ちきゅうレポート
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「ちきゅう」乗船はあこがれだった.....2010年12月20日

ハーイ、コンニチワ。第333次航海中ノ研究者里口(琵琶湖博物館)デス。ケッコー忙シーデス。ココデハ、0時カラ12時(夜シフト)ト、12時カラ0時(午後シフト)ノ2交代デ研究シテイマス。私ハ夜シフトナノデ、時差ボケノタメニ外国ニ来タ気分デス。マワリハミンナ英語デスシ(フランス語モ聞コエテキマスケドネ)。

おほん。さて、前回に研究者の事を紹介すると言ってしまったので、とりあえず私の事を。「ちきゅう」は国際協力で行われている海底掘削プロジェクト(IODP)を日本主導で行う航海をしています。IODPは長い歴史をもつ国際プロジェクトで、私が学生の頃から知っていました。でも、少なくとも私にとってそれは遠い世界のことで、そういう研究をする事はあこがれでもありました。そういう意味でいうと、私は夢を一つかなえつつあるといってもいいかもしれません。

見よ!この歴史の厚みを。ちきゅう船上にある科学掘削計画の研究報告書たち。
向こう側がかすんで見えない。


私は学生の頃から、数百から数十万年前にできた地層中にある火山灰の研究をしています。火山灰は地層中で白っぽい色をしている事が多く、泥や砂に比べるとピカッと光るので見るだけでも楽しいです。そういう綺麗な姿をしているのは、火山灰のほとんどが火山ガラスと呼ばれるものでできているからです。火山ガラスは火山噴火によって天然にできるガラスと思ってもらうといいかもしれません。さぁ想像してみて下さい!粉々のキラキラ光るガラスが、地表にもたらされ、それが地味な地層の中に眠っている姿を...。研究をする時には、顕微鏡で観察をします。その時は、もっと綺麗だぁ、という感想を持つことでしょう。ほ〜ら興味がわいてきたでしょう?

興味が出てきたらそれを調べたくなるでしょう?いや、きっとなるはずだ。さて、火山灰が火山噴火で噴出する事を説明しましたが、そういう光景は今の鹿児島県などでも見ることができます。ただし、私が研究しているのはそういう頻繁に起こっている火山噴火によるものではなく、一回の噴火で数百キロの範囲や、ひょっとしたら日本全体を火山灰が覆ってしまうような規模のものです。

今回、私はそういう広い範囲に広がった火山灰を調べようとしています。たとえば、今の九州は大分県で約90万年前と約100万年前に大規模噴火を起こした火山灰は、現在の掘削地点である紀伊半島沖から北にある大阪平野でも見つかっています。大阪や琵琶湖周辺などの近畿地方では、他にもたくさんの火山灰が知られているので、これらの多くが今回の掘削で見つかるだろうと予想しています。

さて、このような火山灰をみつける意味はなんだ?至極ごもっともな疑問。地層を対象に研究をする私たちにとって、その地層がどういうものでできているか?どういう積み重なりをしているか?いつ頃できたのか?を知ることは非常に重要です。なぜなら、そのデータは、みんなが研究するための最も基礎となるデータの一つだからです。噴火年代が分かっている火山灰を地層中に確認できれば、地層ができた年代を決める事が可能になります。

地震発生帯では、地層中に地震の痕跡が残される事があります。それらがいつ起こったのか?を知る方法として火山灰がその強い味方になります。また、火山灰は同じものが海底にも陸上にもたまるので、海底で起こった過去の出来事と、その同じ頃に陸上でおこった出来事との対応を調べることにも火山灰が威力を発揮する、と私は考えています。

さて、その一方で、私は採取した「堆積物の記載をする」という任務も負っています。堆積物の記載をするチームは全部で6人ですが、昼夜の2つのシフトに分かれるので、私のいる堆積学チーム夜シフトグループは3人です。そこでも役割分担があり、私に与えられた任務は「堆積物をちょこっと採って、それが何でできているかを顕微鏡で調べる役割」です。

どのくらいの作業が待ち構えているのか?火山灰の試料を採るだけではもちろん無いよねぇ?「採るだけ採って帰るっちゅうのは、虫がよすぎるんちゃうかぁ?おぉうっ?」なんて事は言われませんが、ちゃんと昼と夜の勤務シフトに分かれて24時間体制で研究が進んでいます。週末もありません。

地層の肉眼観察なら結構いけるし、まぁ、火山灰の分析で顕微鏡観察はやってきたから。。。えぇっ?微生物の化石とかも全部あわせて量比を調べる?!まぁ、時間がかかっても大まかな分類ならできるし任せなさい。。。えぇぇぇっ!毎日そんなにたくさん観察するの?っていうかそんなに見ないと終わらないの?ホ・ン・ト・ウ・デ・ス・カ???

最初に計画した観察スライドの数は(話し合いで)再検討されて、今はなんとか順調にやってます。とはいえ、殆ど揺れないとは言っても船の上で毎日ずっと顕微鏡を見ながらの作業はちょっと(どころじゃなく)大変です。まぁ、途中で地層試料の採取作業分担もあるのと(これもまた結構大変なのですが)、地層の観察記載をしているJan(ノルウェーからきました)やXRDという分析をしているKoray(アメリカから)のじゃまをしながら、毎日は忙しく過ぎていきます。

ちなみに、研究支援統括のMoeさんに「毎日忙しいですよね」という話をしたら、「乗船研究者が暇な時は、ボーリング作業に問題がある時だから、それは本当に大きな問題。忙しい方がいいよ」との事。全くそのとおりです。

堆積学夜シフトチーム。左からKoray、Jan、私です。
風の強い日に撮影したので顔がこわばっていますが、仲良しです。


里口 保文(琵琶湖博物館

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