ちきゅうレポート
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ウィークリーレポート第5週
2007年12月19日

「ちきゅう」は、継続して掘削サイトC0002でのコア採取を実施しました。掘削孔Bでのコア採取は、海底下976.5mに達した付近から孔内状況が悪化し、繰り返し掘削パイプが崩れた孔壁に閉じ込められるようになりました。そのため海底下1057mの地点でコア採取を終了しました。

12月16日には次の掘削孔Cでの掘削を開始し、水圧式ピストンコア採取システム(HPCS)により海底直下のコアを2本採取しました。続いて掘削孔Dで水圧式ピストンコア採取システム(HPCS)と伸縮式コア採取システム(ESCS)により海底下204mまでのコアを採取しました。このコアは次年度以降のライザー掘削に向けた浅部土質強度の調査のためのものです。同時に孔内の温度計測も行い、海底下159mまでの温度分布を調べました。



南海掘削第315次研究航海に参加した「ちきゅう」乗船者達。

乗船研究者の約半数は既に12月13日に下船し、次の航海の研究者と交代しました。サイトC0002の掘削孔B、C、Dのコアの計測と記載の作業と併行して、両航海の研究者間での引き継ぎ作業を行いました。サイトC0002は予備サイトだったため事前にサンプルリクエストを募集していなかったので、コアの回収後すぐに処理する必要がある円柱状サンプルだけ船上でサンプル採取を行いました。

掘削孔Bのコアでは、非破壊の物性計測と肉眼による記載を、掘削孔Dのコアでは、それらに加えて剪断応力強度の測定を行いました。このサイトのコアは岩相によって四つの地層ユニットに分類することができます。一番下の地層ユニット4は、その上のユニット1-3と、構造、化学組成、物性が明らかに異なることが観察されました。

全ての掘削・コア分析作業を終え、11月16日から33日間に渡った本研究航海は12月18日に終了しました。引き続き、第316次研究航海が開始されます。

第315次研究航海のレポートは、共同首席研究者の芦 寿一郎とSiegfried Lallemant 、CDEX船上代表の澤田郁郎と阿部剛、そしてCDEX研究支援統括の眞砂英樹が報告しました。

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ウィークリーレポート第4週
2007年12月14日

「ちきゅう」は掘削サイトC0001を離れ、C0002に移動しました。海底に音響測位装置を設置した後、12月9日に掘削孔Bでの掘削を開始しました。海底下50mまでは水圧を加えて進入し、はじめは回転式掘削でコアを採取せずに進みました。海底下475m地点からコア採取を開始し、50本以上のコアを採取しました。12月14日現在、海底下1057m まで到達しています。海底下920mで熊野海盆の堆積物の基底に達し、付加帯に入りました。付加帯の岩石は、うろこ状の構造と特定の方向性を持つ亀裂が発達していて、海盆の堆積物とは見た目が大きく異なります。



シフトを組んで昼夜に渡りコアの観察や分析を進める。
コアの肉眼記載を行う林弘樹(日本)。

乗船研究者はX線CTスキャンや物性測定、岩相の記載、サンプリング等の通常の作業に加えて、プラズマ質量分析計(ICP-MS)を使った測定も行っています。12月8日には掘削サイトC0001の結果について議論しました。また12月11日には研究航海を総括するミーティングを行い、航海終了に向けて作業を加速させています。12月13日には乗船者の交代のため研究者の約半分が下船し、引き続き開始される第316次研究航海の研究者の乗船が始まりました。船上では研究者間で引き継ぎ作業を行っています。

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ウィークリーレポート第3週
2007年12月7日

IODP第315次研究航海の第3週は、サイトC0001の不安定な孔壁に悩まされる一週間でした。掘削孔Hで海底下452mまでコアを採取した後、掘削するのが難しい深度を掘り飛ばすために、コアを採取しない掘削方式に変更しました。無人探査機(ROV)の回収のために天候回復を待って、12月1日に掘削を再開しました。海底下600mまで二日間で到達し、12月4日に再びコア採取をするための掘削方式に変更しました。孔壁が不安定なため、コア採取を再開する前に孔壁を安定させるための作業を繰り返しましたが、状況は改善せず、この掘削孔Hでのコア採取を断念することにしました。引き続き、東に60m移動して、再度コア採取することとし、12月5日の午後に新しい掘削孔Iを開孔しました。海底下70mまで水圧を利用して進入し、さらに海底下433mまでコア採取をしないで掘り進みました。海底下522mまで進む間に何度かパイプが埋まってしまう問題が発生し、孔壁を安定させる作業を行っている間に、海底下467mの地点で再度パイプが埋まり、71トンの力を掛けることにより離脱しました。この結果を受けて、サイトC0001での作業を断念し、12月7日に掘削パイプの回収を開始しました。引き続き、次のサイトC0002に移動することになりました。



掘削作業中に「ちきゅう」を定点保持するオペレーター

乗船研究者はこれまでに採取したコアに加えて、掘削孔Hで採取した10.6m分のコアとIODP第314次研究航海で採取した掘削孔Bのコアの計測と肉眼による記載、サンプリングを行い、完了しました。掘削孔EとFにおいて、化石層序と古地磁気層序はよく一致し、良い相関を示すことがわかりました。サンプルを使って得た地震波速度と電気伝導度のデータと、IODP第314次研究航海の掘削同時検層(LWD)のデータを用いたコア・検層のデータ統合も行っています。これらの計測に加えて、研究者個人の研究計画に基づくサンプリングも進行しています。

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ウィークリーレポート第2週
2007年11月30日

IODP第315次研究航海も2週目に入り、掘削によるコア採取を進めています。11月23日以降、サイトC0001(NT2-03)の掘削孔Fにおいて、水圧式ピストンコアリングシステムによるコアを2本採取した後、さらに伸縮式コア採取システムで2本採取をしました。伸縮式コア採取システムはコアの回収率は良かったのですが、掘削によるコアの乱れが大きかったため、その時点で回転式掘削に変更することにしました。

ドリルビットを変更し、11月25日午前1時30分より、同じサイトの掘削孔Gで回転式掘削によるコア採取を開始しました。海底下74.5mまでは水圧を利用して圧入し、そこから掘削を開始しましたが、その直後に、海中の無人探査機(ROV)のケーブルが掘削パイプに絡むトラブルが発生しました。そのため掘削パイプとROVをいったん回収し、安全を再確認してから、10mほど離れた掘削孔Hで新たに掘削を開始しました。11月26日に、海底下230mの地点から回転式掘削によるコア採取を開始し、11月28日までに海底下448mまで掘削を進め、24本のコアを採取しました。この時点で、低気圧の接近よる天候悪化が予想されたため、掘削を一時中断し、再開に備えて海底に円錐状の孔口ガイドを設置しました。11月29日現在、天候回復待ちで待機しています。



ラボでコアを観察する乗船研究者。
左から、金松敏也(日本)、Jan M. Behrmann(ドイツ)
Babette Boeckel(ドイツ)、Pierre Henry(FRA)

乗船研究者は、これまでに採取したコアの肉眼による記載や、各種データ計測とサンプリングを続けています。また通常の計測に加えて、コア試料の元素組成の同定や、各研究者個人のサンプリングも実施しています。先週、堆積物中のガスが膨張してコアライナーが破損したケースがあったことから、コアの切断を行う際には、通常の防護装備に加えて顔を覆うシールドを装着して作業しています。

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ウィークリーレポート第1週
2007年11月23日

11月16日より第315次研究航海が開始されました。本航海では、海底下約600m及び約1,000mまでのコア採取を行い、付加堆積物の調査を実施するとともに、来年度ステージ2で実施予定の巨大分岐断層へのライザー掘削に向けた上部孔井設置作業を行う予定です。

第314次研究航海の終了後、船上で掘削機器の調整を実施しました。その間に、掘削直前会議を開催し、乗船研究者、掘削技術者など各部門が揃って科学目的、掘削計画などを確認するとともに、前の航海で採取した土質評価用コア(サイトC0001B)の計測などを研究ラボで実施しました。



構造地質学者がコアの変形構造などを記載している。

11月19日夕刻から水圧式ピストンコア採取システム(HPCS)の掘削機器の降下を開始しました。途中、強潮流による激しい振動によりコア採取システムの一部がパイプ内で外れる事態が起きましたが、すぐに再設置し、11月20日午前4時15分、水深2217mの地点において南海掘削で最初の科学目的のコア採取を開始しました。2本目のコアからは地層の温度計測も行い、11月21日朝までに13本のコア(海底下118.1m)を連続的に採取しました。しかし、14回目のコアリング中、コア採取機器の一部が壊れたため、この掘削孔Eでの作業をとりやめ、20mほど東に移動した同じサイト内で掘削を再開しました。

次の掘削孔Fでは、既にコアを採取した海底下108mまでは試料を採取せずに掘り進み、前の掘削孔より10m浅い地点から、コア採取を開始しました。10番目のコアが船上に回収された際、コアを1.5mに切断するエリアで、コアが入ったプラスティック製のケース(コアライナー)が破損しました。これは、堆積物中に多量のガスが含まれており、膨張した為と考えられます。今後の安全な処理方法を船上で検討し、実施することにしました。11月23日午前6時までに、本掘削孔で17本のコアを採取しました。

研究ラボでは、採取したコア試料の計測、記載などを決められた手順に沿って処理しています。11月22日夕刻には、採取されたコアにより、斜面堆積物を掘り抜く深度に達したと判断されました。この深度は、反射法音波探査データや掘削同時検層(LWD)によって明瞭な境界として認識されていた地点です。地層の温度計測は海底下179mまでのコア採取で7回実施し、非常に良好な地温勾配データを得ることができました。

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