========================================CHIKYU MAIL NEWS====== ■「ちきゅうメールニュース」162号(2010年12月14日) 地球の謎に挑戦する地球深部探査船「ちきゅう」や IODP研究プロジェクトの最新情報、イベント情報など 科学と技術に関する記事を皆様にお届けします。 ============================================================== ------------------------------------------------- 【プレスリリース】 統合国際深海掘削計画(IODP)第332次研究航海の終了について 〜長期孔内観測装置の設置に成功〜 http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20101213_2/ ------------------------------------------------- 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)の運用する 地球深部探査船「ちきゅう」は、本年10月25日より、統合国際 深海掘削計画(IODP)第332次研究航海として、紀伊半島熊野灘 において「南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ2 ライザーレス掘削による長期孔内観測装置の設置」を実施して いましたが、12月11日をもって航海を完了しました。 本研究航海では、国家基幹技術である「海洋地球観測探査システム」 の一環として開発した長期孔内観測装置の設置に成功しました。 これにより巨大地震の発生メカニズムの解明および発生時の リアルタイム情報の取得等に資する観測が可能となります。 本研究航海の概要を以下の通りご報告します。 1.実施内容 本研究航海では、巨大地震発生メカニズムの解明を目的として、 昨年度に掘削した巨大分岐断層最浅部(C0010地点、水深2,523.7m、 ケーシング深度544.3m)において、第319次研究航海で孔内に設置 した温度・圧力計の回収を行うとともに、採水機能および微生物の 採取・現場培養機能を有する間隙水圧・温度計を設置しました。 さらに、将来の超深度ライザー掘削孔井地点(C0002地点、水深 1,937.5m)において、海底下980mまでのライザーレス掘削および 掘削同時検層(LWD)を実施し、孔内にケーシングパイプを設置後、 恒久型の長期孔内観測装置を設置しました。 本研究航海は、荒木英一郎(海洋研究開発機構・技術研究主任)、 Achim Kopf(ブレーメン大学・教授) が共同首席研究者を務め、 日本からは共同首席研究者を含む3名が乗船したほか、米国、 欧州からも含め、計8名が乗船研究者として参加しました。 2.結果概要 (1)C0002地点における長期孔内観測装置の設置 C0002地点において、南海掘削における最初の長期孔内観測装置の 設置に成功しました。この長期孔内観測装置は、熊野海盆の海底下 約1kmに到達する掘削孔内の約750-940mの深度に地震・地殻変動などを 観測する複数のセンサー((1)歪計(2) 傾斜計(3)温度計 (4)間隙水圧計(5)広帯域地震計(6)短周期地震計(7)強震計)を 設置固定し、ケーブル等によって接続したものです。 C0002地点は、100年〜150年の間隔でマグニチュード8クラスの地震 を引き起こす東南海地震震源域の海溝側の端に位置しています。 設置に成功した長期孔内観測装置は、孔内の安定した地層内に セメントで固定しており、これまでのような軟らかい堆積層の上で 行う観測と比べ、地震断層やその周辺の地殻の微小な変動をより 高感度かつ高精度に観測・監視することができます。 (2)C0010地点における一時的孔内観測の実施 C0010地点では、東南海地震を起こす地震断層から分岐する主要な 分岐断層の一つを貫通し、分岐断層の継続的な孔内モニタリングの 実現を目的としています。昨年5〜8月に実施した第319次航海に おいてライザーレス掘削で分岐断層を掘り抜き、分岐断層における 孔内間隙水圧および温度を測定する観測装置の設置を行いました。 今回の第332次研究航海では、第319次研究航海で設置した装置の 回収に成功し、設置から約15ヶ月間の孔内間隙水圧・温度に関する 良好なデータが得られました。回収された記録からは、予想されて いた地層間隙水圧の潮汐に対する応答のほか、環太平洋域で発生 した地震・津波の形跡やそれに伴う地殻の変形を示唆する結果が 得られています。この観測結果は、この地点における将来的な 長期孔内観測装置の設置計画の最適化に有益なものです。 また、今回は間隙水圧・温度計に加え、地震の発生によって引き 起こされると考えられている地層内流体の変化の把握に必要な 採水機能、さらに微生物の採取・現場培養機能を追加した観測装置 の設置にも成功しました。本装置を用いて、次回C0010地点に 長期孔内観測装置を設置するまでの間、孔内観測を続けます。 3.今後の展望 今後の計画としては、C0010地点にも長期孔内観測装置を設置し、 同地点においても分岐断層のモニタリングを行う予定です。 さらに、東南海地震震源域周辺の地震・津波の監視を目的として 紀伊半島熊野灘に設置している海底ケーブル地震・津波観測 ネットワーク(DONET)に長期孔内観測装置を接続し、海底および 海底下の総合観測ネットワークにより東南海地震震源域 におけるリアルタイムの観測・監視を実現します。 4.「ちきゅう」の今後の予定 「ちきゅう」は引き続き12月12日より平成23年1月10日までの予定で、 第333次研究航海として「南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ2 インプットサイト掘削-2および熱流量の測定」を実施します。 ※ 地震・津波観測監視システム(DONET) 東南海地震を対象としたリアルタイム観測システムの構築および 地震発生予測モデルの高度化等を目指し、東南海地震の想定震源域 にあたる紀伊半島沖熊野灘に設置中の海底ネットワーク観測システム。 従来の観測システムではなし得なかった深海底における多点同時、 リアルタイム観測の実現を目的としており、各観測装置からの リアルタイムデータは、気象庁、防災科学技術研究所及び大学などに 送られる計画。 ------- 本プレスリリースに掲載した長期孔内観測装置の模式図、 無人探査機にて撮影した海底作業の様子は、下記ウェブページで ご覧いただけます。 http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20101213_2/ また、本航海の模様はJAMSTECホームページ「ちきゅうTV」 (http://www.jamstec.go.jp/chikyu/nantroseize2010/)にて 12月13日から配信いたします。 「ちきゅう」の最新情報は、ツイッターでもお伝えしています。 twitterアカウントは@Chikyu_JAMSTECです http://twitter.com/Chikyu_JAMSTEC/ ------------------------------------------------- 2010年も残すところわずかとなってきました。 みなさまに「ちきゅう」からグリーティングカードをお送りします。 この季節にぴったりのデスクトップ壁紙にもどうぞ。 http://www.jamstec.go.jp/chikyu/greetingcard.html ========================================CHIKYU MAIL NEWS====== 「ちきゅうメールニュース」登録中の方にお送りしています。 配信の登録・中止はこちらから http://www.jamstec.go.jp/chikyu/jp/mailnews/ 「地球発見」ウェブサイトは、地球深部探査船「ちきゅう」と その科学と技術に関する情報ポータルサイトです。 http://www.jamstec.go.jp/chikyu/ 統合国際深海掘削計画(IODP)は、複数の科学掘削船を用いて 深海底を掘削することにより、地球環境変動の解明、 地震発生メカニズムの解明、地殻内生命の探求等を目的として 研究を行う国際研究協力プロジェクトです。http://www.iodp.org/ 海洋研究開発機構地球深部探査センターは、IODP日本実施機関として 地球深部探査船「ちきゅう」を運用しています。 発行:JAMSTEC/CDEX 海洋研究開発機構 地球深部探査センター =============================================================