文部科学省委託事業

東海・東南海・南海地震の連動性評価研究

地震に強い社会をめざして。防災分野が連携して、東海・東南海・南海地震の連動発生を評価します。

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地域研究会の開催

 「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」においては、理学・工学的な研究成果を実際の防災対策に活かすことが求められている。本講演ではこれを目的として開催してきた地域研究会について報告する。 地域研究会は、プロジェクトの関係者とともに、地域の自治体、ライフライン事業者、防災研究者などが一堂に集まり、原則非公開の場で議論を行うものである。プロジェクト開始初年度に、高知、名古屋、大阪においてそれぞれ研究会を発足させ、次年度に紀州地域を対象として分科会を開始した。さらに、本プロジェクトによって、南海トラフ巨大地震が日向灘まで連動する可能性が示されたことから、今年5月に九州で新たな研究会を立ち上げ議論を開始したところである。

各地域、年1または2回程度のペースで開催し、本プロジェクトの成果をもとに、地域特有な防災対策(たとえば、高知地域研究会においては、長期の浸水被害対策や地震動・津波および複合災害の予測、など)について議論を重ねてきた。さらに、津波を防ぐ水門施設を見学するなど、防災対策上において重要となる施設や地区を対象とした野外巡検なども企画している。 昨年9月頃にこれまでの地域研究会の活動がどう参加機関の防災対策に貢献したかを明らかにすることを目的として、参加者に対してアンケート調査を実施した。

アンケートの「防災対策を考える上で地域研究会での議論は参考になったか」という問いに対して、高知地域市研究会では64%、大阪市地域研究会では54%、名古屋市地域研究会では31%の参加者が、5段階評価の最も高い「とても参考になった」と答えている。高知では、地方自治体が今まさに取り組もうとしている対策について、研究者から判断材料となる情報を提供できたことが高評価につながったと考えられる。名古屋については「話題に偏りがあり専門的過ぎて理解できなかった」という意見が出ており、このような理由でやや低い割合となったのではないかと考えられる。改善すべき点については、「具体的な被災状況等を知ることと、被災状況を想像できるような議論を深めることが必要」や、「研究者側からのアウトプットに留まらず、利用者側の視点を取り入れたアウトカムの意識を持つこと」の意見が目立った。また、「地域研究会は情報交換の場として割り切って継続することが大切」という意見もあった。裏を返せば、地域内連携がいまだ不十分であることを意味しており、今後も地域研究会を継続し、より一層の努力が必要であると言える。

各地域研究会の様子

地域研究会とは

自治体や事業者の今後の防災対策に生かせるような地震研究成果にするため、研究段階から意見交換する場を設置。
防災対策責任者と研究者との連携により、地域の実情に沿った実効性の高い防災戦略、復旧・復興施策の策定に向けた項目立て・要素の洗い出しを行うとともに、地震調査研究における課題を整理する。

開催場所 名古屋、大阪、高知、紀州、九州
開催頻度 研究会 年1から2回
分科会 適宜
参加者 地方自治体、ライフライン事業者の防災担当者、地元研究者、プロジェクト研究者など
会議形式 非公開 参加者が全員が集まる「研究会」の他に、特定の議題について、詳細な議論をするための少人数の「分科会」も開催

各地域研究会の特徴

地域 参加機関 開催実績 主要テーマの例
高知 地域研究会 四国地整、高知県、高知市、徳島県、徳島市、阿南市、香川県、四国電力、高知ライフライン連絡会、港湾空港技術研究所、国土技術政策総合研究所、高知大学、徳島大学、山口大学、高知地方気象台、徳島地方気象台、高松地方気象台、プロジェクト関係者 2008.11 ミニシンポ
2008.11 第1回
2009.03 第2回
2009.07 第3回
2009.10 第1回(分)
2010.02 第4回
2010.07 第5回
2011.03 第6回
2011.08 第7回
2012.12 合同会
■長期浸水対策
■地震動・津波予測
■複合災害の予測
大阪 地域研究会 近畿地整、大阪府、大阪市、和歌山県、和歌山市、大阪広域水道事業団、大阪ガス、関西電力、東海・東南海・南海地震津波研究会、和歌山大学、大阪管区気象台、和歌山地方気象台、プロジェクト関係者、オブザーバー 2008.12 ミニシンポ
2008.12 第1回
2009.03 第2回
2009.08 第1回(分)
2009.10 第2回(分)
2010.02 第3回
2010.07 第4回
2011.02 第5回
2011.08 第6回
2012.12 合同会
■地盤モデルの構築、強震動予測の高度化
■複合災害の予測
名古屋 地域研究会 中部地整、愛知県、名古屋市、三重県、四日市市、静岡県、東邦ガス、中部電力、トヨタ自動車、名古屋商工会議所、名古屋大学、三重大学、豊橋技術科学大学、名古屋工業大学、愛知工業大学、海上保安庁、名古屋地方気象台、津地方気象台、静岡地方気象台、岐阜地方気象台、プロジェクト関係者 2008.12 ミニシンポ
2008.12 第1回
2009.03 第2回
2009.09 第1回(分)
2010.01 第3回
2010.04 第2回(分)
2010.08 第4回
2011.03 第5回
2011.07 第6回
2012.12 合同会
■地盤DBの構築および地震動予測、被害想定の高度化
九州 地域研究会 九州地整、宮崎県、宮崎市、延岡市、西都市、新富町、門川町、鹿児島県、肝付町、東串良町、南大隅町、大分県、大分市、佐伯市、臼杵市、福岡管区気象台、宮崎地方気象台、大分地方気象台、宮崎海上保安部、NTT宮崎支店、九州電力、新日本製鐵株、九州大学大学院理学研究院、九州通信ネットワーク、鹿児島大学大学院、宮崎大学、地震工学研究センター、プロジェクト関係者 2012.05 第1回
2012.05 ミニシンポ
■内閣府の新想定による津波予測および対策の構築
紀州分科会 三重県、尾鷲市、東紀州防災ネットワーク、和歌山県、和歌山市、和歌山県内市町村の防災担当者、三重大学、和歌山大学、プロジェクト関係者 2009.11 第1回(分)
2010.11 第2回(分)
2012.12 合同会
■紀伊半島沿岸域における津波防災計画への反映・津波防災の高度化

アンケート調査

地域研究会開始から約3年半にあたる昨年9月頃、これまでの地域研究会の議論がどう参加機関の防災対策に貢献したかを明らかにすることを目的として、高知、大阪、名古屋の参加者に対してアンケート調査を実施した。設問は8つ。電子メールでアンケート用紙を配布し、約1か月の期間で記入していただいた。結果と代表的なコメントを以下にまとめる。どの地域の参加者からのコメントかわかるようにコメントの最後のカッコ内に地域名を記している。なお、九州地域研究会については、発足前だったため調査していない。(回答者数:43名(高知:14名、大阪:13名、名古屋:16名) )

問1.貴機関の防災対策を考える上で、これまでの地域研究会での議論・活動は参考になりましたか。

問2.特にどのような点が参考になりましたか (または参考になりませんでしたか)。

  • 地震関連研究の最先端の情報を得ることができた。(名古屋)
  • 南海地震の震源モデルや太平洋沖地震に関する情報は、地震想定・津波想定における参考情報として有用であった。(高知)
  • 津波による漂流物被害、南海地震過去資料調査結果、高知市における長期浸水に関する検討は南海地震への被災想定、対応策を検討していく上で、非常に参考になった。(高知)
  • 対策が完了した水門等でも液状化対策が必要になる可能性があることがわかり勉強になった。(大阪)
  • 地盤モデルの構築、地盤DBについては、被害想定を見直す際に検討すべき項目であり、参考になった。(名古屋)
  • 地域の行政、自治体、インフラ関係企業等の防災・減災に対する取り組みを情報として知ることができた。(名古屋)
  • 国における動き(名古屋)
  • 港湾施設の工学的に専門的な内容が多く、あまり理解できなかった。(名古屋)
  • 地域に特化した話題については、本県の参考にならなかったものもある。(高知)
  • 被害想定作成のロードマップ、キーポイントなどを分かりやすく解説などしていただけると助かります。(名古屋)

問3.貴機関の防災対策において、地域研究会の議論・成果が実際に取り入れられた(または取り入れられる予定の)事例はありますか。 (たとえば、地域研究会の議論を踏まえて避難計画を改定したなど)

問4.(問3で「1.ある」と答えた方にお伺いします) それは具体的にどのようなものですか。(自由記述形式)

  • 高知市の長期浸水対策について、地域研究会の議論等を参考としつつ課題の抽出や対策の方向性の検討を行っている。(高知)
  • 国への政策提言(3連動への国の対応、観測精度の向上等)(高知)
  • 今後、防災マニュアルの改定などの際に、この研究会における成果や議論を反映することになる(高知)
  • 行政機関や企業から、最新の研究や国の動向について聞かれた際に、ここでの成果等を紹介している。(大阪)
  • 地域研究会の議論、特に3.11の震災に関する議論により、南海・東南海・東海地震の地震・津波対策をすべて見直す作業に入っている。(大阪)
  • 地方自治体がとるべき地震防災対策の重点項目(長周期地震動対策、液状化対策、津波対策等)を整理するのに、大いに役立った。(大阪)
  • 港に展開する船艇支援勢力の運用方法や拠点についても再検証が必要と考え、現在見直しを進めている。 (名古屋)
  • 津波だけでなく、液状化情報(危険度予測等)に関する関心が非常に高まっており、次回の被害想定の見直しでは、地域研究会での詳細地盤構造モデル構築の取り組みを、参考にしたい。(名古屋)

問5.地域研究会の議論・成果が、貴機関の防災対策にさらに取り入れやすいものにするためには、地域研究会のどのような点を改善すべきでしょうか。(自由記述形式)

  • 南海地震などに関係する多くの県や自治体の参加拡大をして、より多くの関係機関との連携をすべきだと考えます(高知)
  • 3地域間の情報連携も有意義ではないか。(高知) 地域研究会の頻度を上げて開催してはどうでしょうか。(大阪)
  • 具体的な地域ごとの被災の状況等を知ることと、被災状況を想像できるような議論を深めることが必要となるのでは。(高知)
  • 東海・東南海・南海の3連動地震の被害想定の認識合わせができたらよい。(名古屋)
  • 事前に各機関の課題を吸い上げ、それに対して、議論するやり方が望ましい。(大阪)
  • 研究側からのアウトプットに留まらず、利用者側の視点を取り入れたアウトカムの意識(名古屋)
  • 諸機関の防災対策への貢献をあまり意識することなく、地域研究会は「情報交換の場」と割り切って継続することが大切だと思う。(名古屋)
  • ライフライン事業者の防災体制の話題提供のような機会を増やしていただければありがたい。 発表内容が、専門的過ぎて分かりにくいことがある。用語なども含めて分かりやすい説明をお願いしたい。(高知)

問6.今後の地域研究会の活動についてどうお考えですか。

問7.東日本大震災を踏まえて、貴機関の防災対策のどのような点を改善すべきとお考えですか。 (あてはまるものすべてを選んでください。)

問8.最後に、今後の地震防災研究に期待することなど、ご自由に記述ください。

  • 高精度の被害想定と具体的な減災対策。(名古屋)
  • 可能な限り正確な地震発生の予知、予測。地震・津波発生のいち早い情報伝達。(高知)
  • 単なる地震に関する研究だけでなく、防災・減災に繋がる研究を進めることが重要。事後の検証を行うためでなく、実際に減災に繋がる取組みを行って欲しい。(高知)
  • 社会科学分野の専門家と連携し、ソフト面の充実に向けた研究もさらに進めて頂ければと思います。(高知)
  • 地域防災計画の改訂にあたり、3連動地震の被害想定が急務となるため、国の動きも含め、新たな知見、最新の研究成果を示してほしい。(大阪)
  • これまで以上に防災実務を担務する素人集団にもわかるようにご教授、ご指導いただければ大変ありがたいことです。(大阪)
  • 住民による理解という観点では、「成果の見える化」が非常に重要である。(名古屋)
  • 最新の研究成果の情報は非常に有益ではあるが、どの段階で設計水準等を見直すべきなのかということも意識してご提示いただきたい。(名古屋)
  • 抱えている問題点などを共有できる有意義な場であるため、今後も引き続いた活動を期待している。(大阪)