱した。
Nakagawa, S., Takaki, Y., Shimamura, S., Reysenbach. A-L., Takai, K., & Horikoshi, K. (2007) Deep-sea vent epsilon-proteobacterial genomes provide insights into emergence of pathogens. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 104:12146-12150.
(左下図) 世界の熱水活動域におけるイプシロンプロテオバクテリアの優占度を示した図
(下図) イプシロンプロテオバクテリアの系統樹。深海イプシロン(黄色)がピロリ菌やカンピロバクター属細菌と近縁であることがわかる。
(右下図) JJAMSTECシュガープログラムによって解読された2つの深海イプシロンのゲノム。一つは常温性イプシロンプロテオバクテリア、もう一つは好熱性である。常温性イプシロンは、アルビン貝の鰓に共生するイプシロンと極めて近縁な株であり、共生イプシロンプロテオバクテリアのゲノム解析が現在進行中であり、近い将来自由生活型と共生型のゲノムレベルでの比較が可能となる。
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統合深海掘削計画(IODP)では海底下微生物圏の全貌解明を科学計画の柱としている。しかしながら、海底下に存在する微生物のバイオマスに関してすらほとんど知らていない状況であった。シュガープログラムではODP史上初めて行われた「海底下微生物圏掘削航海」に稲垣史生(当時独身)が乗り込み、激しい試料争奪戦を勝ち抜き、海底下微生物群集構造の解析を行った。その結果、海底下に存在する微生物は、表層世界に生息する微生物と遺伝的に全く異なる微生物群から構成されること、またそれらの微生物が機能未知の微生物であることを明らかにした。
Inagaki, F., Nunoura, T., Nakagawa, S., Teske, A., Lever, M., Lauer, A., Suzuki, M., Takai, K., Delwiche, D., Colwell, F. S., Nealson, K. H., Horikoshi, K., D’Hondt, S., & Jørgensen, B.B. (2006) Biogeographical distribution and diversity of microbes in methane hydrate-bearing deep marine sediments on the Pacific Ocean Margin. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:2815-2820.
右図 ODP史上初めて行われた「海底下微生物圏掘削航海」が行われたペルーマージン及びカスカディアマージンの位置とそれぞれ海底下数百メートルの深部から得られたアーキア及びバクテリアの種組成の変化を鉛直的に示したもの。数百メートルに渡ってアーキア及びバクテリア相があまり大きな変動を示さないことがわかる。またそれぞれのアーキア及びバクテリアがどのような系統的特徴を有するか示した系統樹が右図である。海底下で優占する微生物の多くが、これまで表層環境から見つかった微生物と遺伝的に大きく異なることが明らかとなった。すなわち、これは海底下の微生物世界が表層環境とかなりの時間スケールで隔離され得ることを示している。さらにこのような機能未知な海底下微生物が地球規模での物質循環にどのような役割を果たしているかを理解する上で、大きな第1歩となる研究であった。
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生命が深海熱水で誕生し、持続可能な生態系として原始海洋に伝播する過程を支える場として、「超マフィック岩ー熱水活動ー水素生成ーハイパースライム」のリンケージが存在したことを提唱した。またこのリンケージがマントルかんらん岩の露出によって現世の地球に再現される海底熱水系にのみハイパースライムが生き残っていることを予想し、かつ冥王代(約40億年前)の地球ではコマチアイトによって極めて普遍的に存在していたことを初めて理論化した。
Takai, K., Nakamura, K., Suzuki, K., Inagaki, F., Nealson, K. H., & Kumagai, H. (2006) Ultramafics-Hydrothermalism-Hydrogenesis-HyperSLiME (UltraH3) linkage: a key insight into early microbial ecosystem in the Archean deep-sea hydrothermal systems. Paleontological Res. 10:269-282.
左図 約40億年前と現世の地球の海洋ー地殻ーマントル構造と深海熱水活動の様式。
右図 約40億年前のコマチアイトに支えられた深海熱水活動のイメージ図
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ハイパースライム(HyperSLiME)とは、Hyperthermophilic Subsurface Lithoautotrophic Microbial Ecosystemの略語であり、超好熱地殻内化学合成(岩石)独立栄養微生物生態系を示す。我々はこのハイパースライムと呼ばれる太陽のエネルギーとは無縁の地球を食べる超好熱生態系こそ地球最古の生態系と考えた。そこで世界各地の熱水活動域を探査し、インド洋中央海嶺の熱水活動域、かいれいフィールドのさらに奥深くに地球最古の生態系であるハイパースライムをついに見いだした。
Takai, K., Gamo, T., Tsunogai, U., Nakayama, N., Hirayama, H., Nealson, K. H., & Horikoshi, K. (2004) Geochemical and microbiological evidence for a hydrogen-based, hyperthermophilic subsurface lithoautotrophic microbial ecosystem (HyperSLiME) beneath an active deep-sea hydrothermal field. Extremophiles, 8:269-282.
左図 ハイパースライムが見つかったインド洋水深2450mにあるかいれいフィールド熱水活動域の写真。ハイパースライムを支える大量の水素が熱水に含まれていた。
右図 ハイパースライムの一次生産者である超好熱メタン菌
Methanotorris formicicumの電子顕微鏡写真
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