海底地殻変動システム
海底地殻変動観測システムとは?
陸の地殻変動はGPSによって詳細に観測することができる。ところが、海底ではGPS衛生からの電波を受信することができないため、GPSによる地殻変動観測ができない。
そこで、海底のいち測定を精度良く行うシステムを開発した。 位置測定を繰り返し行うことにより、その地点の海底の動き(海底地殻変動)を観測することができる。
このシステムによって、推進2,000mの海底の位置を1~5cm程度の精度で、またその地点の動きを年間1cm以下の精度で測定することができる。 予め海底に設置した海底局と観測船との間で超音波を用いて距離を測定する。観測点の位置はGPSを利用して決定する。この測定を海底局の周りで行うことにより、海底局の座標を決定する。
海底ベンチマーク設置地点
観測地点
名古屋大学では、東南海地震の震源域内の熊野灘と、東海地震の震源域内の駿河湾に観測点を設置している。それぞれ、三重県水産研究所および東海大学との共同研究である。
熊野灘ではKMNで16回、KMSで20回、KMEで5回の観測を実施した。
駿河湾では、SNWで10回、SNEで12回の観測を実施した。
観測結果
熊野灘、駿河湾ともに、1回の観測精度は1~5cmであり、地殻変動の観測精度はほぼ年間1cm以下である。
各地点における観測結果
熊野灘における観測結果
駿河湾における観測結果
熊野灘における変動
- 熊野海盆では内部変動無し、一様に固着
- 紀伊半島の南東岸とは10-20km/yrの短縮
- プレート収束方向に対して約20°の西向き成分
プレート間の固着状態の推定
熊野灘における海底地殻変動
- 3ヶ所の海底ベンチマークにおける変異速度ベクトルは、すべて向き・大きさともによく揃っており、フィリピン海プレートの収束方向とも整合的である。このことから、熊野海盆内では内部変形がなく、直下のプレート境界面は一様に固着していることが推定される。
- 紀伊半島の南東岸と熊野海盆(KMN、KMS、KME観測点)との間には10~20mm/年程度の短縮が見られる。
- 熊野海盆での変異速度ベクトルの向きは、フィリピン海プレートの収束ベクトルに対して20°程度の西向き成分が卓越している。これは、フィリピン海プレートの斜め沈み込みによる影響であると考えられる。
- すべり欠損モデルに基づくと、海底地殻変動観測結果から推定される熊野海盆直下におけるプレート間の固着率は60~80%である。
- 南海トラフの海溝軸付近における海底での地殻変動やプレート境界の固着状態については、その直上に海底ベンチマークが設置されていないため、不明である。
駿河湾における変動
駿河湾における海底地殻変動
- 沈み込まれる側に位置するSNW観測点の変異速度ベクトルは、沈み込む側に位置する伊豆半島はSNE観測点の変異速度ベクトルよりもやや大きい。ただし、誤差範囲内も考慮すると妥当な値といえる。また、EW成分の誤差が±17mm/年と大きいため、今後の観測によって誤差の低減を図る必要がある。
- 伊豆半島の平均てきな変異速度は37mm/年であり、伊豆半島とSNE観測点(駿河トラフ東側)との間に顕著な短縮傾向は見られない。これは、駿河トラフ東側の沈み込むプレートが剛体的に振る舞っていることを意味している。
- 駿河湾西側の陸上で観測された平均的な変異速度は26mm/年であり、SNW観測点(駿河トラフの西側)との間に10mm/年以上の短縮傾向が見られる。
- 駿河トラフを挟む両ベンチマーク間では、誤差範囲も考慮すると顕著な短縮傾向は見られない。3) および 4) の結果から、駿河トラフ北部では、海溝軸の付近までプレート間が固着している(すべり欠損モデルでいうところの定常すべりをしているわけではない)と推測される。
地震時による地殻変動の観測
2004年9月5日 紀伊半島南東沖の地震
今回の課題
- 南海トラフ
東北地方太平洋沖地震で高い津波を生じさせた海溝軸付近におけるプレート境界の固着状態が不明
⇒より真の姿に近い津波予測のためにも、この海域での観測が必要 - 駿河トラフ
SNW観測点における地殻変動の観測精度が悪い
⇒観測を継続し、精度向上をはかる必要性
駿河トラフ南部での固着状態が不明
⇒この海域での観測によって、東海地震の想定震源域全体の固着状態を把握することが必要 - 観測技術の高度化
潮流等の状況によらず、常に1cmの精度で観測できる技術の確立。
迅速に解析結果を得られる技術の確立












