文部科学省委託事業

東海・東南海・南海地震の連動性評価研究

地震に強い社会をめざして。防災分野が連携して、東海・東南海・南海地震の連動発生を評価します。

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人口減少社会における復旧・復興のあり方を考える

日本社会は、2004年をピークに人口減少社会へ転じ、高齢化率の高まりにより、徐々に災害からの回復力が低下していくことが懸念される。本研究は、如何にして人口減少社会において「回復力」を保つのかという観点から、東海・東南海・南海地震後の復旧・復興戦略のあり方について考えることを目的とする。

2030年の東海・東南海・南海地震の想定被災地域の姿

人口構成(人口ピラミッド)を元に地域を分類すると日本の地域は「持続型」、「依存型」、「限界型」という3つのタイプの地域に分かれる。「持続型」の地域とは将来的にも持続的に人口が増加していく事が予想される地域であり、「依存型」の地域とは、20-30代の人々にとっては不可欠な大学や職場の機能が存在しないために生産人口が流出し、「持続型」の地域に高等教育や職場の機能を「依存」している地域であり、「限界型」高齢人口が老化すると同時に非高齢者が転出し地域の存続事態が危惧される地域である。

こういった類型をもとに東海・東南海・南海地震の被災地域において2005年、2030年の地域類型を行い、さらに地域類型の変化を抽出したものが図1である。

地域類型の変化(2005/2030)
地域類型の変化(2005/2030)

災害復興後の地域の姿は、災害前の地域特性により決定される

災害復興後の地域の姿は、基本的に災害前の地域の姿・地域変化のトレンドにより決定される。復興事業により地域の衰退傾向に歯止めをかけることは難しい。したがって、復興戦略の策定に際しては図1に示した、地域類型の変化を考慮することが重要になる。

図2は2004年新潟県中越地震の被災地域の災害前の地域類型(2000年)と、震災後の人口変化(2000年-2008年)の関係を示したものである。東海・東南海・南海地震の被災地域と同様、地方都市であっても各市町村の中心市街地には「持続型」の地域が存在し、災害前に持続類型であった地域では人口が増加している。しかしながら、それ以外の地域では災害後も人口減少は止まらず、むしろ加速されている。図3は阪神・淡路大震災の被災地について、1990年(災害前)と2005年(復興後)の地域類型の変化を示したものであるが、基本的には災害前の地域類型が復興後の地域の姿を決定づけている。

しかしながら、例外もあり長田区と中央区では地域類型が「依存型」から「持続型」へと変化している。長田区が「持続型」へと変化した原因は、大規模な再開発事業である。安価なマンションが大量に供給されたことで、若年層の流入が進み、地域の人口構成が大きく変化し「持続型」の地域類型へと変化したことによる。

災害前の地域類型と人口回復(2004年新潟県中越地震)
災害前の地域類型と人口回復(2004年新潟県中越地震)
災害前の地域類型と人口回復(2004年新潟県中越地震)
災害前の地域類型と人口回復(2004年新潟県中越地震)
阪神・淡路大震災における災害前(1990)と復興後(2005)の地域類型
阪神・淡路大震災における災害前(1990)と復興後(2005)の地域類型

人口減少社会における地域の復旧・復興戦略

 人口減少社会では、災害復興事業により大きく地域の姿を変えることが難しい。したがって、地域ごとの地域類型のトレンドを考慮し、全国一律ではなく、地域ごとの復旧・復興戦略を考えておくことが重要になる。地域類型の変化を考慮した地域ごとの復興戦略は図4のようになる。将来に渡って地域類型の変化が予想されない地域では、現在実施されているのと同様の元に戻す形式での復旧・復興を行うが、「持続型」→「依存型」/「依存型」→「限界型」といったように下向きのトレンドにある地域については、最低限の復旧を行うだけにするというのがこの考え方である。

しかしながら、災害発生後に「この地域は最低限の復旧のみを実施する」という復興方針を打ち出しても、地域の人々に受け入れられることは困難である。災害前から災害復興のあり方について十分議論を行っておくことが重要であり、東海・東南海・南海地震の被害が想定される地域では、地域の将来計画の中で災害後の復興について検討を行う必要がある。

地域類型ごとの復旧・復興戦略
地域類型ごとの復旧・復興戦略