ちきゅうレポート
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「1031?」2010年9月22日

表題のイチマルサンイチってなんでしょうか?

なにかのデータ?重要な日時?

いえいえコチーフ・タカイのNo. 1フェイバリットジャパニーズ漫画「スラムダンンク」の読者なら、すぐにわかりますよね。

宮城リョータが桜木花道に伝えたアリウープの適当な暗号を桜木が「はっ、テン(10)サイ(31)!」と理解するシーン。

コチーフ・タカイは、研究上よく、何か新しい、すっごいチンケなアイデアを思い付きます。それを試してうまくいった時、いつも桜木花道の口癖、「やはり、天才?!やはり」、と周辺の人々に言いまくって迷惑をかけています。

沖縄掘削中にも炸裂しましたよ。アイデアの泉から湧き出る「主婦の冷蔵庫の残り物を使ったありあわせ晩ご飯のおかず的」1031なアイデアが(フリが長いっ)。

9月22日午後9時半現在、伊平屋北熱水活動域の激しい熱水噴出サイトから500m東の海底を、バリボリバリボリ掘削中です。

なんと90mも掘り進んでいます。「へー、たったの90m。うちの井戸と変わらへんやん」という突っ込みは、「なし」の方向で。なぜなら、これまで日本近海の熱水活動域で掘削された記録は良くて20m程度だったんですから。

前半戦の約54mが記録更新だった訳ですが、「続・魁・熱水直下微生物圏掘削」では、そうそうに90mを超えました。

長い深海掘削の歴史上、深海熱水域を数百メートル掘ったことはあります。しかし、それはほぼ「掘っただけ」。つまりコアはほとんど回収されていないんですね。このC0014と名付けられたサイトでは、現時点では70%以上の回収率でコアが上がってきています。

「チョイ悪おやじ」サワダ船上代表率いるCDEX軍団は、「ちきゅうとCDEXの技術力の勝利!」とそこはかとなく恩着せオーラを醸し出していらっしゃいます。

「おっしゃる通り。たしかに奇跡的な回収率でございます。ぐっ じょぶ」

で、何が1031かと言いますと、

世界に誇る「ちきゅうとCDEXの技術力」にも、泣き所がありまして、掘削して到達した海底下の環境の温度が、せいぜい55℃までしか測れないという弱点があるのです。

実はこれは簡単そうに見えて、技術的に結構難しい問題なんです。

今回のC0014では5-10m掘削すると、20-30℃近く温度が上昇します(これは測れる)。これは予想より遥かに高くて、ちょっとびっくりしたんですが、まあそこまではよろしいと。

次の掘削ではもう温度が測れなくなるんです。すくなくとも三つの深度で温度が測定できると、直線的な温度上昇の傾向が出せるんですが、1点ではなかなか予想が難しいと。「これは困った」、という状況でした。

コチーフ・タカイは航海前に、ミヤザキ研究員より温度シールを預かってきました。これは人工熱水が吹き出るパイプの外側に貼付けることで、ROVで観察して、噴出する人工熱水の温度が分かるのではないかというアイデアだったんですが、実際この試みは失敗してました。

ふと見るとその温度シールが余ってたんですね。「キラーン!」。

ドリルパイプの中に入れるコアライナー(前半戦はプラスチックで溶け、後半戦はアルミ製を急遽補充してもらった)と呼ばれるものにそれを貼付けておけば、温度が測れるんじゃないか?

サワダ船上代表は「そんなの無理無理!Wooooory貧弱ぅ貧弱ぅ!」と薄ら笑いしてましたが、とにかく試してみることに。

結果 = 1031の勝ち

47.2mの深さで140℃、50mを超えたところで210℃を振り切りました。

ちなみに地球生命が生育できる最高温度は、122℃(タカイの作った世界記録で、ギネスに申請中)。

大体45m付近に、「生命と非生命の間」があると予想できるのです。

これはちょっと短絡的な考え方なんですが、大枠そういう予想ができるという一つの大きな手がかりになるのです。

「やはり、天才?!やはり」
ちょっと自慢したくなる気持ち、分かってもらえたでしょうか?

「アナタ、基本的にいつも自慢ばかりアルヨ」

今、聞こえないはずの突っ込みの声が聞こえましたよ。しかも多方面から。そらみみ、そらみみ。

あっまたコアが上がったって!

ではでは