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トピックス

2016年11月22日05時59分頃に福島県沖で発生したM7.4の地震について
震源域での調査航海の実施状況と今後の計画

2016/11/29

1.はじめに
 2016年11月22日05時59分頃(日本時間)に福島県沖でM7.4(気象庁暫定値)の地震が発生しました。気象庁によると、この地震は福島県の沖合約60kmで発生した北西−南東方向に張力軸(引っ張りの力)を持つ正断層型の地震です。この地震に伴い、仙台港で1.4mの津波が観測される等、東日本の太平洋岸の各地で津波が観測されました。気象庁による震源の深さは25kmとなっており、海陸プレート境界の上盤側にあたる陸側プレート内部で発生した地震と考えられます。また、気象庁や防災科学技術研究所による地震波形全体を用いた解析によると、今回の地震の深さは約10kmとの報告もあり、地震による断層すべりが海底下の比較的浅い場所で発生した可能性が考えられます。

2.地震発生直後に実施した調査航海の実施概要
 福島沖で発生した地震を受けて、今回の地震の断層が海底まで至っているかを明らかにする目的で、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」と深海潜水調査船支援母船「よこすか」により震源域付近の海域において緊急調査を実施し、図1に示す測線での海底地形データを取得しました。今後、得られた海底地形図を元に断層等の地形的特徴を把握します。今回の地震では津波が発生しており、地震断層が海底まで達している可能性があるため、精度の高い海底地形データを用いることにより、地震断層の確認を進める予定です。

図1. 緊急調査海域と測線図。地震後これまでに「新青丸」(青線)、「よこすか」(黒線)で海底地形調査を実施した測線。今後赤枠内で「よこすか」による調査を追加する予定。黄色丸が本震の震央、赤×は11/22に発生した地震(余震)の震央を示す(震源はいずれも気象庁一元化震源より)。

図2. 東北海洋生態系調査研究船「新青丸」

図3. 深海潜水調査船支援母船「よこすか」

3.今後の計画
 すでに実施した「新青丸」「よこすか」での地形調査に加え、11月下旬からの「よこすか」による航海で追加地形調査を実施しており、さらに、それら緊急海底地形調査の結果を元にして、海底広域研究船「かいめい」により震源断層付近で3次元の地下構造調査を実施する予定です。現在「かいめい」は調査方法やさまざまな調査機器の取り扱いを習熟するための航海(慣熟航海)を実施しており、その一環として、高分解能3次元反射法探査の慣熟航海を今回の震源付近で実施することを計画しています。これにより、地下での断層の広がりや形状を3次元的に把握することを目指します。その結果、今回の地震がこれまでに海底で確認されていた既知の断層で発生したのか、あるいはこれまで海底では確認されていない地下の断層で発生したのかが明らかになり、断層の割れ残りの有無等から今後の活動を評価する際の重要なデータが得られます。
 なお、今後予定している調査航海を含め、ある程度の結果がまとまりましたら別途公表いたします。

図4. 海底広域研究船「かいめい」(左)と高分解能3次元反射法地震探査の模式図(右)。「かいめい」から、音源と20本のストリーマーケーブルを曳航して調査を行うことで、広範囲の海底下構造データを効率よく取得する。高分解能3次元反射法探査では、ケーブルの間隔が短く、用いる音源も高周波数成分に富むものを用いるため、分解能の高い地下構造イメージを得ることができる。

【参考】震源域の応力場について -地殻変動研究の成果からの解説-
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震以降、今回の地震と同様な正断層型の(引っ張りの力による)地震が陸側プレート内部で数多く発生しています。また、海陸の観測によって東北地方太平洋沖地震後の地殻変動(海底のゆっくりとした動き)が検出されていますが、福島県沖の海底地殻変動観測点では、沿岸の陸上GPS観測点に比べて大きな海溝向きの動きが検出されており、今回の地震の震源域周辺では地殻浅部が海溝軸に直交する方向に引っ張りの力が働く場になっていると考えられます。観測された地殻変動には、プレート境界面上での余効すべり1とマントルの粘性緩和2による影響が含まれていますが、Iinuma et al. [2016] (平成28年11月17日プレス発表)による粘性緩和の影響を考慮した解析によると、今回の地震の海溝側のプレート境界浅部ならびに北東側のプレート境界深部において余効すべりが発生しており、今回の地震の震源域のメカニズムとの関連について、検討が必要です。

1地震が発生した後に、地震時にすべりを起こした断層が、人間が感じるような地震波を放出せずに、さらにゆっくりとずれ動き続ける現象を余効すべりと呼ぶ。
2力を加えている間は変形が増大し、力を取り除いても元に戻らないような性質を粘性と言い、地震時に発生した大変動によって震源周辺にもたらされる応力が、地下の流動変形によって失われていく現象を粘性緩和と呼ぶ。

図5:海陸の地殻変動データから推定された、プレート境界断層における余効すべりの分布と今回の地震の発震機構解(気象庁の速報解、赤色のもの)[Iinuma et al., 2016 に加筆]。赤青の色ですべり量を示す(図中下部のカラースケール参照)。正値は逆断層型のすべり(地震時のすべりと同じ向き)を、負値は正断層型のすべり(沈み込むプレートに引きずり込まれる向き)を表す。すべり量0.4mごとに等値線を描いてある。青色の破線は東北沖地震の地震時すべりの等値線(10m間隔)を、黒の破線はプレート境界型地震の西縁を表す。赤の破線はプレート境界面の等深線。緑の点線で囲った範囲は余効すべりの推定精度が十分良いと考えられる領域に対応する。灰色の等値線は過去の大地震の破壊域。(平成28年11月17日プレス発表「海底地殻変動データを用いて東北地方太平洋沖地震に引き続くゆっくりすべりを高分解能で検出―巨大地震の発生過程の理解に重要な知見―」を参照)

お問合せ先:
 国立研究開発法人海洋研究開発機構
  地震津波海域観測研究開発センター長(上席研究員) 小平 秀一
  研究推進部 地震津波海域観測研究開発推進課長   満澤 巨彦
  電話:045-778-5730