ちきゅうレポート
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「引き続きだけれど気持ち新たに」2011年1月5日

あけましておめでとうございます。ちきゅう乗船中の里口です。
「ちきゅう」では、お正月でもいつもどおりのシフトで作業が行われています。ちなみに、初日の出をみようと夜シフトの人で見に行きましたが、残念ながら曇っていて、日の出を拝むことはできませんでした。せっかく沖合にいるのに。

「ちきゅう」からみた初日の出時間の空。
残念ながら曇り空なので初日の出は見ることができませんでした。


さて、前回の続きを。あとは地球化学分野だなぁ。個人的な事情をいうと私がもっとも不得意とする分野で、正直なところ大学の時にもこの分野の成績はというと...(他は良かったのか?)。という訳なので、そういうつもりで見て頂ければ。

まずはと...近くで分析作業をしていたMarionさんに「ハーイ、元気ぃ?ちょっと記事ネタに協力してよ」という軽いノリでお願いしました。MarionさんはXRFという分析機械をつかって堆積物の化学成分をはかっています。
堆積物の化学成分が深い場所にいくに従ってどのような変化があるのかを調べているらしい。その事は、地下で起こっている堆積物の変質の状況などとの関係があるそうです。なるほど、堆積物をあつかった研究だからまだ私にも理解できるかな。ただ、分析するための試料をつくるのにとても時間がかかるそうで、それにはとても苦労しているそうだ。確かにねぇ、試料の調整とかつくるのに時間がかかるよね。

じゃぁ、次に乗船前からの知り合いに聞いてみようかな。無機地球化学グループの齋藤さんです。彼はもともと洪水流の堆積学をやっていたはずなのですが、今回の乗船は無機地球化学研究者としてですね。その間にどういう心境の変化があったのかな?それは...おいといて。彼は地下にある堆積物中に含まれている水を絞り出して、その性質を分析しているとのこと。さて、それで何が分かるのでしょうか?


夜シフトの無機地球化学グループのMarionさん(左)と齋藤さん(右)。首席研究者のPierreさんとMarionさんがフランス語会話をしている光景は、まるで映画を見ているよう。写真は分析試料を準備しているところ。齋藤さんは静かな人という印象を持っていましたが、案外そうでもない。写真は泥に含まれている水を絞り出しているところ。

「深海の堆積物は、海にたまるのでその粒子の間には海水が関係しています。その海水成分が地下にいくに従ってどのように変化をしているのか?が、地下での水の動きを理解することに役立ちます。地震を起こすプレートの沈み込み帯ではこの水の動きが重要な役割をもっているのではないかと考えています。」

なるほど...じゃぁ、これまでにおもしろかった事とかはありますか?と聞いたところ、コアが上がってくるときには毎回見に行くそうですが、海底下にある泥は大きな圧力がかかっているので、確認のための小さな穴をあけると、泥がにゅるにゅると出てくるところがおもしろかったらしいです。そっちのおもしろさは何となく想像がつきます。

にゅるにゅる出てくる泥。深海底では高い圧力がかかっているので、上がってくる泥にも高い圧力がかかっています。そのため、写真のように小さな穴からにゅるにゅる出てくることもあります。破裂することもあるとのことなので気をつけないと危ないらしい。

次の人で最後かな。有機地球化学分野の彼に聞いてみよう。インタビューしていいかな?と聞くと、ちょっとはにかんだような「いいよ」という言葉がかえってきました。けれど本当に熱っぽく語ってくれました。彼の本当の興味は、劣悪な環境のはずの地下で活動する微生物についてだそうですが、「ちきゅう」での役割はメタンなどの有機化合物などの分析です。

彼の言うことをまとめると、次のような事だそうです。海には堆積物として粘土や砂がたまりますが、その堆積物中には有機物も含まれています。この有機物は太陽があたる海の表面で、藻類やバクテリアが作ったもので、これらの測定結果は数十万や数百万年前の海の環境、たとえば海流や水温、栄養量などを再現するために必要なものです、とのことです。
じつはこの記事のもとは彼の原稿です。インタビューをしたものの難しいと言っていたら、簡単なものを書いてあげるよと言ってくれた。やさしい。

夜シフトの有機地球化学グループのThorstenさん。Thoddyとよばれている。一見ファッション雑誌などでみかけそうな感じの彼は、非常に熱っぽく研究の事を語ってくれます。こりゃぁファンがいてもおかしくないよな。写真は作業が終わったあとに、分析処理室で撮影したもの。

というわけで、乗船中の研究について取材をしたわけですが、夜シフトのみんな協力ありがとう!!あれっ?よく考えると夜シフトの人しか登場していないっ!まぁ、それは私が夜シフトだからしょうがないということで許して下さい。

さて、お正月ということで、「ちきゅう」乗船中の研究者ほかの人達で書き初め大会をしました。今回は首席研究者のお二人による書き初めで締めくくりたいと思います。

首席のお二人による書き初め。どちらも真剣。
書き初め大会で使った二つのお手本文字「新春」と「ちきゅう」でした。


里口 保文(琵琶湖博物館

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