海洋再解析プロダクトとは
海洋の状態を知るためには、水温や塩分などを何度も観測して、空間分布を刻々と捉えることが必要です。しかし、観測できる回数は限られており、観測データをそのままならべても、時間的にも空間的にもまばらな絵になってしまいます。データ同化という方法を使って、このようなデータのギャップを埋めて海洋の連続的な動きを捉えることができます。それは、海洋シミュレーションモデルの計算条件を観測データに合うように調整することで実現します。再解析プロダクトというのは、この方法で再現した過去の海洋の連続的な描像です。温度や塩分の連続的な姿を求めることができれば、海洋の流れも自ずと知ることができ、海洋の研究にとって重要な情報となります。
具体的にいうと、このプロダクトは、MOM3という海洋シミュレーションモデルに大規模な最小自乗法である四次元変分法を適用して、全球の海洋の 過去の状態を隙間なく推定したものです。海洋シミュレーションモデルの水平解像度は緯度経度とも1度で鉛直方向には36層のメッシュを設けてあり ます。 データ同化に使った観測データは、衛星による海面水温のデータ、現場観測による海面下の水温・塩分データ、 さらに衛星による海面高度データです。調節した計算条件は、海面の熱・水・運動量のフラックスと計算開始時の海洋の状態(初期条件)です。
世界でも類例の少ない高度な手法で、誤差の少ない海洋環境場を構築
海洋の観測データが充実していなかった1900年代に比べ、現在は世界中から水温や塩分、海面高度などさまざまな観測値が得られるようになってきました。こうしたデータをより効果的に活用するため、世界トップクラスの性能を誇る大規模なスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を導入し構築されたのがJAMSTEC/K7の「海洋再解析プロダクト」です。提供するデータセットは、全海洋の状態を空間軸(三次元)だけでなく時間の変化まで矛盾なく捉えられる四次元変分法を用いて、さまざまな観測データに数値シミュレーション(海洋変動の予測値)の結果を統合する高度な手法で作成されます。2つの情報の融合により、確度の高い整合性の取れた海洋環境場(この場合は海洋中の状態をモデルで再現したもの)を構築できるため、気候変動研究への応用のみならず未来を予測するシミュレーション実験にも力を発揮します。
海洋・気候変動の高精度シミュレーションを通じて、海況予測や水産資源管理に役立つ
この先進的なプロダクトの登場で、エルニーニョ現象の発生や地球温暖化に関連した顕著現象など国民生活や経済活動に影響を及ぼす複雑な海洋・気候変動に対して、精度の高いデータ解析・予測が可能になってきました。将来はこのプロダクトを通じて、海洋・沿岸活動のさまざまなシーンに貢献できる海況予測や今後の食料安定供給に直結する水産資源管理など、社会的に有用な分野に幅広く貢献できるよう、さらに研究を進めています。