Chikyu Report
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「ちきゅう」のセイフティードリル2012年08月15日

毎週日曜日の午前10時前になると、個人保護具PPE(つなぎ、ヘルメット、安全ゴーグル、手袋、安全靴)とライフジャケットで完全装備した研究者たちが集まってきます。
船の上で"drill"と呼ばれる避難訓練の時間です。


万全の態勢で避難訓練に臨む研究者たち(真ん中が私)


非常ベルが鳴り、各人が事前に割り振られた救命ボートへ向かいます。救命ボートの近くには、「T-card muster station」が設置されており、そこに入っている自分カードを裏返した後、床に描いてあるドットの上に整列します。こうすることにより、人数を容易に確認できると同時に、不在者を特定することができます。不在者がいる場合は、船内の捜索が始まります。ちなみに、非常時に取り残されるのを防ぐために、居室の鍵をかけてはいけないことになっています。


非常ベルのなり方によってどのような事態が起きたか分かるようになっています。
モールス信号みたいですね。


救命ボートは、自分の寝室によって左舷右舷の近い方に割り振られ、左右に各3艘配備されています。定員は、75人乗りが2艘、50人乗りが1艘なので、両側で計400人が避難できるようになっています。「ちきゅう」の定員が200名なので、かなり多めですよね。なぜだかわかりますか?

これは、船が傾いた場合には、片側からの避難を余儀なくされるからです。「ちきゅう」の船上で生活をしていると海の上にいることを忘れがちですが、このような規則や訓練が非常に大事です。


避難場所についたら、この箱の中に入っている自分のカードをひっくり返します。



Tカードをひっくり返したら丸の上に整列。
かわいい水玉模様ですが、大事な役割を担っています。


出航を4日後に控えた昨年の3月11日、私は「ちきゅう」船上で研究機器のセットアップに追われていました。大きな揺れを感じてからしばらくして、津波が堤防を乗り越えて来るのが見えました。非常ベルが鳴り響き、緊急避難の放送が流れました。海上に脱出できる状況ではなかったため甲板の一部屋に避難しました。全員が速やかに避難したため1人の負傷者も出ませんでしたが、後から聞くと、「ちきゅう」は狭い港のなかで津波に押されて回転し、船体も一部を損傷するという危険な状況にあったということです。

我々が毎週行なう"ドリル”が非常時における迅速かつ冷静な行動に繋がっているのです。

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