地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

CDEX

陸上からもスムーズな運用を支援

DSPの位置情報画面   DPSのスラスター情報画面

図3.DPSの位置情報画面
(写真提供:三井造船株式会社提供)

 

図4.DPSのスラスター情報画面
(写真提供:三井造船株式会社提供)

 スラスタを適切に動かすにはさまざまな情報が必要になる。その一つが位置情報だ。「ちきゅう」は人工衛星によるGPS(全地球測位システム)と、音響測位システムを使う。二種類持つ理由は、やはり安全対策のため。例えばGPSは太陽のフレア発生やGPS衛星の故障等で受信障害が生じることがある、その場合には別の方式で位置情報を得なければならない。音響測位システムは、海底に設置したトランスポンダが船からの信号に応答して発信し返した信号を、船が受信して位置を割り出すというものなので、人工衛星と信号をやり取りするGPSとはまったくメカニズムが異なる。
 このほかに風向風速計やジャイロコンパスなども搭載しており、それら情報をコンピュータシステムで処理して、スラスタを制御する。2006年の掘削試験では最大風速26.8m/秒の暴風が吹いたが、船の位置のずれは概ね10m以内に保持されたという。また、掘削用ライザーパイプの傾きは最大2度までが作業許容範囲。そのレベルで位置を保てるのだから、いかに高度な技術が使われているのか、窺い知れる。
 DPSを運用するのは「DPオペレーター」という専門の資格を持った航海士たちだ。掘削位置を決める際には科学者から船の位置をもう数十センチずらしてほしいといった要望が出るので、彼らが巨大な船を操作する。位置保持中の際には操舵室で「DPコンソール」を監視。モニタには船の位置や方位、船が受けている風や波などの外力、スラスタの位置や動作状況などが表示される。ちょっとした異変でも見逃すことのないように、常に注意を払っている。
 また、山崎氏ら、陸上のメンバーは寄港した際に船内に乗り込んでメンテナンスを行うほか、常に洋上での運用を後方支援している。こうした連携もあって、DPSに大きなトラブルは一度も起きていない。「ちきゅう」の安全性は、二重三重の対策を施した高度な装置とプロフェッショナルたちによる厳格な運用によって守られているのである。

「ちきゅう」の模型と山崎氏