文部科学省委託事業

東海・東南海・南海地震の連動性評価研究

地震に強い社会をめざして。防災分野が連携して、東海・東南海・南海地震の連動発生を評価します。

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陸域機動的地震観測による付加体・プレート境界付近の構造調査

南海トラフ沿いの海溝型巨大地震の発生には、西南日本下へのフィリピン海プレートの沈み込みが強く関与している。阪神・淡路大震災以降に整備された陸域の高密度地震観測網データの解析により、沈み込むフィリピン海プレート陸側プレートの境界部付近で深部低周波微動と呼ばれる微弱な振動が発生していることが発見された(右図)。これまでの研究により、深部低周波微動はセグメント(領域)に分かれて活動が繰り返されること、セグメント間で連動して活動する場合があることが確認されている。一方、沖合のトラフ軸周辺の付加体内においても低周波成分に富んだ地震(浅部超低周波地震:右図)が発生していることが明らかになった。これらの現象に短期的/長期的スロースリップイベント等を含めた「スロー地震群」はプレート境界の活動状況を把握する上で重要な情報となる。

防災科学研究所(防災科研)では、陸域に設置された定常地震観測網のデータに加え、臨時的な機動観測を行うことにより、陸域深部延長部におけるプレート境界面の形状や構造の特徴を明らかにするととともに、超低周波地震のメカニズム解決定、深部低周波微動源決定の高精度化を進めてきた。

浅部低周波微動と浅部超低周波地震の分布
浅部低周波微動と浅部超低周波地震の分布

浅部超低周波地震活動モニタリング

海溝型巨大地震は、沈み込む海洋プレートと上盤とのプレート境界で繰り返し発生してきた。巨大地震と巨大地震の間となる時期では、プレート境界付近に海水を多く含む堆積物が介在し、定常的に滑っていると考えられている。近年、陸域の稠密な地震観測網のデータ解析により、地震性のゆっくりすべり(超低周波地震)がこの領域で発生していることが明らかになった。

2004年紀伊半島の地震の後にかんそくされた地震波の例
2004年紀伊半島の地震の後にかんそくされた地震波の例
新しく開発した方法を日向灘沖で発生したイベントに適用した結果
新しく開発した方法を日向灘沖で発生したイベントに適用した結果

深部低周波微動活動の解明

深部低周波微動現象は、プレートが固着している領域よりも陸域の深部側で発生している。このことから、プレート境界型地震の震源域の下限を規定するための重要な情報になると考えられている。これまでの観測から、微動活動は複数のセグメントを形成していること、複数のセグメントが連動して活動しうることが明らかになっている。また、微動活動と動機するようにスロースリップが発生することも観測されている。そのため、微動現象の解明が、プレート境界のひずみ蓄積から解放(地震発生)における一連のサイクル全体像の把握につながると期待される。

右に四国西部の機動観測点で収録された深部低周波微動の観測波形例(2~6Hzの帯域通過フィルタ適用済)を示す。微弱な振動だが、数10km離れた全ての機動観測点で明瞭に観測されており、地下深部に原因があることを示している。

四国西武の機動観測点で収録された深部低周波微動の観測波形例
四国西武の機動観測点で収録された深部低周波微動の観測波形例
2011年5月に四国西部で発生した微動活動に対し、機動観測点の解析により得られた微動源の日別分布を表す
2011年5月に四国西部で発生した微動活動に対し、機動観測点の解析により得られた微動源の日別分布を表す

上の図は、2011年5月に四国西部で発生した微動活動に対し、機動観測点の解析により得られた微動源の日別分布を表す。色は微動が発生した時間を表し、寒色系は早朝、暖色系は深夜に相当する。四国西部で始まった微動活動は、5/21に最も活発となり、徐々に東北東方向に移動した。その移動速度は1日あたり12~14kmであった。

一方、右図には、5月21日22時台の微動源の位置を分毎に色分けして表示している。この時間帯には、プレートの深部から浅部へ、沈み込み方向に対して平行に、かつ高速の移動(時速35km)が観測された。

5月21日22時台の微動源の位置を分ごとに色分けして表示したもの
5月21日22時台の微動源の位置を分ごとに色分けして表示したもの

フィリピン海プレート構造の把握

南海トラフ沿いで発生する海溝型巨大地震の発生様式を推定するために、沈み込むプレート(岩盤)の形状やプレート境界での物性などを明らかにすることは非常に重要である。これまで、日本列島周辺で発生した地震の記録や震源分布、海外で発生した地震(遠地地震)の記録の解析から、四国や伊勢湾の下のフィリピン海プレートは非常にゆるやかな角度で沈み込んでいるのに対し、紀伊半島の下では傾きが急であること、結果として紀伊半島西部~紀伊水道周辺で大きく湾曲していることが示唆されていたが、プレートの詳細な形状をはじめとする構造の特徴は分かっていない。

沈み込むプレート内の海洋地殻と海洋マントルでは、地震波が伝わる速度が異なる。この速度境界部(モホ面)を遠地地震のP波が通過する際、P波のエネルギーの一部がS波に変換し、「Ps変換波」として伝わる。

防災科研などによる定常的な地震観測点と広帯域地震計を用いた長期起動型観測点で得られた記録に含まれるPs変換波を詳細に解析して求めた海洋モホ面の等深度線が下の地図である。淡路島から兵庫県南西部の地域は、陸地で観測点があるにもかかわらず、モホ面の深さが推定出来ていない。これは、これらの地域で、海洋モホ面からの明瞭な変換波を検出できなかったことに起因しており、地図中の破線周辺でプレートが断裂したり、形状が急変している可能性が高いことを意味する。

図のA-a、B-bの測線で観測されたPs変換波の振幅の強さ分布を右に示す。赤は、深部が浅部よりも速く地震波が伝わる境界を、黒点はこの地域で発生した地震の震源の位置を表す。2本の測線は約100kmしか離れていないが、震源の分布や海洋モホ面と思われる速度境界(点線)の傾きは大きく異なる。

紀伊半島沖は、過去に発生した東南海地震と中井地震の震源域の境界になることが多い。海溝型巨大地震震源域とプレート形状との間に何らかの強い関連が存在することが示唆される。

地図A-a、B-bの側線で観測された変換波の振幅の強さ分布
地図A-a、B-bの側線で観測された変換波の振幅の強さ分布

陸域における地震観測(定常観測と臨時起動観測)

防災科研では、阪神・淡路大震災以降、日本全国を対象とした定常的な地震観測網の構築を進めてきた。高感度地震観測網(Hi-net:右下図)は、人が感じない微弱な揺れも感知することができるため、詳細な震源位置の推定などに活用されている。広帯域地震観測網(F-net:)は、様々な周期の揺れを正確に記録でき、地震のメカニズム解の推定や地下構造調査などに用いられている。

これらの観測網観測点に加え、浅部超低周波地震活動の解明や陸域下のフィリピン海プレートの詳細構造の把握を目的とし、既存F-net観測点が比較的粗な地域に、広帯域地震計を用いた長期機動観測点()を建設した。また、深部低周波微動の活発な四国西部や紀伊半島地域において、好感度地震計を稠密に設置する観測を行い、詳細な深部低周波微動の活動状況の把握やプレート構造との関係について調査を進めている。

広帯域地震計を用いた長期微動観測点の建設箇所
広帯域地震計を用いた長期微動観測点の建設箇所
四国西部で行なっている微動観測点の位置
四国西部で行なっている微動観測点の位置