
本研究では、東海沖から日向灘を含んだ南海トラフ地震発生帯全域において、反射法・屈折法地震探査および長期自然地震観測データによる構造研究を行い、南海トラフ地震発生帯のプレート形状、およびプレート境界物性を把握し、これにより、連動型巨大地震発生評価のため地震発生帯の物理モデルの高度化を図ることがねらいです。
平成21年度に日向灘から調査を開始し、毎年調査海域を東方へ移動させ、平成24年度の東海沖まで実施してきました(図1)。これまでの調査では、毎年総距離が約800kmの探査測線上に設置した海底地震計(OBS)150~200台により、制御震源であるエアガンの発振の記録、3ヶ月程度の自然地震観測、および長期観測用OBS15~20台による9ヶ月程度の自然地震観測をすることによりデータを取得しました。
これまでの構造解析の結果から、日向灘から四国沖にかけてのフィリピン海プレートの形状が空間的に詳細に把握できました。沈み込むフィリピン海プレートは、東の南海トラフ側の通常の海洋地殻から、薄い海洋性地殻の「遷移帯」を経て九州パラオ海嶺の厚い地殻へと変化してします(図2a)。遷移帯の西端が1968年の日向灘地震(Mw7.5)の滑り域南西縁と一致していることが特徴的です(図2b)。さらに、日向灘における短波長速度不均質が強い領域は、構造解析から推定された沈み込んだ九州パラオ海嶺が存在する領域と概ね一致し、海嶺の構造を反映していると考えられます(図2c)。
また、深部低周波微動・地震の発生域の構造についても、空間的な変化があることがわかりました。例えば、1946年の南海地震の西縁にあたる豊後水道の東西で深部低周波微動の発生領域が異なり、西側では島弧モホとプレート上面接合部が、東側はやや浅いプレート境界が微動発生領域であることが明らかになりました。さらに、深部低周波地震・微動の空白域となっている紀伊水道周辺の構造探査データ解析の結果、島弧地殻最下面に相当する反射面が周辺よりも有意に浅く、また海側まで張り出して存在している可能性が示されました(図3)。これは、南海・東南海地震震源域境界に関わる急激な変化が沈み込むプレート形状の変化だけではなく、上盤プレート内部でも存在することを示唆しており、深部低周波地震・微動の空白域となっていることとも関連があると考えられます。
以上を含む構造解析の成果に基づき、地震発生帯の物理モデルを高度化するため、南海トラフ地震発生帯の3次元的なプレート形状と速度モデルの構築、3次元的な可視化を試み、これまでに日向灘から紀伊水道までの一部の構造情報を用いたプレート形状モデルを構築することができました(図4)。深部低周波地震はプレート上面付近で発生している様子も確認できます。今後もモデル領域を拡張し、既存のモデルとの統合などにより、シミュレーション研究での実用化を目指します。