地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

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歴史がつくられつつある……

 「ちきゅう」のIODP第337次研究航海には、JAMSTECの稲垣史生上席研究員と、ドイツのブレーメン大学のカイ−ウエ・ヒンリッヒ(Kai-Uwe Hinrichs)教授を共同首席研究者とする国際チームが参加し、先ごろ任務を終了しました。
 この航海において、八戸沖の海底下を2,466mまで掘削し、海洋科学掘削プロジェクトの最深度記録を更新。そして、生物学的な研究に用いることのできるサンプルを回収することに成功しました。
 サンプルは、まず船内のラボで分析され、海底下から2km以上も深い地点の物理的、化学的、地質的特性が確認されました。そして、回収したサンプル全てにわたって、過去から現在まで、様々な生命体が存在していることを突き止めようとしています。
 私はいま、アメリカのサンディエゴとワシントンD.C.にあるJ・クレイグ・ベンター研究所で環境ゲノムの研究をおこなっています。今回、数年の準備期間をかけて計画、実行された瞬間に立ち会えたこと、そして、「ちきゅう」の船上で、稲垣博士と共にゲノム分析の準備を始めることができたことは本当に幸せでした。私も、この研究プロジェクトに参加し、サンプルから抽出される遺伝子の解析をすることになっています。


 「ちきゅう」における短い滞在期間中、私は「歴史が作られつつある」という思いを禁じ得ませんでした。今まで誰も見たことのないサンプルを直接この目で見ることができ、そして、「なぜ生命がこの星に現れたのか」という謎を解くための扉を開けることができたのですから。
 「なぜ、たいへんな思いをして、多額の費用もかけ、誰も行かないような場所で生命の研究するのか?」
 そういう疑問もあるでしょう。しかし、それにはいくらでも説得力のある答えを挙げることができます。地球深部の微生物細胞を研究することで、地球における生命の起源や進化を理解するのに役立つ新しい情報が手に入るかもしれません。その遺伝情報を理解することで、生命の機能や適応領域を広げることができるかもしれません。そして、人類の産業や医療に応用できる能力をもっているかもしれないのです。地球深部生命圏を理解することで、地下深部の地層への二酸化炭素の貯留を可能にする、その地質学的環境を特定することにも役立つでしょう。海底下深部の経済資源の理解にも役立つことでしょう。
 地球深部の生命に関する研究は、こうした革新的な発展の可能性を秘めているものなのです。
 一つ、確実に言えることがあります。今回、有能なスタッフと、すばらしい研究者が参加した「ちきゅう」に訪問することができて、本当に良い時間を過ごす事ができました。「ちきゅう」を使って研究を行う事で、近い将来きっとすばらしい科学的発見がうみ出されるであろうと期待しています。