ちきゅうレポート
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「魔法の玉“Well Commander”」2018年12月18日

JAMSTEC高知コア研究所の廣瀬です。「ちきゅう」船上で銀色に輝くドラボンボール(?)を発見しました!


「ちきゅう」で見つけた7つの銀色のボール。表面には“Opening Closing Ball(開閉ボール) Well Commander(孔の司令官)”という刻印。かっこよすぎる。


これは何に使うか想像つきますか?なんと船上からドリルパイプの中に投げ込む玉なんです。パイプの中を約5000mも自由落下していって、ドリルビットのすぐ上にあるアンダーリーマーというツールを作動させるための玉なんです。5000mも物を落とせる、想像しただけでワクワクしませんか?地球上、どこを探してもそんな場所ありませんよ。ドラゴンボールは7つ見つけたら願い事がかなう神秘の玉。廣瀬は下船前に「自らの手でこの玉を孔に投げ落とす」という夢を叶えることができるのか。こうご期待(12/18)


本航海で、科学掘削史上最も深い掘削孔底(海底下3262m、海面下5201m)に到達した際、実際に使っていたドリルビット。

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「ブログレポート(木下最終)」2018年12月7日

木下です。今日12/7に「ちきゅう」から下船します。10/23に乗船して以来,1か月半の船生活でした。

現在の掘削深度は船からの深度にして5210m,掘削開始地点が4855mでしたから,新たに355m掘削したことになります。そのほとんどは,11/17以降に掘削したものですから,「サイドトラック」がいかに大変であったかが分かります。

「2か月でたった300m?」と思うかもしれません。しかし海面から5kmのところを掘っていることを想像してください。時速3mとか5mで地層を掘り進むビットを想像してください。そのビットは1分間に150回転もしています。速いですねえ,一体どんな音がしていることでしょうか。ちなみに海底での科学掘削では,日々世界記録更新中なのです。

11/7に,金川さんに代わって廣瀬さんが共同首席として乗船してきました。研究者とラボ・船・掘削の間で,様々な調整をしてくれる,極めて重要なEPMのSeanさんもこの日以来,一緒に仕事をしています。正直,いまだに掘削に関する状況全般がつかみにくいのですが,Seanはドリルパイプからトップドライブの調子,泥水比重,ケーシングなど,豊富な経験で我々を助けてくれました。彼も今日12/7に一旦下船します。ありがとうございました。

さて,これからも毎日記録更新です。私も,これからは陸上のサイエンスリーダーの一人として,断層到達に貢献していきます。これからもどうぞよろしくお願いします。



SL廣瀬さんとEPM Seanは実にいいコンビでした。



海洋科学掘削の深度の新記録を喜ぶ、船上の研究者たち

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「地下深くからやってきた小石」2018年11月25日

JAMSTEC高知コア研究所の廣瀬です。11/6からサイエンスリーダー(共同首席研究者)の1人としてChikyuに乗船しています。待ちに待った地質試料(カッティングス)が、海面下約5000m(海底面下~3000m)の地下深くからあがってきました。この地質試料(写真中央)は数時間前まで、温度100℃前後、圧力>70MPa(約700気圧以上)の高温高圧状態にあったものです(すごくない?)。そんな試料に手で触れながら、地下深くではきっとこんなことが起こっているんじゃないかと、色々な妄想を膨らませています。地震発生帯プレート境界まであと約2000m。史上初めての地震発生帯からのサンプルリターンは目前(?)です。楽しみにしていてください!
(11/25:廣瀬)



ただの黒っぽい砂利石にしか見えない試料(OSI猪川さん提供)。でも研究者はワクワクです。PC画面に映っているのは、ドリルビット近くに埋め込まれたセンサーで捉えた地下深くの物性情報。このような情報をフルに活用して、地震発生帯を目指しています。

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「今週の動向(10/28-11/4)」2018年11月7日

先週のブログではBOP設置が終了し、5年前(2013年)に掘った孔(あな)に再突入するところまででした。


今週は引き続いて、その孔の底(海底から約3km)までの状態をチェックし、孔底近くのケーシングから横に孔を開ける(サイドトラックする)準備をしました。いよいよ新たな深度への掘削が始まります。


研究者は依然として2名、金川さんと木下です。いざ、地層のかけら(カッティングス)が上がってきた場合の試料処理の流れをおさらいし、研究者が乗船してきたらすぐに作業が開始できるよう、準備を進めています(実際にはEPM前田さん、そしてマリンワークジャパンのラボテクニシャンがあらゆる可能性を考えて作業のシミュレーションをしてくれています)。


その他、掘削と同時に孔内情報を得るツール、LWDで得られるデータ処理を行うLSSの人たち、さらに、孔内の状態を常に監視して、孔が崩れないように掘削者にアドバイスするRTGの人たちも乗船してきました。


来週は6日に金川さん、前田さんが下船、次のサイエンスリーダーの廣瀬さん、EPMのショーンさんが乗船してきます。我々は、「コチーフ部屋」に詰めています。サイエンスリーダー2名が昼と夜とで、12時間ずつ交代で詰めている航海もありますが、今のところは二人とも昼間に仕事をしています。木下は5時くらいに起きてきて、9時からの電話会議を覗いてはコチーフ部屋で仕事(+昼寝)、17時からちょろっと自転車を漕ぎ、シャワーの後に夕食などという生活です。
(11/5:木下)


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「6回目の「ちきゅう」乗船」2018年11月1日

あと数日で下船となりました。私は今回、9名いる共同首席研究者のトップバッターとして10月 7日の研究航海開始時から乗船しましたが、本格的な掘削開始前に下船することになります。この間、駿河湾沖でのコアリング試験、紀伊半島沖超深度掘削地点 (C0002) におけるライザー管の海中への投下と海底孔への接続作業、掘削孔内のセメント除去作業等、掘削に向けた準備作業が行われてきました。間もなく本格的な掘削作業が開始される予定です。この間私は、コアリング試験で得られたコア試料の確認、ライザー掘削で得られるカッティングス試料の処理方法の確認、乗船研究者らからのサンプルリクエストのレビュー、研究航海レポートの下書き作業や、取材対応などにあたってきました。最初の2週間、研究者は私1人で、研究支援統括の前田さんと2人で静かに仕事をしていましたが、先週から共同首席研究者2人目の木下さんが乗船してきて、少しにぎやかになりました。


私は今回が6回目の「ちきゅう」乗船になりますが、海底下1052.5 mまでコア試料採取を行った2007年の第315次研究航海(研究者として約3週間乗船)、海底下2005.5 mまでライザー掘削してカッティングス試料採取を行った2012~2013年の第338次研究航海(共同首席研究者として約45日間乗船)、海底下3058.5 mまでライザー掘削してカッティングス・コア試料採取を行った2013~2014年の第348次研究航海(オペレーション連携要員として約2週間乗船)など、超深度掘削地点における掘削に10年以上にわたり関わってきました。今回が超深度掘削地点における最後の掘削になり、数年後に定年退職を迎える私にとっても最後の「ちきゅう」乗船になると思うと、感慨深いです。


思い返すと、この地点の掘削は苦難の連続でした。第338次研究航海は2012年11月中旬に海底下2005.5 mまでライザー掘削後、11月17日の寒冷前線通過時に強い海流の影響でライザー管が損傷し、以後ライザー掘削を断念せざるを得ませんでした。第348次研究航海は2013年12月31日に海底下3058.5 mの科学掘削最深記録を樹立しましたが、孔壁が不安定でその深度より先には掘り進めませんでした。それから5年後となる今回の第358次研究航海では、時間をかけて万全の準備を整え、来年 3月21日までの予定で、海底下約5200 mに想定されているプレート境界断層(1944年に発生した東南海地震の震源域南端付近に位置しています)まで掘削し、物理検層と試料採取を行うという目標達成に向けて、船の運航管理に関わる皆さん、掘削業務に関わる皆さん、研究支援業務に関わる皆さんや乗船研究者など、多くの関係者全員が最善を尽くそうとしています。私も関係者の1人としてこの研究航海に関われることを誇りに思いますし、是非とも成功してほしいと願っています。もし成功すれば、沈み込み帯震源域の地震発生断層の物理条件や物質・物性に関する情報が初めて得られ、地震発生過程に関する理解が飛躍的に進むと期待されます。また将来的にこの掘削孔深部に観測機器が設置され常時観測態勢が整って、巨大地震の前兆現象を察知することにより、地震・津波災害軽減に大きく貢献できるようになることを願っています。

(11/1: 金川)

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「今週の動向(10/23-27)」2018年10月27日

10/23に木下が乗船し、サイエンスリーダー(共同首席研究者)2名体制が開始しました。ライザー管が海底の孔口に接続され、今はサイドトラックして掘削を始める準備が着々と行われています。まだ乗船研究者は乗船していません。本プロジェクトで乗船するサイエンスリーダーは全部で8名ですが、そのうち2名が乗船し、EPM(研究面のマネジメントを行う人)とともに、掘削開始と同時に乗船する研究者のための準備を行っています。


作業は順調で、予定通りに進んでいます。大きなニュースとしては、黒潮の蛇行が航海中(来年3月まで)は継続するという予測が発表されたことです。現在潮流は1ノット以下で安定しており、ライザー管にとっては非常に「優しい」環境となっています。黒潮が4ノットくらいまでは対応できるように準備してもらってはいるのですが、当然、黒潮がないほうが作業がはかどりますし、何より予備の時間が増えることが大きな安心です。


木下は、今年の2月にも「ちきゅう」に乗船、共同首席研究者として南海トラフ付加体先端部に孔内計測機器の設置を行いました。南海掘削以外を含めると今回で7回目の乗船です。最初に乗船したのが2007年ですから、もう10年以上も「ちきゅう」とお付き合いしていることになります。いつ乗船しても「ちきゅう」は大きな体で受け止めてくれます。「動かざること山の如し」とはこのことです。


来週は、いよいよ掘削の再開です。いきなり付加体の変形したところを掘って行くことになりますが、ドリラーたちの卓越した技術で乗り越えられるでしょう。早速得られる検層データやカッティングスがどんなものか、楽しみです。(10/27: 木下)

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