文部科学省委託事業

東海・東南海・南海地震の連動性評価研究

地震に強い社会をめざして。防災分野が連携して、東海・東南海・南海地震の連動発生を評価します。

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紀伊半島における緻密・広帯域海底地震観測

南海トラフ沿いでは、ほぼ100年周期でマグニチュード8クラスの地震が繰り返し発生してきていることが歴史記録からわかってきている。最近の活動である、1944年と1946年の地震では、震源域の推定が行われており、測地学的な研究により、現在、震源域はほぼ固着している事が推定されている。一方、陸上からの地震観測、室戸沖における海底地震計を用いた地震観測などから、微小地震も含めて、南海トラフでの地震活動は低いことがわかっていいる。また、文部科学省委託研究「東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究」により、南海地震の震源域である紀伊半島沖では、微小地震が沈み込むフィリピン海プレート内で発生していることが示唆されている。また、南海トラフでは、低周波地震・微動が発生することが知られており、その発生メカニズムと、巨大地震発生との関係が注目されている。紀伊半島沖は東南海地震及び南海地震の破壊開始点であると同時に、両地震の震源域が接する境界域に当たっている。南海地震と東南海地震の境界域である紀伊半島沖において、広帯域海底地震観測を行い、低周波地震に代表される特異なイベントを含む地震の精密な震源分布など地震活動を明らかにすることは連動地震発生メカニズムを考察する上でも重要である。また、紀伊水道沖の海域では沈み込む海山の存在が指摘されている。こういった構造的特徴と低周波イベントとの関係を知ることは南海トラフでのフィリピン海プレートの沈み込みを理解する上で重要である。

そこで、南海地震と東南海地震の想定震源域の境界域に位置している紀伊半島周辺海域において、長期観測型海底地震計や水圧計を併設した広帯域海底地震計を用いた自然地震、低周波地震・微動及び上下変動の鑑定観測を平成20年から開始し、現在も継続中である。

海底地震観測の推移
海底地震観測の推移
海底地震観測の様子
海底地震観測の様子

海底地震計で得られた連続記録

下左の図は、海底地震計NRA05(広帯域センサー)08(1Hz9) で記録された2009年3月25日の波形記録です。低周波地震の波形を赤・青丸で、通常の地震を赤矢 印でそれぞれ示しています。

海底地震計NRA05で記録された波形記録
海底地震計NRA05で記録された波形記録

下右の図は、広帯域地震計で記録された低周波地震と通常地震の波形です。
1~8Hzの高周波成分は両方のイベントで振幅が確認することができますが、 10~100秒の低周波成分は低周波地震で卓越していることがわかります。

広帯域地震計で記録された低周波地震と通常地震の波形
広帯域地震計で記録された低周波地震と通常地震の波形

地震計記録のスペクトル

下右の図は、広帯域地震計で記録された低周波地震と通常地震の波形です。
1~8Hzの高周波成分は両方のイベントで振幅が確認することができますが、 10~100秒の低周波成分は低周波地震で卓越していることがわかります。【R03_01】

2009年3月25日のスペクトル
2009年3月25日の スペクトル

低周波地震の発生数と潮汐

2009年3月22日から4月1日まで活動が継続した低周波地震の 1時間あたりの発生数と潮汐の比較を行った。 観測海域の海面変動量、地球潮汐の影響量は、 NAOTIDEJ(Matsumoto et al.,2000)、GOTIC2(Matsumoto et al.,2001)を用いて計算を行った。解析の結果、低周波地震 の発生数変化と潮汐には相関があることがわかった。これ まで、西日本で発生している深部低周波地震や東太平洋海 膨で発生する火成活動に伴った微小地震活動では地震活動 と潮汐との関連性が指摘されていたが、浅部低周波地震活 動も潮汐と関係している事がわかった。

低周波地震について震源 決定を行った。赤丸が震 源、黒丸・星が海底地震 計の位置をそれぞれ示す 。この際、海底地震計観 測網だけでなく、気象庁 が東海沖に設置している ケーブル式海底地震計の 記録も使用した。解析の 結果、低周波地震の震源 は海溝軸付近に位置して いることがわかった。

低周波地震の1時間あたりの発生数(下)、 海面変動(中)、体積歪み(上)
低周波地震の1時間あたりの発生数(下)、 海面変動(中)、体積歪み(上)
低周波地震の震源分布
低周波地震の震源分布

高精度水圧計の記録

2011年3月11日14時から18時までの地震計と圧力計の記録 圧力計の記録には、東北地方太平洋沖地震による地震動 による変動を記録したあとに津波による海面変動と考え られる圧力変化が見られ、海底地震計に搭載した水圧計 により精度が高い水圧観測が実施できることがわかる。

圧力計搭載型広帯域海底地震計
圧力計搭載型広帯域海底地震計
圧力計設置位置
圧力計設置位置
海底地震計と圧力計の記録
海底地震計と圧力計の記録

まとめ

  • 紀伊半島沖の海域で広帯域海底地震計、長期観測型海底地震計および高精度水圧計を用いた観測を行った。
  • 広帯域地震計および1Hz地震計の両方に、通常の地震とは異なる10~100秒の周期が卓越する低周波のイベントが記録された。
  • 低周波地震の発生数の時間変化を調べると、活動が活発化した後、一旦活動度が低下し、再度活動が活発化していることがわかった。
  • 低周波地震の活動度と潮汐の比較を行うと、西日本で発生している深部低周波地震や東太平洋海膨で発生する火成活動に伴った微小地震活動と同様に、浅部低周波地震の活動も潮汐と相関があ  ることがわかった。
  • 高精度水圧計データには2011年3月11日のと東北地方太平洋沖地震で発生した津波による圧力変化が記録された。
  • 現在は紀伊水道沖の海域で広帯域地震計4台を用いた観測を継続中である。