地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

CDEX
For the Future:「ちきゅう」は未来を掘っている。

これまでの調査が評価され、「ちきゅう」への国際的な期待が高まっています。
2014年夏には、ハワイ沖でマントル探査に向けた事前調査がスタートし、「ちきゅう」は世界の海へ、新たな挑戦へと船出します。
(2014年3月 掲載)

取材協力
倉本 真一
CDEX企画調整室
次長
海洋地質学者
理学博士

世界の研究者たちが集い、「ちきゅう」の未来をディスカッション

 これからの10年、「ちきゅう」はどのような研究に取 り組んでいくのか? そのための知恵を出し合いディスカッションをする国際ワークショップ「CHIKYU +10」を2013年4月に開催しました。参加した研究者は世界約30ヵ国/地域から約400名。若手研究者を中心に、私たちの予想を上回る数多くの人が集まり、「ちきゅう」がこれまで進めてきた調査が高く評価され、国際的に注目されていることを肌で感じました。これから「ちきゅう」は、活躍のフィールドを世界の海へと広げていくことになるでしょう。
 この「CHIKYU +10」では、大きく重要なテーマとして「地震発生帯」「マントル調査」「海底下生命圏」「大陸形成」「地球史の変遷」の5つを掲げました。この中でも私たちが特に力を注いでいきたいのは、言うまでもなく、マントルへの挑戦です。海底下の大深部まで掘削し、まだ世界中で誰も成し得ていない、マントルのサンプルを採取すること。これこそが「ちきゅう」が造られた最大の目標なのです。

人類未到のマントル探査に向けて、世界の海へ船出する

 そのマントル掘削に向けての事前調査が、いよいよ2014年夏にハワイ沖で始まります。私たちは、マントル調査においてハワイ沖に加え、コスタリカ沖、メキシコ沖の3つのフィールドを候補にあげています。
 科学史上初の挑戦ですから、当然、いくつもの壁を打ち破らなければなりません。これら3つの海域はいずれも水深が4,000m近くあり、これほどの大水深・大深度のライザー掘削はまだ世界でも例がないのです。さらにその海底から6,000m以上も掘り進めなければならず、ドリルパイプの総延長も10km以上に及びます。また、過酷な環境に対応するドリルビッドや観測機器も新たに求められます。しかし、私たちはこのような技術的ブレイクスルーはけっして不可能でないと確信しています。
 たとえばアインシュタインの相対性理論やアポロ11号による月面着陸のように、「ちきゅう」がマントルのサンプル採取に成功すれば、科学の歴史においてエポックとなるような大きな成果につながるのではないかと、私は思っています。
 マントルは主にかんらん岩で構成されており、その対流が大陸の移動や火山活動などの原動力となっています。また、最近ではマントルに含まれて地球内を循環する膨大な炭素と水の存在に科学者たちの注目が集まっています。そのマントルを直接調査することができれば、地球の成り立ちや仕組みの解明に大きく貢献するはずです。
 マントルの調査は、先にあげた他の重要テーマにも深く関わります。マントルに到達するためには海底下の生命圏の限界を抜けていきますし、大陸形成や地球史の変遷などの研究にも成果をもたらすはずです。また、巨大地震の発生メカニズムの解明にもこれまで同様に取り組んでいきます。