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地球情報基盤センター

統融合情報研究開発グループ

 
 海洋・地球観測データの科学的統合情報と社会で利活用可能な付加価値情報を創出するため、実利用プロダクトの作成に必要な技術についての研究開発を行っています。また、統融合データと付加価値情報を社会で利活用する手法の検討を行い、付加価値情報を実際に社会に還元するための地球環境情報基盤を構築することで、社会で役立つ情報を提供する研究にも取り組んでいます。


1. 高分解能海洋データ同化システムの構築
当グループでは2つの高分解能海洋データ同化システムを構築し運用しています。

 a. 中央北太平洋準リアルタイム海洋環境解析システムの構築と運用
 平成27年4月からの準リアルタイムのデータ配信開始を目標として、夏季アカイカ漁場である北中央太平洋(緯度30N-50N、経度170E-150W)を対象とした海況環境解析システムを開発しました。解析システムの中核には気象庁気象研究所で開発された4次元変分法海洋データ同化システムMOVE-4DVARを採用し、新たに開発された高解像度(水平0.1度)北中央太平洋領域海洋モデル(CNP01:図参照)及び入出力データの自動処理システムと共に準現業運用体制を構築しました。
中央北太平洋(CNP01)と北西太平洋(WNP)解析領域及び両モデルの境界値を供給する低解像度北太平洋モデル領域(NP)。縦軸は緯度、横軸は経度。等高線は海面高度(単位:cm)を表し、間隔は10cm。
 

 b. 北西太平洋30年海洋再解析

 平成27年3月~5月期に実施された地球シミュレータ特別推進課題の一つとして、気象研究所との協働により北西太平洋域(WNP:図参照)における過去約30年間(1983年~2013年)の高解像度(水平約0.1度)海洋環境再解析データを作成しました。解析システムには中央北太平洋解析システムと同様に4次元変分法同化システムMOVE-4DVARを用いました。


2. 結合データ同化による季節予測~経年変動予測
 当グループでは、これまで4次元変分法(4D-VAR)全球大気海洋結合データ同化システムの開発・改良・運用を行い、同化・予測プロダクトの作成とその精度改善のための研究を行なってきました。最も高度な同化手法の一つである4次元変分法を用いたフル結合同化システムは世界でも類例のないものです。この数年では、2010年~直近をターゲットに、最新観測データを用いて3ヶ月間の解析とそれを用いた数年間のアンサンブル予測を定期的に実施する体制・仕組みを整え、受託研究など様々な目的に同化・予測プロダクトを提供しています。さらに最近では、上記システムに簡単な海洋低次生態系モデル(NPZDCモデル)を導入し、海洋生態系データの統合にはグリーン関数法を用いることで、大気・海洋・海洋低次生態系の"3圏結合"同化システムへの拡張を行いました。これによる3圏統合の同化・予測プロダクトを用い、水産資源変動研究等への応用研究も実施しています。以上の結合データ同化の研究開発においては、地球環境観測研究開発センター海洋循環研究グループと協力しています。


3. 水産分野への適応研究
 当グループで作成した高分解能海洋データ同化プロダクトや結合データ同化による季節予測プロダクトといった付加価値データを用いて他分野データとの統融合を図り、科学的・社会的に有益な情報に変換して実利用に供するための機能開発の一環として、当グループでは、水産分野に特化した適用研究開発を行っています。
 当グループでは、対象魚種の海域ごとの資源量と、水温・塩分・流速や海面高度といった環境変数との関係から対象魚種の「住みやすさ」を点数化することで漁場を探索することができる好適生息域推定モデル(HSIモデル)をアカイカについて開発し、それを高分解能海洋データ同化システムから得られる海況予測データに適用することで日々のアカイカ漁場予測を行い、現場の漁業者に配信して操業に役立てていただいています。
 また、最先端のデータ同化技術を使った生物海洋モデルの解析から、アカイカの資源量予測モデルを開発し、資源変動メカニズムの解明につなげるとともに、この予測モデルを温暖化予測実験結果に適用することで、温暖化のアカイカ資源への影響予測を行っています。


4. 可視化とデータ公開
 大気・海洋シミュレーションに基づくプロダクトは、計算機能力の向上に伴って飛躍的に高解像度化し,大規模になっています。このようなプロダクトは、従来のファイル単位での配信が、ネットワーク・トラフィックの観点から限界を迎えつつあります。

 そこで、任意の範囲のデータを抽出可能な OPeNDAP を用いたデータ配信・公開を進めています。また,シミュレーションデータの管理を容易にするとともに、アプリケーション側での自動処理を容易にできるよう、自己記述型のファイル形式の検討も同時に進めています。具体的には CF-convention に基づいた netCDF と OPeNDAP サーバの一つである THREDDS で組み合わせることで、格子情報・変数情報などを含めたデータ配信システムを開発しています。これらは、水産・農業・防災など他分野における、必要な変数を必要な領域だけ簡単に取得できる仕組みへのニーズにも対応できるものです。

 一方で、データを大規模ストーレージ上のリモート環境で解析できるツールの開発も進めています。CMIPに代表される複数モデル間の視覚的比較ツール、時系列データのインタラクティブな視覚的分析環境、実運用の同化・予測データの結果検証・解析情報の自動生成システムなどを開発しています。これらのツールと、OPeNDAPの連携も進めています。


4. メンバー
グループリーダー [上席技術研究員]石川 洋一 (ISHIKAWA, Yoichi)
[主任研究員]望月 崇 (MOCHIZUKI, Takashi)
[特任研究員]西川 悠 (NISHIKAWA, Haruka)
[技術研究員]小室 芳樹 (KOMURO, Yoshiki)
[特任技術研究員]西川 史朗 (NISHIKAWA, Shiro)
[技術主任]五十嵐 弘道 (IGARASHI, Hiromichi)
[特任技術副主任]田中 裕介 (TANAKA, Yusuke)

5. プロジェクト・共同研究