
紀伊半島沖の海底に地震・津波観測システム(DONET)を構築中だ。2013年1月、すでに稼働開始している海底の観測網に、今回、IODP第332次研究航海で「ちきゅう」が設置した海底下約980mまでの長期孔内観測装置が加わった。今、科学の最前線は、いかに巨大地震を捉えようとしているのか。
(2013年2月掲載)
| 取材協力 金田義行 海洋研究開発機構 地震津波・ 防災研究プロジェクト プロジェクトリーダー 技術研究統括 |
海底下深部の観測装置をDONETに接続
2013年1月24日。三重県尾鷲市沖南東約80kmの海底をJAMSTECの無人探査機「ハイパードルフィン」が潜航していた。目的地は、IODP第332次研究航海「南海掘削:ライザーレス掘削による長期孔内観測装置の設置」において地球深部探査船「ちきゅう」が2010年12月に設置した長期孔内観測装置である。
長期孔内観測装置は、水深1,937.5mの海底から海底下約980mまでにわたり設置され、地震計、傾斜計、歪計、温度計などをもつ。ハイパードルフィンの目的は、この観測装置と紀伊半島沖の「地震・津波観測システム(DONET)」をケーブルで接続することだ。この接続によって、地下深部の観測データがリアルタイムに陸上局へ送られることになる。
1月24日。尾鷲市古江町の陸上局で、長期孔内観測装置のデータが初めて確認された。私たちは、南海トラフにおける巨大地震を理解する手段をまた一つ手に入れたのである。
西日本の太平洋底に構築されるリアルタイム観測網
DONETとは何か?
現在、紀伊半島沖南東の海底に展開された20か所の観測点が展開されている。チタンのケースに地震計や水圧計などを搭載し、海底下数mに埋設したものである。これらの観測点は、ケーブルで陸上局へつながり、将来の東南海地震に対するリアルタイム観測網となっている。
「DONETは『ノード』を採用している点がポイントです」。地震津波・防災プロジェクトの金田義行プロジェクトリーダーはいう。ノードとは、いわばコンセントのシステムである。古江町の陸上局につながるケーブルは大きく円を描くように敷設され、そのケーブルから分岐した先にコンセントのタップのような「ノード」がつながれている。ノードは合計5つ。各ノードには8個の“差し込み口”があり、各観測装置はこの口から先にケーブルを延ばして設置されている。5つの各ノードに4つの観測装置。合計20か所。これがDONETである。
「DONETには、冗長性と拡張性があります」と金田プロジェクトリーダー。
DONETの冗長性とは、陸上局からのケーブルはループ状で、左回りでも右回りでもデータを受けとることができるため、ケーブルが仮にどこかで切断されても、途絶えることなくデータ受信が可能ということだ。
また、拡張性とは、ノードを採用したことで、観測装置の交換や新設が容易に可能となったことである。今回の長期孔内観測装置は、まさにこうして接続された。

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